ストレスに強くなる 戦略的疲労リセット術 「寝れば疲れが取れる」という時代はもう過去のもの。年齢を重ねるにつれ、疲れの原因は複雑になり、寝るだけでは回復できなくなっています。だからこそ、いま必要なのが“攻めの休養”。自分から計画的に、積極的に休むことで、心身の活力をしっかり取り戻すことができます。
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「休みファースト」思考で身も心も生き返る
日本リカバリー協会代表理事
医学博士
片野秀樹先生
疲労やストレスに関する研究を長年続け、休養の重要性を体系化した「休養学」を提唱。運動・栄養と並ぶ“第三の健康習慣”として、休養を社会に広める活動を行っている。医療機関や企業での講演、教育現場での啓発にも力を注ぎ、日常生活に生かせる休養法を発信。著書に『休養学 あなたを疲れから救う』(東洋経済新報社)がある。
ストレス社会を生き抜く“休み方の革命”
休養とは、次の行動に備えて活力を蓄えることです。庭の花も水や肥料を与えてこそ鮮やかに咲き続けます。人も同じで、活力を注ぎ足してこそ、翌日に元気に動きだすことができます。
では、なぜ私たちは「休みたい」と口にするのでしょうか。それは、やることがあるからです。やることがなければ休む必要は感じません。家事や家族の世話、仕事、職場での責任、地域での役割──日々の暮らしには多くの課題があり、それを果たすために「疲れを取って明日に備えたい」という思いが生まれるのです。
従来の休養では、実際には50パーセントしか回復していないのに「100パーセント戻った」と思い込み、気力を振り絞って次の活動に進んでいました。その結果、疲労は積み重なり、ますます消耗してしまいます。理想は、休養に「活力をもたらす行動」を加えること。そうすることで初めて、本当に100パーセントの状態に戻り、次の一日を迎えられるのです。
ところが現代の私たちは、休んだつもりでも十分に回復できていません。若い頃であれば一晩眠れば回復できた疲れも、年齢を重ねるにつれて休養力そのものが低下していきます。さらに問題なのは、背景にあるストレスがかつてより格段に複雑になっていることです。
疲労を生む主なストレッサー
目に見えないストレスが日々積み重なる疲労の背景には、物理的・生物学的・化学的・社会的・心理的といった複数のストレスがかかわっています。どれか一つだけではなく、いくつもの要因が同時に重なっているため、単純な休み方では回復が追いつかず、疲労が残ってしまうのです。
物理的ストレッサー 
満員電車の圧迫や強い冷暖房、気温差や騒音など、日常環境に起因する身体への負荷。
生物学的ストレッサー 
風邪やウイルス感染、アレルギー反応など、体内の免疫が働くことで生じる生理的な反応。
社会的ストレッサー 
上司からのプレッシャー、家庭や地域での役割、人間関係のトラブルなど。
心理的ストレッサー 
人前での発表の緊張、不安や孤独感、将来への心配やコンプレックスなど。
化学的ストレッサー 
タバコの煙や排気ガス、化粧品や薬の成分など、身近な化学物質による刺激。
人間関係のしがらみ、情報過多による脳の疲れ、急激な気温差や気候の変化──こうした異なる種類のストレッサー(ストレスを与えるもの)が同時に押し寄せ、心身をじわじわとすり減らしています。そのため、夜にぐっすり眠ったはずでも朝は体が重い。週末に温泉や旅行でリフレッシュしたつもりでも、月曜にはかえって疲れが残っている。多くの人がそうした経験を重ねているのではないでしょうか。
「寝れば治る」のは過去のこと。従来の休み方では、複雑なストレスと疲労を完全にリセットすることはできません。だからこそ必要なのが“攻めの休養”です。
自分がごきげんになる複数の休養法を掛け合わせる
ストレスをもたらす原因は、複雑で多様。単純な方法では対処できません。だからこそ、自分が心地よいと感じる“ごきげんメソッド”を複数掛け合わせて、休養を積極的にとりに行く意識が必要。こうした“攻めの休養”こそが、心身の疲れを根底から解消する手段なのです。
休養を単なる休みではなく、次の活動への準備ととらえ直し、計画的に組み立てることで初めて活力を100パーセントに戻すことができるのです。
(次回に続く。)
家庭画報2025年12月号別冊付録より。