最新研究が示す“疲れのメカニズム” 休んでも疲れが取れない本当の理由 最新研究から疲労の正体は脳の疲れだということが明らかになってきました。脳疲労のメカニズムの基本を押さえたうえで、脳の疲れを解消するための、日常生活で実践できる回復術をご紹介します。
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人間は疲労のアラートには鈍感
健康科学では「痛み」「発熱」「疲労」は、「生体3大アラーム」と呼ばれ、生命の危機を知らせるサインとして知られています。
自覚して!生体3大アラーム

このアラームは、すべての哺乳動物が持っており、ほとんどの動物はそのアラームに従い行動変容します。しかし人間だけは疲労の警告を軽んじることが多く、休みなく活動し続けてしまい、その結果過労でダウンしたり、ときには過労死に至ることがあるのです。人が疲労に対して鈍感な背景には、進化の過程で「疲労感」をマスキングする能力が備わったことが関係しています。
疲労と疲労感の違い

「疲労」と「疲労感」は異なり、後者は疲労の存在を自覚する感覚のこと。この感覚が正常に働くことで、人は脳や体を回復させるために活動を停止できます。しかし、欲の中枢ともいわれる前頭葉が人間では大きく発達したため、どんなに疲れていても、やりがいや達成感といった精神的要因によってドーパミンなどの脳内物質が分泌され、前頭葉が眼窩前頭野で発生する疲労感を消すことができるようになったのです。
疲れていないと錯覚させる
疲労感のマスキング
人は長い進化の過程で、疲労感をマスキングする能力を獲得。眼窩前頭野で疲労感が生まれても、達成感が疲労のサインを消してしまう。

(1)視床下部が自分の疲れを感知する
(2)その危険信号を「疲労感」として眼窩前頭野(前頭葉下部)に伝える
(3)やりがい、責任感、達成感などが「疲労感」をマスキングする
(4)休養が足りてないのに動くため、疲労がどんどん 蓄積してしまう
(5)回復に時間がかかる
そのため、脳が悲鳴を上げていてもそれを無視して活動を続けられてしまうのです。疲労は、自律神経の乱れという形で最初に表れますが、この段階で回復できないと神経系、内分泌系、免疫系の働きが不調をきたすようになり、重大な病気を引き起こすおそれがあります。
病気の原因は疲労
人体には3つの制御システムがある。疲労が蓄積すると、この恒常性が失われて病気になる。

見逃さないで!脳疲労の最初のサイン

集中力が切れると作業に飽きてくるが、この感覚こそ、脳が最初に出す疲労の警告。眠気、イライラ、だるさなど次のアラームが発出される前に休憩をとろう。
ワーカホリックの人が陥る
隠れ疲労
一つの作業に集中できるのは1時間から1時間30分自覚症状のないまま疲労が蓄積する「隠れ疲労」は、過労死の危険性をはらんでいます。やりがいのある楽しい仕事は、それだけ脳に大きなダメージを与えます。どんなに能力が高い人でも一つの作業に集中できるのは1時間から1時間30分です。この時間を目安に休息を入れたり作業内容を変えたりして、自律神経の酷使を防ぎましょう。
(次回に続く。)
家庭画報2025年12月号別冊付録より。