
便秘に悩む声は特に女性から多く聞かれますが、そもそも便秘とはどのような状態を指すのでしょうか。
「基本的には3日以上排便がない状態を便秘といいます。3日以内でもお腹が張って苦しいとか、便意はあるのにトイレでいきんでもなかなか出ないとか、本人が不快だったり困ったりしているときも便秘とみなします」と、石原新菜先生。
数日出ていなくても本人に不快感がなく、3日(72時間)以内にスムーズに排便があれば問題がない、とも。
「とはいえ、3食しっかり食べていて3日出ないということは、9食分の食べ物が腸の中に入っている状態なので、なるべく毎日出したほうがいいです。女性のなかには1週間くらい排便がないという人もいますが、そういう状態を放置するのは危険です」(石原先生)
「腸の中で便が停滞すると、腸内には悪玉菌が増えます。その悪玉菌が作る毒素が腸から血液にのって全身を巡り、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞といった血管系の疾患を引き起こします。また、老廃物が排出されないことで口臭や体臭が強くなったり、肌荒れしやすくなったり、免疫力の低下につながったりすることも。便秘を放置すると、予想をはるかに超えるリスクが生じるのです」(石原先生)
人が生きるうえで発生する老廃物のうち、実に75パーセントが便によって体外に排出されます。20数パーセントが尿や汗から、残りのわずかな量が呼気によって出ていきますが、便での排出が圧倒的に多いことがわかります。
この割合を見ても、便秘で老廃物を排出できない状態が続くと、全身のさまざまな器官に悪影響が及ぶことが容易に想像できます。
男性と比べて女性が便秘がちの理由としては、腹筋が弱く便を押し出す力が弱いこと、体が冷えやすく腸の蠕動運動が低下しやすいこと、女性ホルモン「プロゲステロン」の働きで便の水分が失われやすいこと、などが挙げられます。
一方、東洋医学では、気・血・水のバランスが乱れることで便秘につながると考えます。
「東洋医学では、気・血・水のバランスが過不足なく整った状態を健康と捉えます。いずれかが不足しても余分になっても体調に影響が出ます」と石原先生。
「まず、気の巡りが悪い場合。西洋医学で気は自律神経と捉えることもありますが、疲れやストレスで自律神経のバランスが乱れる——つまり気の巡りが悪くなると、お腹にガスが溜まりやすくなったり腸の動きが悪くなったりします。また、血が不足すると腸に栄養素や水分が届かなくなって、働きが低下。さらに、水が余分に溜まることでも体が冷えて、腸が動かなくなります。逆に水が不足すると便のすべりも悪くなりますし、便秘には気・血・水のバランスの乱れが関係しているといえます」
気・血・水を過不足なく巡らせて便秘を改善する方法としては、まず生活習慣を整えることだと石原先生はいいます。
「当たり前のことになってしまいますが、やはり便秘改善のためには軽い運動や、栄養バランスのよい和食中心の食事、それから体を冷やさないことが大切。健康の土台を安定させることで、気・血・水のバランスが整います。具体的な食事の見直し方や、それでも出ないときの便秘薬の選び方などについても、これからお伝えしていきます」
*次回は、便秘を改善する食事や生活習慣についてお伝えします。
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