
聴覚の名医が教える、聞こえが劇的によくなる方法(3) 難聴と耳鳴りは、適切な治療を受ければ大半の症状が和らぎます。『難聴・耳鳴りの9割はよくなる』(世界文化社刊)の著者である新田清一先生が行う「宇都宮方式補聴器リハビリ」について、書籍を元に詳しく解説します。
連載第1回、第2回を通して、難聴も耳鳴りも、脳に伝わる音の電気信号が弱まって起こると説明しました。つまり、どちらも原因は耳ではなく脳にあるのです。
そこで、脳を鍛え、脳を変える「補聴器リハビリ」が難聴と耳鳴りの改善につながります。ここでは、適切な病院選びや補聴器について解説します。
すでに補聴器を持っているものの「高価だったのに少しも聞き取れない」「つけたほうが聞き取れないから、ないほうがマシ」といった不満を持ち、使用をやめてしまう人も少なくありません。
日本で補聴器は専門知識を持たない販売者でも取り扱えます。そのため、適切な調整ができずに、患者さんが“買ったものの使えない”補聴器を手にしてしまうケースがあります。
きちんとした補聴器を作るためには、まず耳鼻咽喉科を受診して難聴の原因を特定することが大切です。病院で聴力検査などを行い、「補聴器リハビリ」の適用であれば補聴器を装用します。
ただし注意点として、すべての耳鼻咽喉科医が補聴器に詳しいわけではありません。明らかに難聴があり、補聴器も必要となりそうなことが予想される場合は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が認定する「補聴器相談医」のいる病院に行くことをおすすめします。
補聴器相談医は、補聴器に関する専門的知識と技能を持つ耳鼻咽喉科専門医です。補聴器相談医のリストは、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のホームページに掲載されています。
補聴器の価格は4万円ほどから、高いものでは50万円以上とさまざま。しかし、高価な機種ほど治療効果が高くなるかといえば、必ずしもそうではありません。
現在、補聴器はかなり進歩しており、1台15万円程度の補聴器でも、難聴や耳鳴りの治療にじゅうぶん役立ちます。高価な補聴器を購入する際にも、必ずほかの機種もあわせて貸し出してもらい、両者を比較検討しましょう。
また、補聴器には大きく分けてポケット型、耳掛け型、耳穴型の3タイプがありますが、最も多く使われているのは耳掛け型です。適応聴力の幅が広く、使いやすいことが選ばれる理由です。
■補聴器の主なタイプ
難聴・耳鳴りを予防することも大切です。前回お話ししたとおり、耳鳴りの患者さんの9割は難聴があることから、難聴予防を心がけることが耳鳴りの予防にもつながります。
難聴予防のために重要なポイントは2つ。「メタボ対策」と「騒音対策」です。
■メタボ(メタボリック・シンドローム)対策
加齢によって聴力は徐々に低下しますが、この「加齢性難聴」を進行させる有力な因子が動脈硬化です。
動脈硬化が進んだ高血圧や糖尿病の人は心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなりますが、同時に難聴にもなりやすくなります。「動脈硬化があると加齢性難聴が悪化しやすい」という傾向も明らかになっています。
動脈硬化の原因としては、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、喫煙、そしてメタボなどが挙げられます。つまり、動脈硬化予防のためには、生活習慣病とメタボ予防を心がけることが大切なのです。
■騒音対策
職場などで大きな音を聞き続けることで起こるのが「騒音性難聴」です。85㏈(街頭騒音)以上の騒音に8時間さらされ続ける状態が5~15年ほど続くと、発症リスクが高まるといわれています。大きな音になればなるほど、聞く時間が短くても難聴になるリスクは高まります。
連載第1回でお伝えしたように、耳から入った音は内耳にある蝸牛(かぎゅう)で電気信号に変換され、脳に伝えられます。このとき大きな音にさらされ続けると、蝸牛内部の音を感じるセンサーが抜け落ちたり傷ついたりしてしまい、その結果、音が聞こえなくなります。
対策としては、イヤホンやヘッドホンで長時間、音楽を聴かないようにすることを心がけましょう。騒がしいコンサート会場などで過ごした後は静かに耳を休ませることを忘れずに。
仕事や住まいの事情で騒がしい環境に身を置く時間が長い人は、耳栓を使用したり、騒音の生じる環境を少しでも改善したりするなど、可能な範囲で対策してください。そのうえで定期的に聴力検査を受けることをおすすめします。
イラスト/あべゆきこ 写真/PIXTA ※この記事は、新田清一『改訂版 難聴・耳鳴りの9割はよくなる』を再構成しています。