知っておきたい女性のからだと健康 第5回(2)加齢や女性ホルモン、社会的な役割意識などの影響で揺らぎやすい女性の心。精神科・心療内科・内科の医師として長年女性の心身の診療に携わる織戸宜子先生に、うつや不安を防ぎ、メンタルヘルスを保つためのセルフケアについて伺います。
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「メンタルヘルス」
[お話を伺った方]
代々木の森診療所
精神科・心療内科・内科
女性のメンタルヘルス専門外来
織戸宜子先生
おりと・よしこ 兵庫医科大学を卒業後、神戸大学医学部附属病院で内科医として研修。周産期医療を専門とするパルモア病院に勤務し、母性内科と女性心療内科を立ち上げて、内科疾患を合併している妊娠や女性のメンタルヘルスの診療に従事する。神戸海星病院、東京慈恵会医科大学などに勤務後、現職。トラウマの研究・診療にも注力する。
不安やうつに陥っている自分に気づくのが第一歩。自身の思考回路のくせを知り、呼吸法など効果的なセルフケアを試す
誰にでもうつ病になる可能性がある
一時的な気分の落ち込み(うつ状態)は次第に回復しますが、それが回復しないで続くと治療が必要になります。
前回挙げたのは、自分で気づく、あるいは周囲が気づく、うつを疑う変化です。病的なうつは、このような変化が重なって2週間以上続いているなど一定の条件で診断されます。
うつ病は誰でもなる可能性があります。なかでもリスクが高い性格としては、責任感が強く、几帳面で完璧主義、人に頼らないで自己解決を望む、周囲に気を遣いすぎてくよくよ悩み、相手に合わせてしまう、挫折の経験が少なく、失敗に傷つきやすいといったタイプが挙げられるとのことです。
大切な人を亡くしたときの悲しみが続いて生活に支障が出る場合もあります。また、引っ越しや子どもの進学といった一見ポジティブな出来事や、前述の女性ホルモンの影響、感染症や慢性の病気、飲酒、飲んでいる薬によってもうつに陥るケースがあります。
うつの引き金や悪化の原因となるストレスへの対応について、織戸先生おすすめの方法を次のページで紹介します。ご自身も診療の合間にエッセンシャルオイルの香りを嗅いだり、ストレッチをしたりするほか、就寝前にマッサージなどでリラックスするそうです。
織戸先生が「大切にしてほしい」と強調するのが睡眠です。睡眠不足は不安感や混乱、うつのリスクになり、また、うつ病と診断された患者さんの8割以上に初期からの睡眠障害があることが知られています。「起きたらすぐに朝の光を浴び、朝食をとることで体のリズムを整えて、良質の睡眠をとるようにしてください」。
不安な気持ちを誰かに話すのも助けになります。「親友に話を聴いてもらってすっきりした経験もあると思います。話すのが苦手な人は、気持ちを日記などに書くのもいいでしょう。パートナーや親子などの身近な相手に対して、負の感情を溜め込んで爆発してしまうと関係性が悪化し、自身も傷つくことがあります。
小出しに相手に伝えましょう。そのときに“I message”(私は〜と思っている)で話すことはおすすめです。“私は今、熱があってつらいから買い物に行ってほしい”と自分や自分の気持ちを主語にして具体的に話すのです。そして、お互いに労い合うこともとても重要です」。
一方、聴く立場になったときには、「意見があっても、“そうだったんだね”“つらかったね”と共感することが大事です」。特に男性はすぐに解決策を提示してしまいがちで、それが相手をかえって失望させたり、怒らせたりするケースも多いそうです。