知っておきたい女性のからだと健康 第5回(1)加齢や女性ホルモン、社会的な役割意識などの影響で揺らぎやすい女性の心。精神科・心療内科・内科の医師として長年女性の心身の診療に携わる織戸宜子先生に、うつや不安を防ぎ、メンタルヘルスを保つためのセルフケアについて伺います。
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「メンタルヘルス」
[お話を伺った方]
代々木の森診療所
精神科・心療内科・内科
女性のメンタルヘルス専門外来
織戸宜子先生
おりと・よしこ 兵庫医科大学を卒業後、神戸大学医学部附属病院で内科医として研修。周産期医療を専門とするパルモア病院に勤務し、母性内科と女性心療内科を立ち上げて、内科疾患を合併している妊娠や女性のメンタルヘルスの診療に従事する。神戸海星病院、東京慈恵会医科大学などに勤務後、現職。トラウマの研究・診療にも注力する。
女性は男性よりもうつや不安に陥りやすい
織戸宜子先生は、「生物学的な要因と心理社会的な要因によって、女性は男性よりもうつ病や不安障害などの心の病気になりやすいといわれています」と話します。
生物学的な主な要因は、女性ホルモンの影響です。月経前症候群のイライラや落ち込み(月経前不快気分障害)、妊娠・出産時、特に出産後の不安や落ち込み(産後うつ)、更年期の落ち込みや集中力の低下など女性ホルモンの分泌が変動する時期には、心も変動しやすくなります。
心理社会的な要因としては、身近な人間関係から生じる葛藤、いまだ女性が働きにくい労働環境(非正規雇用の多さ、賃金の低さ、昇進の障壁など)、幼少期に受けたトラウマの記憶までさまざまな因子が挙げられます。
また、「日本女性は、夫、子どもや両親等の身近な他者をサポートするという社会文化背景があり、それに喜びを見出すこともあるでしょう。しかし、自分のことを後回しにしてしまい、過剰に適応したり、与えられた役割を完璧にこなさなければと考えたりして、人知れず苦しんでいる女性が多いのも現状です。もちろん、男性もうつと無縁ではなく、男性には“沈黙の文化”があり、自分の思いをいわない分、重症化しやすい傾向があります」。
特にうつ状態が長く続くと自殺念慮が高まる場合があるため、注意が必要です。
「2020年のコロナ禍以降、女性の自殺者数が増え、現在は少し減りましたが、依然として高水準です。また、小中高生の自殺者数は、2024年には統計のある1980年以降で最も多くなりました。ご自身の、そして周囲の大切な人たちのメンタルヘルスにはこれまで以上に意識を向けていただきたいと思います」と織戸先生は強調します。
Check! 気になるサインはありませんか うつを疑う変化
●自分で気づく変化[ ]悲しい気分、憂うつな気分になっている
[ ]何事にも興味が湧かない・好きなことが楽しめなくなった
[ ]疲れやすい
[ ]何をするのも億劫
[ ]気力や集中力が下がっている
[ ]不眠である、あるいは過眠になっている
[ ]食欲がなくなった、あるいは過食になった
[ ]人に会いたくない
[ ]朝は夕方より体調や気分がよくない
[ ]心配事が頭から抜けず、考えが堂々巡りする
[ ]失敗や悲しみからなかなか立ち直れない
[ ]自分は価値がないと思う、自分を責めてしまう
●周囲が気づく変化[ ]以前と比べて表情に元気がない
[ ]体の痛みやだるさといった体調不良の訴えが多くなった
[ ]仕事や家事の能率が落ちている、ミスが増えた
[ ]遅刻や早退、欠勤・欠席が増えた
[ ]人に会いたがらない
[ ]趣味やスポーツ、外出をしなくなった
[ ]飲酒量が増えた
(次回へ続く。)
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