〔特集〕名門避暑地の“今”を楽しむ 軽井沢の夏休み 木立の緑が日に日に深まり、鳥のさえずりとともに過ごす心地よい季節 ── 。古くから多くの文化人や避暑客を魅了してきた軽井沢に、新たな楽しみが加わりました。駅直結の新施設、ミュージアムや名建築、美食処、そして軽井沢通のおすすめ ── 、この夏訪ねたい、軽井沢のさらなる魅力をお届けします。
・
特集「軽井沢の夏休み」の記事一覧はこちら>>>
軽井沢の美意識を巡る
自然美と響き合う名建築・アート
高原の自然美と、人間の創造力が心地よく出会う風景 ──。それこそが、避暑地・軽井沢が永く育んできた文化の系譜です。軽井沢の新名所となっている、黒柳徹子さんのミュージアムや、大規模な保存修理を経て、一般公開を再開した重要文化財。この地の美意識を宿す、二つの美しい舞台を巡ります。
政財界人や皇族が訪れた華々しい社交の舞台
旧三笠ホテル(旧軽井沢)
外観はアメリカのスティックスタイル、外壁はドイツ風の下見板張り、扉は英国風と、当時としては珍しい国際色豊かな意匠が見られる。今回の改修では、切妻屋根(右手前)とバルコニー付き(中央)の2つの車寄せ等を忠実に復原した。
賓客を迎えた車寄せとスレート葺き屋根を復原
約5年間に及ぶ保存修理工事を経て、2025年10月に待望の一般公開を再開した国の重要文化財「旧三笠ホテル」。今回の改修では、ホテル機能が最も充実し隆盛を極めた大正末期から昭和初期の美しい姿へと復原されました。
ロビーのシャンデリアは、開業当初から現存する貴重な品。ホテル時代はダイニングルームとして使われ、近衛文麿がここで晩餐会を開くなど、絢爛な社交の場であった。
この気品漂う木造洋館は、実業家・山本直良の手によって1906年に開業しました。英国で学んだ建築家・岡田時太郎が設計した館内には、ガス灯によるシャンデリア照明や、英国製タイルを張った水洗トイレ、英国製のカーペット、客室には地元特産の軽井沢彫の家具や籐の椅子が配されるなど、山本の趣向が随所に光ります。
広々としたスイートルーム。宿泊料金は1等12円と当時の旅館の10倍近い値段で、庶民にとっては憧れのホテルだった。希少な水洗式トイレも備え、地元紙で「ハイカラ的」と紹介されたという。
テーブルや椅子、衣装棚など室内の家具には軽井沢の伝統工芸「軽井沢彫」が見られる。当時は西洋風の家具が手に入りづらく、地元の職人が手製した。
開業当初は外国人客が中心でしたが、やがて、乃木希典や渋沢栄一、徳川圀順、團 琢磨、伏見宮博恭王など、名だたる政財界人や皇族が滞在し、「軽井沢の鹿鳴館」と呼ばれました。戦時中の外務省による借り受けや、戦後の米軍接収という激動の歴史を経て、1980年に軽井沢町へと寄贈されました。
名だたる貴顕紳士が行き交った中央階段。
今回の復原では、解体調査や古写真・古図面などの資料調査を基に、開業当初のバルコニー付きと、大正末期の切妻屋根の2つの車寄せを再現。屋根は天然石のスレート葺きへと戻し、一部に宮城県・石巻の石材を用いるなど、現代の職人技によって至高の建築美が再び未来へと引き継がれています。
客室だった4つの部屋は、当時の雰囲気を生かしながらカフェへと改修。
ホテルで提供していた秘伝のレシピを現代風にアレンジした「三笠ホテルビーフカレー」(1800円)は名物の一つ。
旧三笠ホテル長野県北佐久郡軽井沢町大字軽井沢1339-342
TEL:0267(48)6341
開館時間:9時~17時(最終入館16時30分)
休館日:水曜・年末年始
入館料:一般(高校生以上)1000円、小学生または中学生500円
URL:
https://kyu-mikasa-hotel.jp/(次回に続く。
この特集の記事一覧はこちらから>>)
本特集にてご紹介したスポットはこちらの
デジタルMAPにてご覧いただけます。