
北陸地方の桜最大の特徴は、「菊桜」「菊咲き」と呼ばれる固有品種(特定の地域にだけ生育する動植物の種)が多いことです。1輪の花びらが100枚以上あるのが特徴で、現在確認されている三十数種類のうち、半分が能登などの北陸発祥。北陸に多い理由はわかっていませんが、原木の多くはお寺や神社の境内で守られてきました。
「樹齢100年のこの木が植えられていた民家のある場所はもともと東大寺の荘園で、『伊加流伎荘(いかるぎのしょう)』と呼ばれていたそうです。桜守の方から『新品種らしき桜がある』と連絡があり、調査を予定していた矢先に、家の方から『国道の拡張工事のために家がなくなるので、桜は植物園に差し上げたい』という申し出がありました。時は8月の終わり、移植にまったく適さない時期でしたが、職員が行って、何とか掘ってトラックに載せまして。園に移植したところ、奇跡的に根づいたんです! 家の方も喜んで、『白で八重なので白八重と名づけたらどうでしょう』と提案してくださり、この名になりました」。
二季咲きの桜。白からピンクに変化する一重で、散りにくいため、1本の木をツートンに染める。「越の国」は北陸地方の古称。例年の見頃/11月中旬~下旬と4月上旬~中旬
加賀前田家が京都御所から賜ったと伝わる有名な菊桜。石川県の兼六園の原木は1970年に枯死。同園の桜は現在、接ぎ木で増殖した3代目だ。例年の見頃/4月下旬~5月上旬
原木は富山県下新川郡入善町の国指定天然記念物「杉沢の沢スギ」の林で偶然発見された、菊桜には稀な野生品種。花の色が白からピンクに変わる様が「乙女のよう」として、この名に。例年の見頃/4月中旬~下旬
江戸時代の文献に名前が残る早咲きの八重桜で、複数の花が塊で咲く。2023年に似た新品種「弥生高砂」が発表された。例年の見頃/3月下旬~4月中旬
富山県氷見市上久津呂の神社跡地に、藪椿と一体化した珍しい姿で佇む推定樹齢200年以上の桜が原木。花弁は1輪に約200枚。例年の見頃/5月上旬この記事の掲載号
撮影/小林康宣 取材・文/清水千佳子