〔特集〕次世代に伝え継ぎたい 桜絶景を求めて 日本が世界に誇るべき「美しい桜の風景」は、そのどれもがそれを守ろうとする人々の確かな意志によって支えられています。将来の日本人の美意識のために次世代に伝え継ぎたい桜絶景はどこか。長年、桜名所や桜を守る人々を取材してきた家庭画報本誌が、現在の手入れ・管理状況なども踏まえつつ、改めて桜の専門家とともに「新・桜100景」として厳選し紹介します。
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英国からの里帰り桜
江戸時代、新品種作りが盛んになり、飛躍的に種類が増えた日本の桜。その多様な美しさはやがてイングラムら外国人にも知られるようになり、明治末期から昭和初頭にかけて、多くの品種が海を渡りました。
その中には大白のほか、大菊桜、アサノ、ダイコクなど、本家の日本では残念ながら絶えてしまったものも。富山県中央植物園がオックスフォード大学植物園・樹木園の協力を得て、2019年に英国から里帰りさせた5品種の桜をご覧ください。
【アサノ】としては濃い紅色で、花つきがよい菊咲きの品種。イングラムが1926年に山梨県富士吉田市で発見し、自身が持ち帰った桜の中で「最良の品種の一つ」と高く評価した。名前は赤穂事件で有名な浅野内匠頭にちなんでいる。
【九重桜 ココノエザクラ】イングラムが初めて英国に導入した約50品種の桜の一つ。発祥は東京都の荒川堤。「ずば抜けた魅力はないが、庭園で価値を認められる品種」と本人の評価はあまり高くないが、花つきがよく、栽培品種としては早咲き。
【ダイコク】1899年頃、日本から英国へ。イングラムは友人宅から穂木をもらい、育成。1926年に太白とともに日本へ送ったが、根づかず。90年以上の時を経て、富山の地でイングラムの願いが叶った。
【大菊桜 オオキクザクラ 】1924年にイングラムがアメリカから英国に導入。湿気や雨に弱く茶色くなりやすい特性からか、「醜くも美しい桜」「年齢不詳で美しい服を着た傷ついた女性」と表現した。品種名と異なり、分類としては菊桜ではない。
【墨染 スミゾメ 】イングラムが友人を通して、アメリカのハーバード大学附属アーノルド植物園から取り寄せた桜。日本の友人が「地面に映る影が墨染めを思わせる」と話したことで、この名前に。桜には比較的珍しく、芳香があるのが特徴。
英国・欧州生まれの桜
日本から英国や欧州へ渡った桜は、そのまま観賞されたほか、新品種の開発にも用いられました。特に園芸文化が発達している英国では、大山桜や豆桜などをほかの品種とかけ合わせ、数多くの新品種を開発。富山県中央植物園で現在見られる英国、ベルギー、オランダ生まれの桜から8品種をご紹介します。
【ミキノリ】オランダ発祥の豆桜の一種で芯が白から紅に変化。名前は植物学者の荻巣樹徳さんに由来。
【オータム・グローリー】イングラムが韓国から持ち帰った霞桜の種子から選抜、育成した品種。秋の紅葉が美しい。
【オカメ】イングラムが作った品種。早咲きで例年3月下旬に濃いピンクの小さな花を咲かせる。
【ホクサイ】「ザ・グレンジ」にもともと植わっていた桜で、イングラムを桜研究の世界へ導いた。
【ヒリエリ】大山桜と他品種の交配により1928年頃誕生。ヒリエリは育成した英国の老舗園芸会社の名。
【ザ・ブライド】ベルギーで誕生。白い清楚な花が花嫁(ブライド)を連想させることからこの名に。
【アーコレード】大輪の桜の名は英語で「称賛に値する」の意。日本では春と秋に開花する二季咲き。
【スパイアー】ヒリエリと同じ樹木園で同じ時期に採集された兄弟品種。丸みのあるガクも愛らしい。
(次回へ続く。
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