〔特集〕次世代に伝え継ぎたい 桜絶景を求めて 日本が世界に誇るべき「美しい桜の風景」は、そのどれもがそれを守ろうとする人々の確かな意志によって支えられています。将来の日本人の美意識のために次世代に伝え継ぎたい桜絶景はどこか。長年、桜名所や桜を守る人々を取材してきた家庭画報本誌が、現在の手入れ・管理状況なども踏まえつつ、改めて桜の専門家とともに「新・桜100景」として厳選し紹介します。
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次世代へ──桜を繫ぐ人々
植物園や桜見本園は、古来から伝わる品種の宝庫であり、新品種の開発拠点です。約350品種の桜を保存し、染井吉野に代わる優良品種普及に励む結城農場・桜見本園、英国からの里帰り品種や欧州で開発された桜を育てる富山県中央植物園の2つの試みに注目し、次世代に伝え継ぐ形を考えます。
年間2万本の苗木を生産
圃場
田崎さんによると、桜が健康に育つには土壌作りと植え方が大事だといいます。
「定期的に肥料を与えて土を入れ替えるのはもちろん、微生物の働きを生かした土作りが重要です。肥料を与えた後、微生物が活発に働くよう、しばらくねかせる必要があります。また、桜は10メートル間隔で植えるのが理想です。間隔が狭いと互いに譲り合って細長く育ち、風通しも悪いので病気にかかりやすいです」。
連作障害を防ぐため、圃場では4~5年サイクルで2~3年間の休耕を行い、土壌をねかせる。
さらに、同じ品種だけを植えると病気が広がりやすいため、別の品種を組み合わる植え方を推奨します。
見本園では、スタッフによる日々の管理も欠かせません。植えてから5年間は誘引し、木が真っすぐ育つように樹形を整えます。夏は病害虫の被害を防ぐため、一本一本見回りを行います。
草取りは毎日行い、木の周辺は幹を傷つけないよう丁寧に手作業で。こうした地道な努力で美しさが保たれ、地域の人々の憩いの場にもなっています。
4月中旬に満開を迎えた八重咲きの「一葉」。
桜苗木は年間50品種、約2万本のペースで生産され、販売に加え無償提供も行われています。これまで出荷された桜苗木は250万本を超えます。
東京都では「明治神宮外苑」や堤防沿いの八重桜が美しい「足立区都市農業公園」が一例です。その他、群馬県・妙義山「さくらの里」、長野県「千曲川河川公園」や「高遠城址公園」、大阪府「造幣局」など、各地の名所に苗を届けています。
結城農場で育てられた桜は、2026年の春もそこかしこで見事な花を咲かせ、世界に誇れる日本の美しい風景を支えています。
桜の増殖方法2 切り接ぎ
台木となる桜に増やしたい桜の枝(穂木)を接いで苗木を育てる方法。穂木と同じ個体を確実に増やすことができる。台木の状態が苗木の成長具合に大きく影響するとされる。

【1】2月に一年枝を採取し、5度以下で貯蔵する。

【2】3月に貯蔵していた枝をくさび状に削り、台木に接ぐ。

【3】テープで結束して枝の上部に乾燥保護剤を塗布する。

【4】接いだ箇所が活着していれば、春に新芽が伸びる。

【5】5月に台木の不要な芽を摘み取る「芽かき」を行う。

【6】11月には1メートルの1年生苗木に生長し、出荷される。
(次回へ続く。
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