〔特集〕次世代に伝え継ぎたい 桜絶景を求めて 日本が世界に誇るべき「美しい桜の風景」は、そのどれもがそれを守ろうとする人々の確かな意志によって支えられています。将来の日本人の美意識のために次世代に伝え継ぎたい桜絶景はどこか。長年、桜名所や桜を守る人々を取材してきた家庭画報本誌が、現在の手入れ・管理状況なども踏まえつつ、改めて桜の専門家とともに「新・桜100景」として厳選し紹介します。
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次世代へ──桜を繫ぐ人々
植物園や桜見本園は、古来から伝わる品種の宝庫であり、新品種の開発拠点です。約350品種の桜を保存し、染井吉野に代わる優良品種普及に励む結城農場・桜見本園、英国からの里帰り品種や欧州で開発された桜を育てる富山県中央植物園の2つの試みに注目し、次世代に伝え継ぐ形を考えます。
染井吉野に代わる後継品種を求めて 選抜推奨は8品種

【舞姫】結城農場で生まれた新品種「舞姫」の原木
「舞姫」という名前は公募により命名され、2011年に農林水産省に品種登録された。開花後に新芽が伸びだすため、染井吉野と同じく木全体が花で覆われる観賞性が高い品種とされる。推奨品種として東京都の上野公園や千鳥ヶ淵緑道、宮城県の東北大学青葉山キャンパスなどに植栽。
多くの日本人が桜といえば「染井吉野」を思い浮かべるでしょう。しかし田崎さんは、その認識は今後変わる可能性があると指摘します。
「染井吉野の大きな弱点は、カビの一種が原因のサクラ類てんぐ巣病にかかりやすいことです。この病気にかかった枝を放置すると花が咲かなくなり、やがて木全体に広がって枯れてしまいます」。
てんぐ巣病の被害は年々拡大しています。日本花の会は、この問題を解決すべく、約350品種から染井吉野に代わる8つの優良品種を選抜・配布しています。選抜基準は、観賞価値が高く、樹勢が強くてんぐ巣病などにかかりにくいことです。
「染井吉野が広まったのは江戸時代末期で、それ以前は山桜が主流でした。わずか160年で『桜=染井吉野』という認識が定着したように、時代とともに観賞される桜も変わっていくと思います」。
神代曙(ジンダイアケボノ)

染井吉野系で花色がやや濃い淡紅色。病害虫にかかりにくいことから、染井吉野の代替品種として積極的に配布されている。開花期は4月上旬。
舞姫(マイヒメ)

日本花の会が八重紅枝垂の実生苗から作出した八重咲き品種。苗木を植栽してから開花までの年数が短く、強健。開花期は4月上中旬。
関山(カンザン)

東京都足立区の荒川堤で栽培されていた八重咲き品種。花色が濃紅色で美しく、生育もよいので海外でも広く栽培される。開花期は4月下旬。
紅華(コウカ)

1965年に桜守の浅利政俊氏が作出した、大山桜と里桜の雑種とされる八重咲き品種。樹形が盃状で並木としての植栽に適する。開花期は4月中下旬。
一葉(イチヨウ)

花の中にある1本の雌しべが葉化していることから名づけられた淡紅色の八重桜。八重咲き品種の中では樹勢が強健。開花期は4月中旬。
江戸彼岸(エドヒガン)

本州、四国、九州に分布し、てんぐ巣病にかかりにくい長命な野生種。写真は富山県南砺市に原木がある「江戸彼岸(向野)」。開花期は3月中旬。
大漁桜(タイリョウザクラ)

早咲きの大島桜に寒桜を交配した品種。花色や花形などが桜鯛に似ていることが名前の由来。開花期は温暖地で3月上旬。
華加賀美(ハナカガミ)

日本花の会が桜見本園の奥州里桜の実生苗から作出した紅紫色の桜。「華やかで美しい加賀の國」にちなんで命名。開花期は4月上中旬。
(次回へ続く。
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