〔特集〕ウェルネス温泉新時代「美・活・整」の湯宿へ 世界に誇る日本文化、温泉。日本人は古くから、自然の恵みである温泉を健康維持や治療にも利用してきました。特集では、温泉力の中でも「美肌」「活力」「整い」に注目。温泉の効能と極上の滞在を堪能できる、ウェルネス温泉宿をご紹介します。
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温泉の効能を知ってウェルネスな温泉旅を
温泉大国の日本。全国各地にさまざまな泉質と効能の温泉が存在します。症状や体調に合わせて行き先を選ぶ、健康重視の温泉旅に出かけませんか?温泉療法専門医・早坂信哉さんと、温泉の美容力の研究家・石井宏子さん、専門家のお二人に、温泉の素晴らしい効能と楽しみ方を伺いました。
[お話を伺った方]
東京都市大学人間科学部教授・医師
一般財団法人日本健康開発財団 温泉医科学研究所所長
早坂信哉さん(はやさか・しんや)
お風呂と温泉の研究歴25年の温泉療法専門医。環境省「全国『新・湯治』効果測定調査プロジェクト」研究責任者を務める。著書に『医師が教える温泉の教科書』(朝日新聞出版)
温泉ビューティ®研究家・旅行作家杏林大学兼任講師(温泉療養学)・国際中医師石井宏子さん(いしい・ひろこ)
日本で唯一、温泉の美容力に注目する研究家。多くのメディアや大学での講義等を通して温泉の効果や魅力、楽しみ方を発信。近著に『新・温泉ビューティ』(グリーンキャット)。
温泉成分の作用と非日常で心と体が生き返る
健康によい物質が溶け込み、疲労回復や療養に役立つ温泉。成分の種類と含有量によって泉質が分かれ(下表)、さまざまな特徴と適応症があります。そんな個性豊かな温泉共通の醍醐味は、体が芯から温まること。この温熱作用が体にもたらす影響は“いいことずくめ”だと温泉療法専門医の早坂信哉さんは話します。
「ポイントは血管が拡張し、血流がよくなること。全身に栄養や酸素が運ばれて細胞が活性化し、老廃物の回収と排泄も進み疲労が回復、むくみも解消します。免疫細胞も効率よく巡り、免疫力もアップ。皮膚の細胞分裂が進み、肌の再生も促されます。また、体が温まると神経の過敏性が抑えられて痛みも軽減し、筋肉の緊張が和らぎ凝りもほぐれる。生涯の健康維持のために温泉を効果的に利用してほしいですね」。
温泉が持つ美容力研究の専門家・石井宏子さんは美肌効果を強調します。すべすべになる炭酸水素塩泉、しっとり潤う硫酸塩泉など肌質に合わせて泉質を選ぶ楽しみ方もあります。そしてリラックス効果も。「適応症に自律神経不安定症、不眠症、うつ状態を掲げる温泉も少なくありません。最近のトレンドは“何もしない時間”に価値を置く過ごし方。心身を癒やし、明日からの活力を蓄えるウェルネスな温泉旅が女性に人気です」。
早坂さんは“頑張らず、疲れない温泉旅”を心がけてほしいといいます。温泉には万人が安心して入れる優しい湯と、比較的元気な人向きの刺激強めな湯があります(例外もあるが白濁や褐色の湯は後者のことが多い)。
「自分の体力・体調・体質に合う泉質を選び、1回10分を目安に長湯は避け、1泊2日の旅なら合計3回までを目安に利用しましょう」
pH値でわかる肌への作用
肌のpH値に近い中性から弱酸性の温泉は刺激が少なく、肌に優しい温泉です。酸性の温泉は殺菌作用があり、適度な刺激で肌の活性化をサポートします。また、アルカリ性の温泉は肌の汚れや古い角質を落としてすべすべ肌に導きます。
*目安として、pH2〜3未満やpH8.5以上の温泉はそれぞれ肌への作用が強くなるので上がり湯でさっと流し、湯上がり後はすぐに保湿しましょう。
美肌
泉質の特徴・泉質別適応症早見表
出典:『医師が教える温泉の教科書』(朝日新聞出版)、『全国 ごほうび ひとり旅 温泉手帖』(世界文化社)
古い角質を取り除く炭酸水素塩泉。
硫酸塩泉、塩化物泉でしっとり潤いの美肌に「炭酸水素ナトリウム(重曹)を多く含む炭酸水素塩泉は、皮脂を洗い流し、古い角質を取り除いてくれます。硫酸塩泉と塩化物泉はいずれも塩が皮膚を覆うので保湿・保温効果が非常に高く、血流が改善されます」(早坂さん)
「化粧品を使い分けるような温泉選びもおすすめ。汚れが落ち肌がすべすべになるクレンジング効果の炭酸水素塩泉、化粧水のように保湿する硫酸塩泉と塩化物泉。これらを私は“塩三姉妹”と呼んでいます」(石井さん)
活力
泉質の特徴・泉質別適応症早見表
出典:『医師が教える温泉の教科書』(朝日新聞出版)、『全国 ごほうび ひとり旅 温泉手帖』(世界文化社)
硫黄泉、二酸化炭素泉、含鉄泉は高い温熱効果が特徴。
体の芯から活き活きと「二酸化炭素を含む二酸化炭素泉、硫化水素を含む硫黄泉は、ガス成分が皮膚から吸収されて血管が拡張するので、体温が上がりやすく、温めが持続します。鉄分の多い含鉄泉は、飲泉で貧血予防が期待できます」(早坂さん)
「塩や鉄が濃い『活』の湯は、温熱効果が抜群。じんじんと染み渡るように体の芯から温まり、血が巡りだすのを実感します。発汗も促され、代謝がアップ。さまざまな不調の原因となる冷え対策に最適です」(石井さん)
整う
泉質の特徴・泉質別適応症早見表
出典:『医師が教える温泉の教科書』(朝日新聞出版)、『全国 ごほうび ひとり旅 温泉手帖』(世界文化社)
自律神経を整える単純温泉でリラックス。放射能泉はホルモンバランスも調整。「含有成分が一定値未満の単純温泉は、湯あたりしにくく子どもから高齢者まで安心して入れる優しい温泉。ですが温熱効果は十分です。放射能泉は尿酸の排出量が増し、唯一、痛風の適応症が認められています」(早坂さん)
「単純温泉は自律神経を安定させ、睡眠の質の向上をもたらします。リラックス効果が高く、ストレスフルな更年期世代におすすめ。放射能泉にはホルモンバランスを整える効果があるといわれています」(石井さん)
(次回に続く。
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