〔特集〕名門避暑地の「今」を楽しむ 美食とアートに集う 軽井沢 標高1000メートルの爽やかな空気のもと、喧騒から離れて静かに自然と親しむひとときは、軽井沢ならではの贅沢な時間。その一方で、リラックスしながらさまざまなジャンルの上質なエンターテインメントを楽しめるのも、名門避暑地らしい魅力です。音楽、スポーツ、ファッション、そしてアートと食……カルチャーを軸に豊かな交流が生まれ、世代や職業を超えて繫がる。軽井沢がもたらす心豊かな「夏」へとご案内します。
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名門避暑地が繫ぐ
軽井沢ライフスタイル
明治時代に外国人宣教師によって開拓されて以来、品格ある文化とソサエティが受け継がれている軽井沢。
自然や文化を愛し、助け合いの精神とともに次世代においても特別な場所であるようにとの共通の想いのもと、絆を深めています。
軽井沢の未来に心を寄せながら人と人とを繫ぐ3名のライフスタイルをご紹介します。
5000坪の森に自然財産をつくる
園尾美子さん(獣医師)
人と動物との絆を記録した名著『野生のエルザ』に感銘を受けて獣医師になったという園尾美子さんが、軽井沢の隣町である御代田町の約5000坪の土地を入手したのは5年前のこと。
浅間山を水源とする湯川へ続くこの丘陵地を “Wasser(ヴァッサー=ドイツ語で水の意)の森” と名付け、持続可能な循環型里山づくりに取り組んでいます。
元々ドイツ人弁護士が所有する別荘地だった “Wasserの森” 。約50年前に建てられた母屋は、古きよき部材を生かしてリノベーションを施した。ドイツ・バイエルン製の薪ストーブがあるリビングから、木々の緑と眼下に田園風景を望む。
「原生林と都市の中間で、自然や野生動物と人がちょうどかかわり合うのが里山です。森の恵みを人がいただき、人の手が入ることで森が循環してゆく。そんな自然環境の維持と生産を叶えながら、ここならではの自然財産をつくりたい」と園尾さんは話します。
敷地内の動物病院で診療をしながら、森の資源を生かした土壌づくりやメディカルハーブの生産と研究を行い、昨年からは完全無農薬による固定種の農作物づくりもスタート。長年眠っていたこの地は今、園尾さんの活動に共感する多様な人々が集う場としても歩みだしました。
園尾美子さん(そのお・よしこ)山口県生まれ。2009年に軽井沢町に「グリーンエバー動物病院」を開院。「自然と動物と人との共生」を目指し、獣医師としての臨床と研究とともに、自然環境保護活動もライフワークとする。2020年御代田町に5000坪の丘陵地を購入し、循環型農業のもと里山づくりを始める。
世代を超えた仲間と田植えに初挑戦
「自然保護や環境保全への各人の活動や想いという
点が、共感で繫がることで
線となり、さらには
面になって広まってゆく可能性を感じています。私の取り組みは点ですが、皆さんが得意分野を生かしてサポートしてくださる。一人で奮闘しているというのではなく、みんなでここを守っているという気持ちを持てるのが嬉しい」。
今春からは里山づくりに関心のある仲間を募り、“Wasserの森” 近くの田畑で無農薬稲作や野菜づくりに挑戦する「里山サロン」も始めました。
2025年5月に行われた田植えには、約30人が参加。通常のサロン会員以外の方も加わって賑やかな会となりました。多くは都内からの参加者で、田植えは全員初心者。初対面同士も声を掛け合い、一致団結して作業を進めます。

山間にある田んぼは、かつて3年間保護した後に野生に戻した鹿のモモちゃんを探すうちに、偶然見つけた休耕田だった。「モモちゃんに導かれて、理想として想い描いていた風景そのものに出会えました」。弾ける笑顔の園尾さん自身も、田植えは初体験。
そして午後は皆で食事を楽しみ、森を散策しながら薬草について学び、焚き火を囲んで語り合ったり、レンガ造りの薪窯でピザを焼いたり……。都会では味わえない一日はとても思い出深いものになったようです。
仲間たちとファイヤーピットを囲む。
ランチはカレーライスと無農薬栽培野菜が使われたサラダを。
レンガ造りの薪窯で焼いたピザはディナーの主役。
「若い方や子どもたちが、体験を通して自然と共生するっていいなと思ってもらえたら」と園尾さんは微笑みます。
石壁が印象的なリビングの一角。卓上にいけられているのは可憐な野の花。
“Wasserの森” の物語は始まったばかり。この先、この森でたくさんの素敵なストーリーが紡がれてゆくことでしょう。
森で育つ薬草を利用した「森の恵み茶」の材料。左上から時計回りに、アマチャヅル、スギナ、アカマツ、ヨモギ、柿の葉、ヤーコン。
(次回に続く。
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