〔特集〕日本各地の絶景と美味に出合う “海山”列車の旅 列車といえば“移動のための手段”と思いがちです。しかしラグジュアリー感溢れる豪華列車をはじめ、地元の美味やフレンドリーな“おもてなし”を提供する列車など、「乗ること」そのものが目的となる特別な列車が、日本には150以上もあり、世界からも注目を集めています。今年の初夏は、そんな個性溢れる列車に乗って各地の魅力を堪能する旅に出掛けませんか。
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時を忘れる夢の乗り物。それが観光列車
── 櫻井 寛(鉄道写真家)
新幹線や山手線などの通勤列車と、観光列車との違いは何でしょう。端的にいえば、前の2つは移動の手段であるのに対し、「乗車すること」が旅の目的となる乗りものが観光列車です。
東京から京都まで新幹線「のぞみ号」に乗られる方は多いと思いますが、それは目的地に早く着きたいから。私も新幹線にはよく乗りますが、車窓の風景や途中下車も楽しみたい派なので、速い「のぞみ号」ではなく、各駅停車の「こだま号」に乗ります。
では、観光列車の特徴とは何でしょうか。外せないのは「非日常を感じること」、客室乗務員さんたちから受ける「おもてなし」、そして「おいしい食事」でしょう。
各地域で産する木材などを内装に使った、まるで高級な旅館やホテルの部屋に通されたような雰囲気、通常の列車では体験できないホスピタリティ、素材が吟味された一皿や素朴だけど心が温かくなる料理を列車の中で楽しむことができるのは観光列車ならでは。
そしてもう一つ。旅路をゆっくり走ったり、風光明媚な景観を眺めるために停車するのも醍醐味でしょう。
現在、JR各社や大手私鉄だけではなく地方の小さな私鉄も含めて日本全国で150を超える観光列車が走っています。豪華列車につい目が向きがちですが、びっくりするぐらい手頃な料金で利用できる列車もあります。
ゴージャスさには格段の違いが確かにありますが、鉄道各社が運行している観光列車のおもてなしの真心には差がありません。あとは “私たちが何を求めるか” ではないでしょうか。それぞれ個性的ですから、ぜひ乗り比べてみることをおすすめします。
観光列車は “夢の乗り物” です。現代に生きる私たちは、時間に追われる生活を送っていますが、たまには忙しさを忘れるトキメキ体験をしてみませんか。ゆっくり走り、見どころで停車し、車内で食を楽しみ、非日常の空間に身をゆだねる……。今年の夏旅はのんびりと、観光列車で行こう!
櫻井 寛さん(さくらい・かん)1954年長野県生まれ。1994年『鉄道世界夢紀行』で交通図書賞受賞。これまでに取材・撮影した国は95か国、渡航回数は250回以上。著書は『列車で行こう! JR 特急大図鑑』など現在112冊。日本写真家協会および日本旅行作家協会会員。東京交通短期大学客員教授。世界文化社より2025年7月中旬に『列車で行こう! JR+私鉄 観光列車大図鑑』を刊行予定。