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明治16年から続く「桜の通り抜け」を支える人々。伝説の桜守・笹部新太郎が残した風景

2023.03.13

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桜花爛漫 桜を守り、伝えるということ 第1回(全12回) 春が来るたび、私たちの目を楽しませ、心癒やしてくれる桜。それは当たり前に咲くのではなく、何十年も世代を超えて、樹に寄り添い、花を咲かせる努力を重ねた多くの人々が叶えた風景。地域の子どもたちからプロフェッショナルまで、私たちの“宝”を守り、未来に繫げる桜守の物語とともに、とっておきの桜絶景をご紹介いたします。

桜狂の人が残した風景「桜守・笹部新太郎の遺産」


美しい桜の風景は、放っておいて残るものではありません。毎年、私たち日本人が爛漫の桜花を愛でることができるのは、それを守ろうとする先人たちの確かな意思が連綿と受け継がれてきたから。

現代の桜の名所となった荘川桜、根尾谷、大阪城公園、奈良公園などの関わりで知られ、私財を投げ打ち、日本古来の山桜・里桜の保護育成に生涯を捧げた伝説の桜守・笹部新太郎の業績の一端を追いました。

造幣局(大阪)




遅咲きで濃紅大輪の「関山(かんざん)」が満開の頃に、大阪の春の風物詩「桜の通り抜け」は開催される。南門から北門に向かう560メートルの間に約140品種の桜がぎっしり植えられ圧巻だ。笹部新太郎氏は、昭和11年からこの造幣局の桜の管理指導に尽力した。左の建物は造幣博物館。

桜を守るという意思の襷を受け継いで140年「桜の回廊」




【明治16年から続く「桜の通り抜け」を支える人々】140年続く「桜の通り抜け」の伝統の襷を受け継いだ造幣局貨幣部施設課の面々。向かって一番右の渡邊秀勝さんが、30年にわたり、日々、桜を見守る現代の桜守。

【桜守・笹部新太郎の遺産】〈密着ルポ〉 多品種(約140品種)育成の醍醐味。造幣局、桜守の仕事


左・兼六園菊桜(けんろくえんきくざくら)
「金沢兼六園にある有名な桜で、花弁数は多いもので300~350枚あり、日本で花弁数の最も多い、珍しい桜です。原木は天然記念物に指定されていました。花は淡紅白色です」

右・松月(しょうげつ)
「東京荒川堤にあった名桜で、平野神社の平野撫子に似ています。花は最初淡紅色で、次第に白色となり、花弁数は25枚ほどで、葉化雌しべがあります」(*カギカッコ内はすべて造幣局解説による。)


左・福禄寿(ふくろくじゅ)
「東京荒川堤にあった大島桜系の里桜で、花は淡紅色で、花弁は波打つようなしわがあり、かたい感じがあります。花弁数は15~20枚あり、大輪としては代表的なものです」

右・八重曙(やえあけぼの)
「花は淡紅色で、花弁数は11~17枚、部分により濃淡があります。芳香に富んでいます」


伝説の桜守・笹部新太郎氏は、昭和11年から造幣局の桜の管理指導に携わり、昭和20年の大阪大空襲で、約500本の桜のうち300本が焼失した際には、自身が所有していた里桜約100本を提供するなど、通り抜け復興に並々ならぬ意気込みを示しました。

現在、造幣局構内には、138品種335本(令和4年時点)の桜が専門家の指導を受け、保存・育成されていますが、実際の手入れを担う中心人物は、貨幣部施設課の渡邊秀勝さん。入局以来、30年桜と向き合い続ける造幣局の“桜守”です。

「かつて『通り抜け』の実施回数と品種数を合わせようという時期がありました。大型台風で50本以上の桜が倒れ、品種数が減ってしまったこともありますが、ここ数年は毎年、新品種がデビューしており、元に戻りつつあります。

樹形に関しては、以前は根元から2股、3股に分かれるような低木が多くありましたが、現在は、横に膨らみ密集しすぎると樹によくないのと、通行人の安全面を考慮して、上に伸ばすようにしています。

接ぎ木で増やすしかない八重桜は、寿命は50年ほど。実生の品種の寿命は60年~70年くらい。現在、樹齢50年を超える古木が3分の2ほどありますので、品種のストックのために、5つの養成地で、若木の育成を行っています。新品種は『日本花の会』などから入手しますが、関東と大阪では土壌が違うので、養成地で何年か育成したうえで、デビューさせることが多いですね」


左・【植え替え作業】養成地で育てた桜を、通り抜けに移植するのは暖かくなる前の2~3月上旬の作業。暖かくなると根が動き出し、根付きする。写真/造幣局 右・【養成地で若木の育成】接ぎ木から10年ほど経つ桜が並ぶ養成地で手入れをする渡邊さん。品種と本数の維持のため、5か所ある養成地で、若木の育成を行っている。


【1本1本に育成調査表】養成地の桜は、戸籍簿のごとく1本1本管理番号がつけられ、年に1回、高さ、幅、幹回りを採寸し、記録を残す。


接ぎ木の要領は、1品種に10本試みて、活着率は6割(6本)くらい。うち1本を選び、1年間毎週1回、2年目には月1回のペースで写真日記をつける。


昭和12年の「造幣局構内櫻樹種類調」。総数538本。最多品種は「普賢象」の94本で里桜が圧倒的に多い。写真/西宮市笹部さくらコレクション:白鹿記念酒造博物館寄託

要諦は日々の見守り


夏前や秋口に発生する毛虫の駆除、枯れ枝につくキノコ類の除去など、日常の観察による地道な作業の積み重ねが大切。構内100か所に及ぶ自動散水の管理など仕事は多岐にわたる。

令和5年「造幣局 桜の通り抜け」申し込み方法

4月中旬頃の開花時に、1週間開放される。開催時期や申し込み方法は3月中旬頃、造幣局ホームぺージにて発表予定。インターネットによる事前申し込み(先着順)を予定。

●造幣局本局
大阪府大阪市北区天満1-1-79 電話: 050-3615-6332(造幣局サポートダイヤル)
https://www.mint.go.jp/enjoy/toorinuke/sakura_osaka_news_r5.html





〔特集〕桜花爛漫




01 明治16年から続く「桜の通り抜け」を支える人々





この特集の掲載号
『家庭画報』2023年4月号



『家庭画報』2023年4月号


撮影/本誌・西山 航
『家庭画報』2023年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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