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誰の目も気にせず、自分を解き放つ。「天空の森」の露天風呂に込められた思い

2022.12.07

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天空の森 ふるさとに築く「夢の王国」 「天空の森」のドレスコードは “裸”。そう謳うことができるのは、東京ドーム13個分の敷地にヴィラが5棟のみという贅沢なリゾートだからです。誰の目も気にせずに自分を解き放ち、心も体も裸でくつろいでほしい。ヴィラごとに趣の異なる露天風呂で、天と地の間を観ながら、自然に溶け込んでいくような心地よさを味わってほしい。そんな願いをこめて、一つ一つお風呂をつくってきたオーナーの田島健夫さんに温泉への思いを伺いました。前回の記事はこちら>>

第2回 天と地の間を観る


「花散る里」 の露天風呂

「朝もや、夕焼け満月の空。五感が研ぎ澄まされます」
「天空の森」の日帰り専用ヴィラ「花散る里」の露天風呂。刻々と移ろう空、植物の香り、動物の声が五感を刺激する。「万葉の恋歌も詠めるような気がしてきませんか」と田島さん。

「妄想をかたちにする。『温泉』を人生の忘れられないシーンに」──田島健夫



僕は子どもの頃から温泉が大嫌いだったんです。湯治宿のせがれなのに、湯船でじっとしているのが苦手でしてね。ですから、宿のお風呂は「自分も好きになれるものを」という視点でつくってきました。「忘れの里 雅叙苑」の大浴場「建湯(たけるゆ)」の岩風呂2つは、「世界に一つだけの温泉を」という思いからつくったものです。

「忘れの里 雅叙苑」の岩風呂に立つ田島さん

半世紀前に自らつくった「忘れの里 雅叙苑」の岩風呂に立つ田島さん。削岩機で大まかに掘ったのち、石ノミで仕上げたという2つの岩風呂は、完成までに半年かかった。

日本古来の「巨石信仰」を念頭に、大口という町から重機で運んだ安山岩の塊は、2つとも約20トン。これをくりぬいて湯船にするというのは、気が遠くなるほど大変な作業で(笑)。地元の石工4人と一緒に始めたものの、3人が途中でダウンしてしまい、最後は70過ぎの石工と彼の奥さん、僕の3人で仕上げました。

田島さんが岩風呂や「田の神」を彫るのに用いた石頭(せっとう)ハンマーやノミ

田島さんが岩風呂や「田の神」を彫るのに用いた石頭(せっとう)ハンマーやノミ。「こんなふうに使うんです」と慣れた手つきで石を削って見せてくれた。

面白かったのが、毎日掘り続けているうちに、壮大なロマンが頭に浮かんできたことです。かつて地球が生まれたときに眠りについた石を、僕が今、湯船として生まれ変わらせている。いつか地球が滅亡するとき、湯船は石に戻り、眠りにつく……。人類が誕生する遥か昔から存在している石に抱かれて湯に浸かり、悠久の時や自分の来し方行く末に思いを馳せるなんて、温泉はタイムマシンみたいだなと感じ入りました。埴輪を飾ったのも、時空を超える場所にふさわしいと思ったからです。

「建湯」の岩風呂

大地に守られているような安心感がある「建湯」の岩風呂。埴輪と季節の花が飾られている。「春には桜を生けます。お風呂で花見もいいですよ」と田島さん。

湯船の壁面には石工の名前と竣工した年と月が刻まれている

湯船の壁面には石工の名前と竣工した年と月が刻まれている。

「天空の森」の温泉は、「雅叙苑」の温泉とは方向性をまったく変えて、開放感と眺めの美しさを追求しました。音についても対照的です。

茅葺きの家

「南九州の山村の風景を切り取ってつくったのが雅叙苑。人々が手放した茅葺きの家を移築しました」と田島さん。

鶏の親子

「忘れの里 雅叙苑」では敷地内を鶏の親子が自由に歩き回る。

温泉旅館は「情緒産業」なので、湯が流れるちょろちょろといった音が風情を感じさせていいのですが、「天空の森」は心からリラックスして、人間性を回復するための「リゾート産業」なので、目や耳から入る情報は極力少ないほうがいい。

「天空の森」の露天風呂に入り、月や星を見上げていると、大空の無人島に浮かんでいるような心境になり、日頃は気づかないような森の香りや虫の音に癒やされます。

最初のヴィラ「花散る里」の露天風呂は、親しい友人だった忌野清志郎さんのためにサプライズでつくったもの。温泉好きの清志郎さんはいたく感動してくれました。僕はあのお風呂から見る霧島連山の姿かたちがいちばん美しいと思っています。

「茜さす丘」の露天風呂

木々の落とす影が気持ちいい「茜さす丘」の露天風呂。奥に張り出したウッドデッキの眼下には段々畑が広がっている。

「茜さす丘」は夕日を受けて茜色に染まる場所に建てたので、露天風呂も夕暮れ時が格別。木々の間から穴をのぞくような感覚で風景を眺めると、未来が見えるような錯覚を覚えます。「霖雨(りんう)の森」は熱帯雨林の動物になったような気分で過ごせるヴィラ。露天風呂の横に設置したシャワーは、寒い季節に浴びるとお湯の温かさに感激します。

田島さんがノミで彫った「田の神」

手先の器用な田島さんがノミで彫った「田の神」はこの地域でよく見られる稲作の豊穣をもたらす神様。手に鍬を持っている。

僕の役目は、お客さまが感動してくださる様子を思い描きながら、その舞台を用意すること。妄想をかたちにする仕事といえるかもしれません。まもなく完成する新しい露天風呂は、湯船に映る星が最高にきれい。ここでもまた、お客さまの人生にとって忘れられないシーンが生まれることを願ってやみません。

「天空の森」オーナー 田島健夫(たじま・たてお)

田島健夫さん

1945年、鹿児島県・妙見温泉の湯治旅館「田島本館」の次男として生まれる。東洋大学卒業後、銀行員を経て1970年に茅葺きの温泉宿「忘れの里雅叙苑」を、2004年に約60万平方メートルのリゾート「天空の森」を開業。日本の観光業界を牽引する一人。
〔連載〕天空の森 ふるさとに築く「夢の王国」
撮影/本誌・西山 航 取材・文/清水千佳子

『家庭画報』2022年12月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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