公開から34年目を迎えた開園直後の庭。「パレット花壇」は芝生が大地を覆いチューリップが咲き上がるのを待っている。凍てつく大地の下で待っていた球根花たち。十勝の春は足もとからやってくる
「雪中花」の異名どおり、雪解けと共に一番に咲きだすのはスイセンの群落。副花冠が黄色く花被片がレモン色をした花は「アイスフォーリス」。間から顔を出すのは越年し野生のようなヒヤシンス。十勝の風土に適応して、楚々とした風情で咲く姿が愛らしい。帯広駅から車で約35分。十勝平野に約1万5000坪の敷地が広がる紫竹ガーデンの春は雪解けと共に訪れます。まず茶色い土が現れ、新芽が微かに色づき、毎年恒例の甦りのドラマが始まるのです。
真っ先に目に飛び込んでくるのはスイセンの花群れ。咲くのは越年した球根や宿根草と、閉園から降雪までの僅かなときに創業者である故・紫竹昭葉さんが親しみを込めて「園芸さん」と呼んだスタッフの懸命な作業で補充された球根たち。目覚めのスイッチが入るとガーデンは日々変化し、彩りに満ちていきます。
「何万個もの球根を、短時間で植え切るために『投げ植え』が紫竹流。何種も混ぜた球根をコンテナごと振りまき、落ちた所に人が駆け寄って植えていきます。人工的な印象を嫌い、ナチュラルな植栽を願った昭葉さんの教え」と語る娘の隈本和葉さん。
ヒヤシンス、ムスカリ、紫色のプルモナリアのブッシュが、合間から顔を覗かせています。色も形もさまざまな、思いもかけない美の饗宴。人けの少ない庭園はあまたの生命の息吹を内包しながら、安らぎに満ちています。
Information
紫竹ガーデン
北海道帯広市美栄町西4線107
- ※オープンは4月16日、クローズは11月上旬。開園の詳細はホームページでご確認ください。
撮影/大泉省吾 協力/紫竹ガーデン
『家庭画報』2022年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。