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温泉のスペシャリストが選ぶ「今行くべき宿」49軒!泊まり続けてわかった“いい温泉宿”の条件は?

心癒やす温泉宿 第7回(全17回) 今、行くとしたら、どこの温泉宿なのか。温泉宿ウォッチャーの意見を伺いながら、これまでの湯宿取材と併せ、改めて真剣に考えてみました。前回の記事はこちら>>

こんな温泉宿に行きたい

【宿道楽鼎談】緊急温泉サミット。今、温泉の力で日本を癒やす

温泉宿には一家言あるお三方に語り合っていただいたのは、いい宿の条件や最近の潮流。今行くべき宿は、名宿、美食、絶景、泉質の4つの切り口で挙げていただきました。

緊急温泉サミット〜今、温泉の力で日本を癒やす〜

小山薫堂さん(以下、小山) 最近、「湯道」というものを提唱しておりまして、これは6年ほど前、お茶やお花が道になるなら、お風呂も道と考えることで文化に昇華するんじゃないか、と思ったのがきっかけです。

それで、何か見えてくることを期待して始めたのが、「湯道百選」。温泉や銭湯などいろいろな湯に入ってセルフタイマーで撮影し、話を伺って記事を書く、ということを続けています。

緊急温泉サミット〜今、温泉の力で日本を癒やす〜

小山薫堂さん
(こやま・くんどう)放送作家・脚本家/「湯道」初代家元 。「飲める水を沸かして入るという贅沢なことをしている国は世界にもそうそうない。日本の湯は文化になりえる」と考え、「湯道」探求を開始。各地の温泉や銭湯に出かけ、考察を続けている。https://yu-do100.jp 写真/金田吉弘

柏井 壽さん(以下、柏井) 僕は宿に泊まるのが趣味で、コロナ禍の前は年間270泊していました。そのなかで、宿の人たちとこれからの宿のあり方について話すうちに、みんなでグループをつくろうということになって。7〜8年前に「日本 味の宿」ができました。

「味の宿」とは、食だけでなく、すべてにおいて宿独自の味わいを守っている宿のことで、僕は顧問として、実際に泊まってアドバイスするボランティアをしています。

緊急温泉サミット〜今、温泉の力で日本を癒やす〜

柏井 壽さん
(かしわい・ひさし)作家・エッセイスト/「日本 味の宿」顧問 。「旅館やホテルに泊まるのが趣味の素人」を自称。チェーン化などにより味わいが失われつつある日本の宿の未来を憂えて、その価値を守り磨こうと考える宿のグループ「日本 味の宿」を結成。撮影/大泉省吾

泊まり続けてわかった“いい温泉宿”の条件

石井宏子さん(以下、石井) 私にとっていい温泉宿の条件は、「宿の人に、宿や旅人への愛を感じること」です。いくら泉質やお料理がよくても、そこに愛を感じないと、「もう一度」とは思わない場合があります。

緊急温泉サミット〜今、温泉の力で日本を癒やす〜

石井宏子さん
(いしい・ひろこ)温泉ビューティ研究家・旅行作家。「温泉で美と健康を手に入れる」を主なテーマに全国の湯宿を巡り、執筆や講演活動を行う。著書多数。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、温泉入浴指導員。現在中医学を勉強中。写真(有馬にて)/杉本 圭

小山 宿の人たちも当然大事ですが、大浴場などではほかのお客さんとも一緒になるので、客層もすごく重要だと感じています。同じような価値観や、宿に対して同じようなリスペクトを持っている人たちだといいんですけどね。

石井 客層については、そのときの運もあって難しいところですけど、一つ参考になるのは宿の公式ホームページかなと思います。トップページの印象と宿の雰囲気、客層はリンクしている場合が多いので。

柏井 ホームページを見るポイントの一つは情報の鮮度で、まめに更新しているところは安心ですが、2〜3年前の記事で止まっているような場合はちょっと心配ですね。写真も、季節の料理を一品一品見せていたりすると、旬を大切にしているんだろうなと想像できます。経験上、口コミ、レビューはあまりあてにならないかな。

僕にとっての名宿の判断基準は「お酒がおいしく飲めるかどうか」。それは必ずしも銘酒が置いてあるといったことではなくて、飲んでいて「この宿に来てよかったなぁ」と心から思えることですね。

コロナ禍以降の高級温泉宿の行方

石井 コロナ禍が少し落ち着いた今、改装した宿が多いことを実感しています。その内容を見ると、休まなければならなかった時期に宿の皆さんが、「自分の宿とは何ぞや」とか、「これからどうあるべきか」といったことを真剣に考えられた結果が反映されているのを感じます。

また、最近の傾向として、個室食事処や部屋食に集中する時代は終わり始めている印象があります。ソーシャルディスタンスを保ちながらも、人の気配を感じながら食事をしたいとか、カウンター席で料理人と話をしたいとか、そういう嗜好に応えられる宿が人気になっています。同じ意味で、「貸切風呂がないと」という傾向も終わりかけている気がします。感染症対策がきちんとなされている宿なら、やっぱり大浴場が気持ちいいね!と。宿の顔は大浴場にあり、ですからね。

柏井 食については3つの流れを感じています。石井さんも挙げられていましたが、料理風景を眺めるのも楽しい「カウンター席」、今までの旅館では味わったことのない「イノベーティブな料理」、そして「名物料理」。高級食材を出しているだけではもうダメです。

もう一つ、最近感じるのが「旅館は安い」ということ。今、料理屋さんがすごく高くなっていて、京都でも3万円、5万円のお任せが当たり前になっていますが、旅館で5万円だったら、結構いい宿でおいしいものを食べて、一晩ゆっくりさせてもらえる。そう考えると、日本の旅館は安いよね、とみんなちょっと気づき始めているんじゃないでしょうか。

小山 僕も食はすごく力を入れ始めたと感じています。かつては「旅館の食事はこういうもの」といった料理が多かったけれど、今は違いますよね。あと、柏井さんがおっしゃった、料理屋さんが高くて旅館が安いというのは、僕も同意見です。

これだけのしつらい、おもてなしがあって、気持ちのいいお湯に浸かれて、この金額でいいのかと。本当に日本の温泉宿の文化は素晴らしいなと思います。

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