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ガレ場、稜線ってどんな意味? 田部井淳子さんが誘う“山岳用語”の世界

言葉を知れば、山がもっと身近に

女性で世界初のエベレスト登頂、世界七大陸最高峰制覇など輝かしい山歴を持ち、チャーミングな人柄で人々に愛された登山家の田部井淳子さん。2012年に刊行され5刷を重ねた著書『田部井淳子 山の単語帳』が、このたび文庫サイズの「モン・ブックス Mont Books」シリーズ第一弾として再編集の上、2021年8月に発刊されました。

この記事では本書の一部を抜粋して山の用語をいくつかご紹介。田部井さんのわかりやすい解説と、栗田貞多男さんの美しい山岳写真とともにお楽しみください。最後には本書のプレゼント企画もございます。

北アルプス・常念岳より、槍ヶ岳から穂高連峰までの大パノラマを望む。

「ここから先、ガレ場になるので気をつけて」。

「稜線に出ると気持ちいいですよ。もうすぐだからがんばって」。

などと健康山歩き講座の実践のとき、私は何気なく言ってしまうことがよくあります。そんなとき、受講生の方から、「ガレ場って何ですか?」とか「行動食って何のこと?」ときかれハッとしました。

自分では長い間当たり前に使っていた山の用語がはじめての方にとっては耳慣れない言葉であることに気づかされたのです。

ですが、 “実践の山”で、こういうところをキレットと呼ぶんですよ、とか、コルというのです、と説明すると、多くの人は納得してくれます。

このように、実物を見るのが一番わかりやすいですが、写真で見るだけでも全然違うものです。
(中略)
山の用語と同時に日本の山の美しさや成り立ち、花や動物なども写真で楽しんでいただけたら、うれしく思います。

田部井淳子

 

『田部井淳子 山の単語帳』から10の用語をピックアップ!あなたはいくつわかりますか?

【胸突き八丁】むなつきはっちょう

胸突き八丁 北アルプス胸突き八丁のきつい登り。北アルプス・槍沢にて。胸がぶつかりそうなくらい急な斜面や坂のことです。もともとは富士山の山頂まであと八丁(872メートル)の登りが大変きついことから。

 


【稜線】りょうせん

稜線 北アルプス北アルプス・奥穂高岳からロバの耳、ジャンダルムへと続く稜線。山頂から山頂へ続く尾根のことです。尾根のことを稜線という場合もあります。展望の良い稜線を景色を楽しみながら歩くのを「稜線漫歩」といいます。北アルプスなどの雄大な稜線歩きは大好きです。自分まで雄大になったような気分になれます。が、雷が鳴ったら即、稜線からは下りましょう。


【ピーカン】ぴーかん

ピーカン 南アルプスピーカンの中、南アルプス・仙丈ヶ岳を目指す。山の隠語で快晴のことです。もともとは映画業界の人がロケのときに使った隠語らしく、語源には諸説あるようです。超快晴なら「ドピーカン」なんていいます。


【シャリバテ】しゃりばて

シャリはご飯のことで、ご飯を食べていないからばてる、すなわち、空腹で力が出なくなることです。山でのエネルギー補給は重要です。


【一本立てる】いっぽんたてる

山の隠語で、登山の途中で休憩することです。その昔、歩荷(ぼっか)が休むときに背負子(しょいこ)の下に杖をあてがい、荷物の荷重を杖にあずけて、立ったまま休んだことに由来するそうです。私は今でも山仲間同士で歩いているときに「一本立てない?」などと言ってしまいますね。


【モルゲンロート】Morgenrot 独

モルゲンロート 北アルプスモルゲンロートに染まる北アルプス・白馬三山。朝日が昇る直前に、岩山や雪山の山頂部分がいち早く斜光を受けて赤く染まる現象です。また、朝焼けのこともいいます。一日の始まりを感じる厳粛な瞬間。Morgenは「朝」、Rotは「赤」の意。


【ブロッケンの妖怪】Brocken 独

ブロッケンの妖怪北アルプス・立山を背景に現れたブロッケンの妖怪(ブロッケン現象)。高山で背後に太陽があるときに前方の雲や霧に自分の影が大きく映り、まわりを丸い虹が囲んで見える現象です。魔女が集まるというドイツのブロッケン山で観測されたことからこう名づけられました。日本では古来、御来迎(ごらいごう)と呼ばれてきました。空中に現れた阿弥陀如来(あみだにょらい)の姿と考えられたからです。江戸時代、槍ヶ岳開山を果たした播隆上人(ばんりゅうしょうにん)も見たといいます。私も北アルプスや八ヶ岳で自分自身が輪の中に入っているのを見たことがあります。


【ガラ場 ガレ場】がらば がれば

ガレ場馬ノ背を越えて奥穂高岳山頂に向かう道。一面のガレ場だ。やや大きめの石で埋め尽くされた崩壊した斜面のことです。こんな場所につけられた登山道では浮石や落石に注意が必要です。こういった場所では途中で休まずになるべく速やかに通過しましょう。


【沈殿】ちんでん

山の隠語で、悪天候のため、その日の行動をやめ、テントや山小屋にとどまることです。「停滞」とも。毎日晴天で行動しているときは、「あー、たまには沈殿したいね」などと言いますが、雨や吹雪で3日も4日も停滞していると、早く動きたいなあ、とも思います。でも狭いテントの中でいかに楽しく過ごすかを考えるのも楽しいものです。


【馬返し】うまがえし

山で馬返しという地名があれば、そこは昔登山道の入り口で、乗ってきた馬を返してそこから歩いたことから名づけられたものです。そこから先が険しくなっている場合と、信仰登山で聖なる領域に動物を入れるのを禁じていた場合とがあります。

(『田部井淳子 山の単語帳』掲載順)

『田部井淳子 山の単語帳』


Mont Books(モン・ブックス)
田部井 淳子(著)、栗田 貞多男(写真)
■定価:1650円(税込み)
■発行:株式会社世界文化社

日本の山の自然、気象、動植物、登山行為、施設、道具といった山にまつわる言葉を多数取り上げた「山の小事典」。

2012年に刊行され、版を5刷まで重ねた書籍を文庫サイズで再編集。新規ページに田部井氏と親交の深かった市毛良枝氏コラム、実用登山ガイド、田部井氏の遺志を子息が継いだ東北の高校生富士登山についての記事を掲載。

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田部井淳子

(たべいじゅんこ)

登山家。1939年生まれ。1975年、エベレスト日本女子登山隊副隊長兼登攀隊長として女性として初めて世界最高峰エベレストに登頂。1992年には女性初の7大陸最高峰登頂者となった。登山に関する著書多数。2016年逝去。

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