バルト海に面し、森に抱かれた国、ラトビア。首都リーガの街並みには、幾重にも折り重なった歴史が静かに息づいています。独立回復35年を迎えた現在、豊かな自然と共生する伝統を背景に、洗練された食文化や手工芸、ピルツ(サウナ)文化が、今まさに花開いています。そんなラトビアへの旅を、シリーズでご紹介します。第2回は、ラトビアの文化ともいえる「ピルツ」についてご紹介します。
体を温め、心を浄化する
伝統的サウナ「ピルツ」で生まれ変わる
国立公園内にあるピルツリゾート
「Ziedlejas(ズィエドレヤス)」へ
首都リーガから車で小一時間も走ると、建物がまばらになり、木立や牧場、畑など、豊かな自然の景色が広がります。今回訪ねた「ズィエドレヤス」は、市街地から車で約50分のスィグルダ市にある、ガウヤ川国立公園内のピルツリゾート。敷地内では3種類のピルツのほか、ハイキングやサイクリングを楽しむこともできます。自然の中で体を動かした後、ピルツで汗を流すというのが、ラトビアの人々が好む休日のスタイルだそう。
ハーブなどを育てる畑もある、高低差のある敷地。スタッフの愛犬が自由に走り回る。
また、「ズィエドレヤス」の敷地内には、宿泊者用の三角屋根の「グラスルーム」が点在しています。ワンルームながら、可動式の床が上下することでリビングルームにもベッドルームにもなるという機能的なヴィラです。この設計は、日本の「掘り炬燵」を参考にしたそう。全棟、池に向かって三方が全面ガラス張りになった開放的なつくりです。施設内にレストランはありませんが、食材を持参して付属のキチネットで簡単な料理をつくったり、車で10〜15分の場所にある人気のレストランやカフェに行ったりと、自由に過ごすことができます。
ガウヤ川国立公園の豊かな自然のなかにある「ズィエドレヤス」。「グラスサウナ」(手前)で温まったら、目の前の池に飛び込んでリフレッシュ。奥に見えるのは宿泊用「グラスルーム」。

「グラスルーム」室内。テーブル部を下げると床がフラットになり、壁に収納されているベッドを倒すとベッドルームに。
ピルツマスターのコントロールで
安心して温かさに身を任せる
「ズィエドレヤス」には、薪を燃やした煙を室内に充満させて室内を温める伝統的な「スモークサウナ」、大きなガラス窓がある開放的な「グラスサウナ」、そして、分厚い羊毛で壁と天井を覆った「ウールサウナ」の3種のサウナ棟があります。ここでは「ウールサウナ」での施術についてご紹介します。
ウールサウナ内。壁沿いのベッドに寝そべり、施術を受ける。ベッドの上に置かれているのが「ウィスク」。
サウナの室内へは、「ピルツマスター」と一緒に入ります。「ピルツマスター」は、インストラクター兼施術者。それぞれの人の体温の上がり具合などを見ながら温度を調節し、周辺の森で採れるさまざまな木の枝で作った数種類の「ウィスク」で肌をタップしたり、天然ハチミツパックをしたりしてくれます。その間、施術を受ける側はベッドに寝そべったまま。体が温まると眠気がやってきますが、的確なタイミングでピルツマスターがそっと起こしてくれるので、安心して身を委ねることができます。
ピルツマスター(左)により、森で採取した枝葉をふんだんに使った施術が受けられる。
施術の途中で喉が渇いたり、お腹が空いたりしたら、自由に室外に出て、用意された飲み物やフルーツ、手づくりの黒パンなどを摂ることができます。また、十分に体が温まったと判断されると、水風呂に案内されます。水風呂はテラスにあり、取材時の外気温は約0度。もちろん水は冷たいのですが、ピルツマスターに促され思い切って頭まで浸かってみると、これまで感じたことのないような爽快感! 全身が覚醒します。
休憩スペースには、ドリンクとフルーツ、黒パンが置かれている。

テラスの水風呂。外気温は約0度。
トータルで3時間強、出たり入ったりしながら過ごしているうちに頭が空っぽになり、ただ研ぎ澄まされていく五感だけに集中していることに気づかされます。そして最後には、テラスから庭に向けて張られたネットに横たわり、上から何枚ものウールのラグが重ねられます。不思議な浮遊感とラグに包まれた安心感に、いつしか赤ん坊に返ったような気分でまた眠りに落ちます。
ウールサウナ外観。最後に、左側にうっすらと見えるネットに寝そべる。まるで空中浮遊。
終了後は、一緒に施術を受けた人全員が、全身ピカピカ、表情も明るく優しく変化しました。
ラトビアの人々にとっての「ピルツ」は、伝統的に、体を温めて洗うだけでなく、魂を浄化する場でもあるとのこと。取材で出会った人々がみな、思慮深く落ち着いているという印象だったことの理由の一端を知ることができたように思います。国外から訪れた初体験者でも、生まれ変わったような気分を味わうことができました。伝統、自然豊かな環境、モダンなインテリアという組み合わせが、いかにも“ラトビアの今”を感じさせてくれる「ピルツ」体験です。
「グラスサウナ」のインテリア。心地よい色合わせ。
Ziedlejas Gaujmali
Krimulda parish, Sigulda county, LV-2150
Tel +371-29-491-087
「ウールサウナ」施術料金1名260€、2名350€など
「グラスルーム」宿泊料金1泊130€(平日)〜
https://ziedlejas.lv/en LOTポーランド航空で、ラトビアへ
日本からラトビアへは、LOTポーランド航空のビジネスクラス利用が快適です。成田空港からの深夜便で約14時間。ビジネスラウンジで軽く夜食を摂った後にフルフラットシートでぐっすり眠り、目覚めると早朝のワルシャワ・ショパン空港に到着します。トランジットの空き時間も、ビジネスラウンジでゆったりと過ごしましょう。グループで落ち着いて過ごせるソファや、周囲の視線が気にならないハイバックの一人掛けラウンジチェアなどが、広々としたスペースに余裕をもって配置されています。提供されるのは、ホットミール、コールドミール、そしてフレッシュフルーツやシリアルなど。飲み物の種類も豊富です。ここでのんびりと朝食タイムを過ごし、お昼前のフライトでラトビア・リーガ空港に13時過ぎに到着します。
時差の負担が少ないため、到着日から観光やディナーを楽しむことができます。
日本線の使用機材は、最新鋭のドリームライナー(787-8または787-9)。ビジネスクラスならフルフラットシートでぐっすり眠ってヨーロッパへ。

ワルシャワ・ショパン空港内のLOTポーランド航空のビジネスラウンジ。

ラウンジでは、温かい料理、冷たい前菜やサラダ、そしてフレッシュフルーツ、シリアルなど、バリエーション豊かな食事が提供されている。
取材・文/安藤菜穂子
協力/ラトビア政府観光局
https://www.latvia.travel/jaLOTポーランド航空/
https://www.lot.com/jp/ja