祝・ユネスコ世界遺産登録10周年 古代ローマ時代から続くぶどう栽培の地、フランス・シャンパーニュ。瓶内二次発酵、長期熟成により造られる発泡性のワインは、王侯貴族に愛され、今も世界を魅了し続けています。2015年のユネスコ世界遺産登録により、自然と人の営みが生み出す無二の文化の価値が、あらためて世界に証明されました。個性的な造り手を訪ねながら、その魅力を探ります。・
前回の記事はこちら→ 畑の個性を磨き上げ、シャンパーニュの真髄を極める Egly-Ouriet(エグリ ウーリエ) モンターニュ・ド・ランスの南斜面に広がるアンボネイ。白亜質の大地に根を張る古木のピノ・ノワールは、土地の記憶を受け継ぎながら、力強くも繊細な果実を実らせます。アンボネイの恵みこそが、シャンパーニュを特別な存在にしています。
この地で生まれた「エグリ・ウーリエ」は、自ら畑を耕し、収穫したブドウを自家で醸造・瓶詰めまで行う、RM(レコルタン・マニピュラン)です。いまや世界中のワイン愛好家が憧れる名。しかし、その始まりはごく慎ましいものでした。長らく大手メゾンにぶどうを供給していた農家が、自らの畑の力を信じ、真の個性を世に問う決意を固めたのは1982年。若き当主フランシス・エグリが、家業を継ぎ、自家醸造という未知の扉を開いたときでした。
当主フランシス・エグリさんと娘のクレマンスさん。シャンパーニュ造りの精神が、次の世代へと静かに受け継がれている。
「畑を語るワインをつくりたい」、その願いは、ブルゴーニュの造り手にも通じる哲学です。区画ごとの個性を尊重し、化学的な介入を最小限にとどめ、発酵は野生酵母の力に委ねる。新樽で静かに眠るワインは、やがて3年、5年、10年と時を重ね、瓶の中で穏やかに熟成を続けます。澱とともに過ごすその時間こそが、エグリ・ウーリエの真髄。ワインはゆっくりと深呼吸し、果実の輪郭がほのかに霞みながら、香ばしいブリオッシュやローストナッツ、白亜のミネラルをまとうのです。
伝統的オーク樽が静かに眠る熟成カーヴ。世界で最も入手困難とも言われる造り手の一つ。
近年とりわけ注目を集めているのが、2019年を基調とした「ブリュット・グラン・クリュ」。若々しい果実の張りと長期熟成の深みがひとつに融け合い、しなやかな酸とともに余韻が続きます。さらに、特級畑レ・クレイエールのピノ・ノワールだけを用いた「レ・クレイエール ブラン・ド・ノワール」は、エグリ・ウーリエを象徴する存在。力強さと緻密さが共存し、黒い果実やカカオ、トリュフを思わせる香りが、まるで大地が語る物語のように静かに広がります。
右から・「レ・ヴィーニュ・ド・ビスイユ(Les Vignes de Bisseuil)」は白亜のミネラルを感じる、澄んだ味わい。ピノ・ノワールの力強さとシャルドネの透明感が心地よい「ブリュット・グラン・クリュ(Brut Grand Cru)」は繊細な酸が重なり、豊かな奥行きを持つ。特級畑古樹から生まれる「レ・クレイエール・ブラン・ド・ノワール(Les Crayères Blanc de Noir)」は、愛好家を唸らせる格調高い一本。
現在、メゾンはフランシスと妻アニック、そして次世代を担うシャルルとクレマンスが共に歩んでいます。年間の生産量は限られ、ボトル1本1本が時間の証。手に入れることは容易ではありません。自然への敬意、家族の絆、時間の静けさ、それらが重なり合って生まれる味わいには、凛とした気品があります。エグリ=ウーリエは、「静かなる贅沢」を知る人のためのシャンパーニュです。
アニック・エグリ夫人お手製のシャンパーニュ香る黒トリュフのリゾット。ブラン・ド・ノワールのきめ細やかな泡が料理の旨みを引き立て、口中にやわらかな余韻を広げる。
住所:8 rue de Condé, 51150 Ambonnay
TEL:+33 (0)3 26 57 00 70
試飲・購入・見学不可
お問い合わせ
サンリバティー TEL :03-3465-8011
ヴァンパッシオン TEL:03-6402-5505
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