祝・ユネスコ世界遺産登録10周年 古代ローマ時代から続くぶどう栽培の地、フランス・シャンパーニュ。瓶内二次発酵、長期熟成により造られる発泡性のワインは、王侯貴族に愛され、今も世界を魅了し続けています。2015年のユネスコ世界遺産登録により、自然と人の営みが生み出す無二の文化の価値が、あらためて世界に証明されました。個性的な造り手を訪ねながら、その魅力を探ります。
400年の伝統と挑戦。家族の絆が紡ぐ名門メゾン Henri Giraud(アンリ・ジロー) 1625年、石灰の丘が連なるアイ=シャンパーニュ。この地に根を下ろしたエマール家とジロー家の歴史は、今も静かに息づいています。4世紀にわたる歩みのなかで受け継がれてきたのは、ぶどう畑や醸造技術だけではありません。自然への敬意、変化を恐れない姿勢、そして家族の絆を大切に守り続ける不変の精神です。
アイ村のグラン・クリュの畑を一望できる明るい試飲スペース。テラスもあり、穏やかな風を感じながらシャンパーニュが楽しめる。
現在メゾンを率いるのはエマニュエル・ジローさん。その感性と審美眼、さらに醸造責任者を務めるセバスチャン・ル・ゴルヴェさんの情熱が響き合い、「アンリ・ジロー」は伝統に現代の息吹を重ね、新たな挑戦を続けています。
当主のエマニュエル・ジロー=パトゥさん(右)と、醸造責任者のセバスチャン・ル・ゴルヴェさん。伝統を継承しながら、メゾンの変革を進めている。
その象徴が、アルゴンヌの森のオーク樽で育まれる「フュ・ド・シェーヌ・マルチヴィンテージ」。ピノ・ノワールの力強さと森がもたらす香りが織り成す余韻は、大地の記憶を映すようです。また「PR(Perpetual Reserve)90-20」は、毎年造られるワインをリザーブワインとして継ぎ足して保存してきた、熟成の層を宿した一本。果実味の透明感と奥深い熟成が重なり、「サルバドール・ダリの《記憶の固執》のように、時間がゆるやかに形を変えていくのです」とゴルヴェさんは語ります。
右・自然対流で旨味を引き出す卵形アンフォラ。砂岩、セラミックなど、素材により仕上がりの色が変わる。左・セラミックを鏡板に用いた新世代の樽で熟成。
そのワインの世界を体験できるのが、19世紀の邸宅を改装した「マノワール・アンリ・ジロー(Manoir Henri Giraud)」。趣の異なる5つの客室には大理石のバスルームやぶどう畑を望むテラスがあり、旅人を優しく迎え入れます。館内のスパでは白亜や粘土を用いた独自の「クレイオテラピー(Craÿothérapie®)」のトリートメントが、心身を深く癒やしてくれます。
19世紀の邸宅を改装した気品ある佇まいのホテル「マノワール アンリ・ジロー」の客室。
ワイナリーへの訪問は、シャンパーニュ造りの世界に触れるところから始まります。まず高台にあるベルヴェデール(展望台)からアイ村のグラン・クリュの丘を一望し、続いてセラーで醸造哲学やアルゴンヌの森との結びつきを学びます。夕暮れには「ターブル・エクスペリエンス」が幕を開け、6種のシャンパーニュと1種のラタフィア・シャンプノワを、それぞれのキュヴェのために厳選された料理とともに味わいます。皿に並ぶ素材はすべてワインの表情を引き出すために選ばれ、パンやバター、塩、こしょうは置かれません。テーブル上の一つ一つの要素が、ワインと向き合うために緻密に組み立てられているのです。この体験を通じ、訪れる人はアンリ・ジローの世界の奥深さに触れ、料理とワインの共鳴によって新たな世界を知ることができます。
手前は、だし、マグロ、キャビアの一皿に「PR90-20」を合わせたマリアージュ「5ème élément(第五の要素)」。奥は、シェーヴル、オイスターリーフ、フォアグラに「フュ・ド・シェーヌ マルチヴィンテージ20(Fût de Chêne MV20)」が響き合う「Éventail(扇)」。
住所:17 Boulevard Charles de Gaulle, 51160 Aÿ
TEL:+33 (0)3 26 55 18 55
宿泊・試飲・購入・見学可(完全予約制)
https://champagne-giraud.com お問い合わせ
アンリ・ジロー ジャパン
TEL:03-5777-2639
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