
市川染五郎さんは今年3月、20歳になりました。奇しくも、そんな記念すべき年に初めてのヨーロッパ、パリの旅へ。多忙なスケジュールを縫って限られた時間の中で体感することができた染五郎さんの初パリの風景をお届けします。
ヴァンドーム広場26番地。「ブシュロン」創業160年を機に2018年、美しく生まれ変わったかつての歴史的邸宅にはブティックのみならず、アトリエとクリエイティブスタジオそして、賓客を迎えるアパルトマンがあります。つまりそこにはメゾンのエスプリのすべてが凝縮されているのです。
初めてのパリで、市川染五郎さんはこの特別な場所を五感を研ぎ澄ませて体感しました。
アーカイブ部門の専門家が語るメゾンのヒストリーに熱心に耳を傾け、歴代のコレクションの数々を実際に手にとってその重みとともに愛でた染五郎さん。なかでも彼が特に惹かれたのは金のケース(左下)。「外側だけでなく内側にも素敵な装飾が施されていて、繊細さと力強さの共存を感じました」。

リニューアルの際に新しく創られた「ジャルダン・ディヴェール(冬の庭園)」。メゾンがいつもクリエーションのテーマとしてきた自然へのオマージュが見事に体現されています。
グランドフロアの奥、中世フランスの「中国趣味」時代を彷彿させる「サロン・シノワ」は、メゾンの最初期のサロンの一つ。官能的なまでの独特の雰囲気が現在まで受け継がれています。
ヴァンドーム広場を見下ろす場所にあるアトリエで、それぞれの工程ごとのプロの技を間近に見る染五郎さん。「作っている環境と作品自体の精神がリンクしているような、神聖さ、神秘性を感じます」。

ブシュロンの革新性を象徴する「クエスチョンマークネックレス」。表面はもちろん裏側にも丁寧な磨きをかけるこの工程に特化して技を極めた職人の手もと。

ハイジュエリーの要素として欠かせない伝統的なグワッシュ。今回、染五郎さんはルビーの色付けを体験。「輪郭をどれだけ細く描くか、絵の具でいかに透明感を出すかがとても難しかったです」。

絵を描くことがすっかり日常の一部になり、数々の作品を生み出している染五郎さんにとって、グワッシュを描く体験は最も楽しみにしていたプログラムの一つ。ヴァンドーム広場の象徴、ブロンズの円柱を借景とする邸宅の窓辺で熱心に取り組んでいました。
素晴らしい作品は、とても素敵な空間と環境から生まれる……。今回、「ブシュロン」のハイジュエリーが創りだされるアトリエを訪れ、とても貴重な経験をさせていただきました。
想像していたより若い方々も活躍されていたのは発見でしたが、もちろん、とはいえ、皆さん立派なプロフェッショナル。「ブシュロン」のハイジュエリーを見たときに、高級感だけでなくみずみずしさ、透明感があると感じたのですが、その理由がわかったような気がしました。同時に、歴史、精神、その時代の空気というものまで感じられるジュエリーの芸術作品という側面も知ることができました。
芝居で役を演じるときには、まず資料を調べ、化粧、衣裳を考える。稽古を重ね、本番に向かうプロセスでは、演出家や共演の役者さんもいらっしゃいますが、役の人物を作っていくのは自分一人の中の作業。ある意味、役者はとても孤独な職業です。今回ここで、それぞれの専門の職人さんが一つ一つ丁寧に作ってゆく姿を見させていただいたことで、自分も役に向かって積み上げていく過程を大事にしたいと改めて強く思いました。
Boucheron
26, place Vendôme 75001 Paris
電話:+33 1 42 61 58 16
営業時間:11時~19時
定休日:日曜 不定休
URL:https://www.boucheron.com/
市川染五郎
2005年東京都生まれ。十代目松本幸四郎の長男。07年歌舞伎座『俠客春雨傘』で初御目見得。09年歌舞伎座『門出祝寿連獅子』で四代目松本金太郎を襲名し、初舞台。18年歌舞伎座、高麗屋三代襲名披露公演で八代目市川染五郎を襲名した。8月は「八月納涼歌舞伎」第二部『日本振袖始』『火の鳥』、第三部『野田版 研辰の討たれ』に出演。9月は「秀山祭九月大歌舞伎」に出演予定。
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