花の名所

秋の始まりを知らせるシュウメイギクが見ごろの2つの庭

旬を愛でる花旅・庭めぐり ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、各地の庭や花のスポットを訪ね歩いた経験から、今見ておくべき旬の花、旬の庭情報をお届けします。水曜更新。前回の記事はこちら>>

旬を愛でる花旅・庭めぐり(50)

イングリッシュガーデンに咲くシュウメイギクが美しい!〜神奈川・石窯ガーデンテラス、群馬・アンディ& ウィリアムス ボタニックガーデン

鎌倉の「石窯ガーデンテラス」の庭は、9月中旬〜10月中旬までシュウメイギクの花色に彩られ、あでやかな秋のシーンが楽しめる。

ジャパニーズアネモネの群生に心華やぐ優雅な時間を

まだ夏の名残を残す庭から秋へ、シーンをがらりと変える花があります。9月のお彼岸頃から咲き始めるシュウメイギクです。

漢字で書くと秋明菊なので、キクの仲間と思われがちですが、シュウメイギクはキンポウゲ科の宿根草。春に咲く球根植物のアネモネの仲間です。

日本では有名なガーデンに行かずとも、住宅地のそこここで咲いている景色を見かけるほど広く普及している花ですが、イギリスでもシュウメイギクは大変人気があり、「ジャパニーズアネモネ」の名で、秋のイングリッシュガーデンに欠かせない存在になっています。

そんなイングリッシュガーデンで咲くエレガントなシュウメイギクを、日本で楽しめる2つの庭をご紹介します。

まずは鎌倉にある「石窯ガーデンテラス」。

テラスから庭に下りて、ぜひシュウメイギクの小径を歩いてみて。シンプルな花ながら、心に強く印象に残るのは、秋という季節に本当によく似合うから。

鎌倉五山の一つ、浄妙寺の中にある1922年に建てられた愛らしい洋館を利用したレストランで、広いテラスから庭を眺めながらランチやアフタヌーンティーが楽しめる人気のスポットです。この連載でも何度かご紹介していますが、ぜひシュウメイギクが咲き誇る秋の庭をご覧いただきたくて…。

レンガ敷きの小径に沿って植えられたシュウメイギクは大株に育ち、丸く愛らしいピンクの花が群れ咲くシーンは、本当に華やかでエレガント。これはイギリスで品種改良され、世界に広まった‘ハドスペン アバンダンス’という品種です。

‘ハドスペン アバンダンス’には白花もある。ピンク花と白花、それぞれが生み出す景色の違いを楽しんでもらいたいと、ニコラスさんはエリアを分けて植えているそう。

この庭をデザインし、長く管理も任されているガーデンデザイナーのニコラス・レナハンさんに、なぜイギリスでシュウメイギクが人気になったのか、その理由を教えていただきました。

清楚で涼やかな白花のシュウメイギクもまた魅力的。

イギリスは夏の気候が涼しく、宿根草にとって快適な環境であるため、初夏から夏の終わりまで、同じ宿根草が庭を彩って長く楽しめます。そのため、庭の旬は9月初旬のラストサマーで終わりとする人も多く、秋の庭はあまり注目されてこなかったそうです。

ところが日本のような秋にも花が咲き、紅葉も美しい庭が紹介されると、秋の庭を見直してガーデニングの季節をもう少し長く楽しもうという動きが生じ、使える花は?と考えたときにシュウメイギクがヒット! 以来、秋のイングリッシュガーデンの主役として人気が高まったそうです。

ピンクのシュウメイギクが咲く小径前の花壇には、ピンクのセンニチコウとガウラ、クリーム色のコスモスが植えられ、エリア全体が美しく色合わせされている。

シュウメイギクの群生が、庭をあでやかなピンクに染める景色をテラスでゆっくり眺めていると、何だか心の中まで華やかな秋色に塗り替えられていくよう。

季節ごとに内容が変わるアフタヌーンティはいつ訪ねても大満足なのですが、とくに秋の空気の中でいだたく紅茶はとてもおいしく感じられ、じつはコーヒー党の私ですが、この季節だけは迷いなく紅茶を選んでいます。

シュウメイギクが咲くシーンを探して広い庭園を散策

もう一つ、今度は大人っぽくしっとりした風情のシュウメイギクの景色をご紹介しましょう。群馬県太田市にある「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」です。

「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」に咲く‘ハドスペン アバンダンス’。エントランスを入ると左側に広がる「ダブコートガーデン」を秋色に染める。

イギリスの大きなカントリーハウスに付随する伝統的なイングリッシュガーデンのスタイルを踏襲した庭で、イギリス人のウィリアム・ウルフ氏とアンディ・マクルーラ氏が設計。

日本人のガーデナーさんたちが15年をかけて美しく育ててきたその庭は木々も花壇の植物も充実し、よりスケールの大きな景色を展開しています。

この庭でもシュウメイギクは欠かせない存在。使われているのは、やはりイギリスで改良された‘ハドスペン アバンダンス’という品種です。

暑さの厳しい土地なので、さすがに9月には植物も少し疲れた表情になりますが、その景色をフレッシュに一変させる花がシュウメイギクです。

木製のオベリスクに絡まり咲くシュウメイギクは、その流れがとてもナチュラルで美しい。同色のアスターとの花合わせがおしゃれ。

まだ秋バラの開花が本格化する前、バラがたくさん植えられている「ダブコートガーデン」には、華やかなピンクのシュウメイギクが勢いよく咲き誇ります。

シュウメイギクはほかにも庭のあちこちに植えられていますが、ひときわ華やかな彩りで花も大きく、遠目にもすぐに見つかります。広い庭をシュウメイギクを探してゆっくり散策してみてください。

コスモスの群生や秋にも美しく咲くサルビア、秋になって花色がより冴えるダリアなど、秋の庭の魅力的なシーンにたくさん出会えます。

レンガタイルのすき間からこぼれタネのシュウメイギクが咲く。さりげなくフォトジェニックな小さな景色。

‘ハドスペン アバンダンス’はその環境が気に入れば、どんどん大株に育って毎年花をたくさん咲かせます。

ガーデナーさんにとっては手間がかからない「お助け花」なのだそうですが、冬に地際まで切り戻し、春になって葉がちゃんと展開してくると、「ああ、今年もちゃんと冬越ししてくれた」とうれしい気持ちになるのだそうです。それだけ秋のシーンづくりにマストな花ということだと思います。

シュウメイギクと同時期に楽しめるコスモスの群生も、夏から秋へ、庭のシーンを大きく変えてくれる。

さて、秋の始まりを知らせるシュウメイギクですが、原産地の中国や台湾から日本に渡った後、京都の洛北、貴船地区で野生化したものが見られたことから「キブネギク」という和名でも親しまれています。

これが本来のシュウメイギクで、これを元に交配された品種が全国に普及したようですが、現在ではもうこの原種は見つからなくなってしまったそうです。貴船といえば、縁結びの聖地ともいわれる貴船神社が有名ですが、秋のこの時期、境内にはシュウメイギクがそこここに咲いています。

鞍馬山の麓にある貴船神社。本宮に続く赤い春日灯籠が続く石段は幻想的な雰囲気。縁結びのお社として知られるのは本宮から奥宮に向かう途中にある結社(ゆいのしろ)。写真/PIXTA

交配品種ではありますが、かつてこの地で咲き誇っていたキブネギクの面影を訪ね、小さな花旅に出かけるのも素敵だなと思います。

比叡電車「貴船口」駅からバスで30分ほどの場所にあります。

石窯ガーデンテラス

神奈川県鎌倉市浄明寺3-8-50(浄妙寺境内)
アクセス/JR「鎌倉駅」東口から5番のバスで約9分。「浄明寺」バス停下車徒歩約3分。
拝観料/100円(レストランでの飲食代とは別に拝観料が必要)
TEL/0467-22-8851
営業時間/10時〜17時
定休日/月曜(月曜が祝日の場合は火曜)
https://www.ishigama.info

アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン

群馬県太田市新田市野井町456-1(ジョイフル本田新田店エリア内)
アクセス/東武伊勢崎線「太田駅」よりタクシーで約20分、東武伊勢崎線「木崎駅」からタクシーで約10分
入園料/大人550円
TEL/0276-60-9021
営業時間/9時〜17時(4月〜9月は18時まで)
休園日/無休(12月21日~2月20日は冬季休園)
https://www.joyfulhonda.com/aw/

高梨さゆみ/Sayumi Takanashi

ガーデニングエディター

イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。現在は、種苗会社の会員向け月刊誌のほか、園芸雑誌などの編集に携わる。

写真/横田秀樹

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