花旅・庭めぐり

吉谷桂子さんがプロデュースするあらたな花の名所!群馬・中之条ガーデンズ

旬を愛でる花旅・庭めぐり ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、各地の庭や花のスポットを訪ね歩いた経験から、今見ておくべき旬の花、旬の庭情報をお届けします。水曜更新。前回の記事はこちら>>

旬を愛でる花旅・庭めぐり(47)必見!群馬県中之条町にあらたな花の名所が誕生!〜群馬・中之条ガーデンズ


「中之条ガーデンズ」のスパイラルガーデンは日本のガーデンデザインの第一人者、吉谷桂子さんがプロデュース。2年の年月をかけて力を注ぎ込んだ傑作の庭。

真夏のいま訪ねても美しい、見応えのある庭が2つも!

群馬県の中之条町といえば、知る人ぞ知る花の町。昔から鉢花の育種や生産、またフラワーアレンジメントに利用される枝ものの生産が盛んで、住民の花に対する意識も高い土地なのです。

それを生かし、以前から花の町づくりをアピールして多くの方に訪れてもらおうという活動をしていました。そのため、中之条には「花の駅 美野原」、「花の駅 花楽の里」、と「道の駅」ならぬ「花の駅」が2つもありました。

その2つの「花の駅」がこのたびリニューアル。「花の駅 美野原」は「中之条ガーデンズ」、「花の駅・花楽の里」は「中之条山の上庭園」と名前も変わり、「第24回全国花のまちづくり中之条大会」の開催に合わせ、7月21日から大々的なお披露目となりました。

このリニューアルオープンを私は2年前から心待ちにしていました。

なぜかというと、「中之条ガーデンズ」に日本のガーデンデザイナーの第一人者で、数々のすばらしい庭を生み出してきた吉谷桂子さんがプロデュースする新しい庭ができるからです。

その庭づくりの過程を吉谷さんがご自身のブログで紹介してくださったこともあり、更地の状態からリニューアルオープンまで、ずーっとワクワクしっぱなしの状態でした。

だから、猛暑の真夏のオープンも関係なし。さっそく庭を訪ねてみました。

そこには期待通り、いえ、予想外のすばらしい庭が待ち構えていました。

吉谷桂子さんが全力を注いだスパイラルガーデンに興奮!


石垣がうずまき状に続くスパイラルガーデン。黄色の花の向こうには薄紫のアゲラタムが見え、花色の対比がより印象深くなる。これも計算された花色合わせ。

「中之条ガーデンズ」のエントランスを入り、左方向に目を向けると木立の間から涼しげな薄紫色が見えます。それに惹かれて歩みを進めると、そこには一面薄紫のまるで海のような景色が広がります。この薄紫はアゲラタム。


スパイラルガーデンの周囲を染める青い海は、8万株のアゲラタム。ところどころにアゲラタムの白花も混じるのがナチュラルな雰囲気。


「中之条ガーデンズ」の全貌をドローンで空撮。スパイラルガーデンのうずまきがよくわかる。右下がローズガーデン、左下が町民花壇。

昔からおなじみの花ですが、ここまで広大に地面を埋め尽くすアゲラタムを見るのは初めてで、その涼しく、優しく心に染み入るような美しい色に新鮮な驚きを感じました。

一般的には花の海といえばラベンダーじゃないかと思うのですが、ラベンダーより淡く繊細なアゲラタムを使う、その発想がさすがは吉谷さんだなーと感動さえ覚える景色です。

そして、その中央にあるのがスパイラルガーデン。名前の通り、浅間溶岩石が積まれた石垣がうずまき状になっている花壇です。


猛暑の中でも元気に咲く花々。ピンクの繊細な花はノコギリソウの仲間のアキレア。暑さや乾燥に強い花を選んだ花壇は、見ているほうにも元気を与えてくれる。

じつは春先にも一度ここを訪れたのですが、そのときは周囲の木々にまだ葉がなく、草花の草丈も低かったので、少し高い位置から見るとうずまきの形を鮮明に見ることができました。夏は花の草丈が高くなるので、うずまきの全体を確認するのは難しいのですが、石垣沿いに歩みを進めれば、うずまきの中心に向かっている感覚がはっきりわかります。

石垣で立ち上げた花壇、いわゆるレイズドベッドは私の膝の少し上程度の高さ。そこに夏を彩る草花がこの猛暑の中でも元気に咲いているのです。

地面に咲いているのを見るより視線が高くなるので、花の美しさをマクロで眺めることができます。腰を落とさなくても見える、というのがとてもラクで嬉しい限り。

レイズドベッドの植栽の美しさは、さすがに吉谷さんです。花色の自然な混じり合い、花形の変化によるメリハリなど、そのセンスのよさは真似しようにもなかなかできないものです。

そして、レイズドベッドの花を眺めると必ずその先に見えるのがアゲラタムの薄紫。その薄紫まできちんと計算に入れた花色合わせがされている点が本当にすばらしいと感じました。


レイズドベッドが程よい高さで、腰を落とさなくても花に近い目線で眺められるのもスパイラルガーデンの魅力。うずまきに沿ってこの美しい植栽が永遠に続けばいい、と思わず願うほど素敵な空間。

じつはこの庭に吉谷さんが携わってからすでに4年。どの植物がこの土地の環境に合うかなど、ずっとトライアルを続け、その結果、スパイラルガーデンには現在90種の草花が約5300株も、また周囲のアゲラタムはなんと8万株も植えられており、吉谷さんと中之条の花の会の皆さんが1株ずつ植え込むという壮大な手間と時間をかけてでき上がった庭です。

すでにここに根付いている植物も多く、だからこそ「できたて」の庭ではない、自然な美しさが見るものの心を惹きつけ、心地よい気分にさせてくれるのだと思います。

バラの庭に、町民花壇、ますます見応えが増す庭に大きく期待!


吉谷博光さんが空間プロデュースしたバラのモダンジャパニーズガーデン。水鏡が醸し出す静謐な雰囲気が心を静め、眺めていると心が澄み渡ってくる。

7月21日からのお披露目では、ローズガーデンが初公開。空間デザイナーの吉谷博光さんがプロデュースし、魅力的なバラを生み出す育種家の河合伸志さんが植栽したその庭は、真夏にもかかわらず、まだたくさんのバラが咲いていました。来年の初夏にはどれほど美しい景色が楽しめるかと、今からわくわくの気持ちを抑えきれません。


泉水のあるホワイトガーデン。猛暑の最中でバラを咲かせる河合さんの管理技術に頭が下がる。噴水の白い飛翔と白いバラのコラボが涼しげで美しい。

また、緑の縁取りの中に、中之条町の皆さんが花を植え込んだ町民花壇が100も並び、それぞれの個性があふれる花壇を見比べるのも楽しいです。

「中之条ガーデンズ」はまだ完成ではありません。今年の冬からフジの管理にかけては第一人者の塚本こなみさんによる、フジをメインにしたパレットガーデンの施工が始まり、また、地元の草花をコレクションしたガーデンも作られるそうです。

「中之条ガーデンズ」、新しい庭の名所としてますます目を離せません。まずは、この夏の姿を見に、ぜひお訪ねください。

野山を散策する気分が味わえる「中之条山の上庭園」


山の斜面を利用して作られた「中之条山の上庭園」。「中之条ガーデンズ」とは標高差が519mもあるので、咲く花、咲く時期に違いがあるのがおもしろい。

「中之条ガーデンズ」を見終わったら、そこから20kmほどの「中之条山の上庭園」にもぜひお立ち寄りください。2つの庭は車なら約40分の距離。はなもも街道という景色のよい道で結ばれています。

同じ中条町にあっても、2つの庭には大きな違いがあります。「中之条ガーデンズ」は標高481m、「中之条山の上庭園」は標高約1000m。標高差が519mもあるのです。

植物環境において、その差は結構大きく、適する植物も異なれば、同じ花でも開花時期が異なる場合もあります。ちなみに「中之条ガーデンズ」は3月からのオープンですが、「中之条山の上庭園」は花が咲き始めるのが遅いため、4月からのオープンです。

いまはどちらも夏の花が豊富に咲いている時期なので、「中之条山の上庭園」にも足を運び、自然に咲く花の間を散策するような、気持ちのいい時間を過ごしてみてください。

2つの庭を堪能すれば、小さな花旅がますます充実!


夏の花が元気に育つ「中之条山の上庭園」。野山を散策しているような自然な景色が楽しめるのが魅力。

中之条ガーデンズ

群馬県吾妻郡中之条町大字折田2411
アクセス:JR吾妻線「中之条駅」からタクシー利用(約15分)
入園料:無料
TEL:0279-75-7111
開館時間:9時〜17時(入園は16時30分まで)
休園日:無休 (※12月〜翌年2月は冬季休園)
http://www.town.nakanojo.gunma.jp/garden/n-gardens/index.html

中之条山の上庭園

群馬県吾妻郡中之条町入山小森口4046-2
アクセス:JR吾妻線「長野原草津口駅」からタクシー利用(約30分)
入園料:無料
TEL:0279-80-7123
開館時間:9時〜17時
休園日:無休 (※12月末〜翌年3月末まで冬季休園)
http://www.town.nakanojo.gunma.jp/garden/yamanoueteien/index.html

高梨さゆみ/Sayumi Takanashi

ガーデニングエディター

イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。現在は、種苗会社の会員向け月刊誌のほか、園芸雑誌などの編集に携わる。

写真/横田秀樹

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