修造画報

我らが応援団長、松岡修造さん心のコラム 第10回「挑励(チョレイ)!卓球男子代表に内定した張本智和選手が苦悩の末に取り戻した自信」

1月6日、東京2020オリンピックの卓球日本代表内定選手が発表されました。男子シングルスは張本智和(16歳)、丹羽孝希(25歳)、混合ダブルス、団体戦メンバーとして水谷 準(30歳)の3選手が内定。そのなかでメダルが期待される筆頭が、日本卓球界の若きエース、張本智和選手。「初めて会ったときは小学生で、黄色い通学帽をかぶっていました」と話す松岡さんが、ずっと応援してきた張本選手への思いを語ります。

卓球張本選手

代表が内定した張本智和選手。写真は2019年ITTFワールドツアーグランドファイナル男子シングルス準々決勝。写真/西村尚己/アフロスポーツ

2018年の優勝で生まれた、戦うことへの恐怖心

張本智和選手、日本代表内定おめでとうございます! 昨年、苦しんでいる姿をずっと見ていたので、僕も本当に嬉しいです。智和さんはおそらく、僕が知っている日本人アスリートのなかで、誰よりも東京2020オリンピックの重圧を感じている人。よくぞ、その重圧に耐えて、内定を勝ち取ったと思います。

卓球選手だったご両親のもと、2歳からラケットを握っていた智和さん。学校から帰ると、すぐに宿題をして英語の塾へ行き、その後卓球の練習。そんな毎日を送っていました。初めての取材でご自宅へ伺ったとき、宿題をする智和さんのそばで、僕は彼の黄色い通学帽をかぶって踊ったりして気を引こうとしましたが、一切こちらを見なかった。素晴らしい集中力でした。

張本選手の幼少期

2015年の全日本選手権ジュニアの部で小学生では初めてベスト8に。写真/アフロスポーツ

早くから頭角を現し、あらゆる大会を制覇してきた彼には常に「史上最年少」の冠がついてきました。2017年にITTFワールドツアー男子シングルスに優勝したのも、「世界史上最年少」の14歳61日のとき。日本卓球界の超新星として、国内外で名が知られるようになりました。

そんな智和さんの快進撃にブレーキがかかったのは、2018年の冬でした。智和さんは12月に「2018ITTFワールドツアーグランドファイナル(ITTFワールドツアーの年間王者決定戦)」の男子シングルスで見事優勝! 皮肉にも、その素晴らしい結果がとてつもないプレッシャーとなって智和さんに重くのしかかり、戦うことが怖くなってしまったのです。

追い込まれ、周囲が全員敵に思えた日々

それまでは格上の人にチャレンジする戦いでしたが、王者になったことで「勝ってあたりまえ」というプレッシャーを感じるように。そこには自国開催のオリンピックを控えた重圧と、エースとしての責任感も含まれていました。「チョレイ!」と叫びながら積極的に攻める、彼本来のガッツ溢れるプレースタイルが鳴りを潜め、ついには格下の選手相手に無気力にも見えるプレーをするようになってしまったのです。

そんなとき、僕は『報道ステーション』で智和さんにインタビューさせていただく機会がありました。自信をなくして悩んでいる、当時まだ15歳の少年から話を聞き出すのは、僕にとっても非常にきついことでした。当日は、テレビカメラがあまり視界に入らないように向かい合って座り、最初に「話してみて嫌だと思ったら、放送するのはやめる」と彼に伝えました。

そのうえで、僕は智和さんに厳しい言葉を投げかけました。無気力に見えたプレーについて、「もしも僕がコーチだったら、怒鳴り散らしていたと思う」と。すると、「自分のプレーができる気がしなくて。負けるイメージがだんだん湧いてきて」「まともに戦って負けるより、諦めたほうが何も言われないと思った」と答えた智和さん。15歳の少年がそこまで追い込まれていたのです。

観客席の人がみんな、対戦相手の勝利を望んでいるように思えたとも言っていました。周りの日本人選手たちも、オリンピックの代表を争っている間柄ですから、全員敵。そんな彼が唯一楽しいと言ったのが、高校で友達と話すことです。理由は「しゃべっている相手が敵じゃないから」。まだ15歳ですよ。15歳で周りがみんな敵に思えるなんて……衝撃でした。

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