〔特集〕ユネスコが認めた、グラース・香水づくりの伝統技術 シャネル N°5、時を超えて愛される香り シャネル N°5──その誕生はあまりに革命的であり、100年以上を経た今もなお永遠のモダニティを湛えています。時を超えて愛される秘密はどこにあるのでしょう。秘密を解く鍵は、南フランスのグラースにありました。キーワードは“花からボトルまで”。香水づくりにおける伝統のサヴォアフェール(匠の技)が、ユネスコの無形文化遺産に登録された香りの聖地で、名香を生み出す人々のたゆまぬ努力と情熱に出会います。
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“シャネルの香り”の秘密──抽出
最高レベルの品質を追求すべく、抽出の研究に余念がないセルジュ オルデリス氏。
「ここフランスのグラースで、シャネルのフレグランスに使われる原料を生産している以上、求められるのは最高レベルの品質です」
―セルジュ オルデリス (フローラル抽出研究ディレクター)
ミュル家と手を携えると同時に、シャネルは農園の敷地内に工場を設けました。それは、収穫されたばかりの花の新鮮なクオリティをそのままに次なる生産工程へと繫げるため。花々は工場へ運ばれ、フレグランスづくりに使える原料へと姿を変えていきます。まず、花を溶剤に浸して液体を取り出す作業を繰り返すこと3回。
毎金属の釡に集められた大量のジャスミンの花は、まず職人たちの手作業によってぎゅっと固められてから、溶剤に浸す工程へと移る。
そこから香りの成分となる“コンクリート”を抽出し、これをさらに蒸留して液体の成分である“アブソリュート”を抽出します。香りの成分が凝縮されたこのアブソリュートこそが、調合に使われる大切な原料となるのです。
1キロのアブソリュートには2000時間の手摘み作業で得られる700キロの花が必要。丹念な手仕事の積み重ねがN°5へと昇華される。
セルジュ オルデリスはじめ抽出の工程を担う技術者たちは、化学的知識だけでなく自らの嗅覚を信じ、頼ることも多いのだといいます。花の魅力を最高の状態で留めた「よい香り」を調香師へ届けるために。誇りとともに卓越した技のバトンが引き継がれます。
プロヴァンス地方特有の一軒家であるバスティードには、収穫した花の計量所を設置。計量の後、エッセンス抽出のための工場へ。
(次回に続く。
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