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治療支援アプリって?乳がん患者の副作用に特化した「フリックカルテ」開発者に聞く

2019.03.15

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未来の医療 第10回 進歩する生命科学や医療技術。わたしたちはどんな医療のある未来を生きるのでしょうか。「未来を創る専門家」から、最新の研究について伺います。前回の記事はこちら>>
「定期的に診察は受けているけれど、この不快な症状、今、病院に行くべき? 様子をみるべき?」。こんな悩みに対応して受診の判断などに使えるアプリの開発が進んでいます。

乳がん患者向けのアプリを開発中の埼玉医科大学国際医療センター 乳腺腫瘍科 講師の上田重人さんにアプリの利点や課題を聞きます。

上田重人(うえだ しげと)さん


未来を創ろうとしている人:
上田重人(うえだ しげと)さん
埼玉医科大学国際医療センター
乳腺腫瘍科 講師

乳がん患者の薬物療法の副作用に特化したアプリ


乳がんの専門医の上田重人さんがアプリの開発を始めたのは、薬物療法を受けた患者の副作用により早く対応したいと考えたのが大きな理由でした。

「がんの治療が進み、患者さんが長生きされるようになって、いかに薬物療法などの副作用を減らし、患者さんの日常生活の質を保つかが重要になっています。

一方で、当院で治療を受ける患者さんの数が多く、病院外で起こる副作用やがんの症状のサポートに割く時間がなかなか確保できないというジレンマを感じていました。

また、診察時には自宅で感じた症状、部位、持続時間、程度を患者さんが覚えていないことも多く、個人差も大きいためにわかりにくいのです」。

そうしたなか、2010年代から、患者自身が報告する体調の変化は臨床医が把握する情報よりも鋭敏で速いことが研究でわかってきました。

そして17年には米国メモリアルスローンケタリング・キャンサーセンターが開発した、患者自身が副作用の情報を入力するシステムが患者のQOL(生活の質)を上げるという論文が発表され、さらにこのシステムを使った患者は使わなかった患者に比べて生存期間が有意に延びたことも明らかになりました。

このような研究が行われていることを知り、上田さんはスマートフォンとタブレットのアプリ「フリックカルテ」の開発に取り組み、16年から実験的な利用を始めました。

「フリックカルテ」の画面

「フリックカルテ」

「フリックカルテ」では乳がんの治療薬の副作用の自覚症状を選んで、その強さを入力する。また、スマートフォンが計測した歩数が自動入力され、運動量と自覚症状との関連を自分でも知ることができる。体調が悪いときや質問があるときには医療スタッフとやりとりできる。

「フリックカルテ」を使う患者は毎日、体温、体重、血圧、脈拍などを入力します。また、スマートフォンに内蔵されている歩数計の記録も転送されます。

そして、痛み、吐き気・嘔吐、疲労感、食欲低下といった薬物療法の副作用として代表的な15種類の症状の有無や程度の記録、さらに気になる症状があれば、チャット欄に書き込む(打ち込む)ことができます。

患者からチャット欄に書き込みがあったときには、まずチャットボットが対応します。

「発熱であれば、微熱か高熱かをチャットボットが判断し、解熱剤を飲むといった対応法を自動的に投稿します」。

症状の程度が重いときやいくつかの症状が重なったときには自動的に管理用アプリに連絡があり、医療スタッフがチャット欄に書き込むほか、場合によっては患者に電話します。

また、皮膚症状などでは写真を見て、受診の必要性の有無や治療のアドバイスを行います。

「不安を感じた患者さんからお電話をもらったときに医療スタッフが診察や会議などですぐに出られず、合間にお電話をするのに比べると、チャットでのやりとりや必要に応じての電話は、こちらも様子がわかってから対応できるので、心の余裕ができます。

患者さんも“わかりました”といった短い言葉でも返事があることで安心してくださるし、救急受診が減っている傾向がみられます」。

使用者にアンケートを採ったところ、「安心感がある」「症状の記録が残るので、診察のときに医師と短い時間で濃密に話せる」といった声が挙がりました。

上田さんが「フリックカルテ」で得た23名の患者のデータを解析したところ、多くの患者は疲労感に長く悩まされていること、それによって活動量(歩数)が落ちることが明らかになりました。

「医療者は吐き気・嘔吐や発熱といった急激な症状に注目しがちなのですが、患者さんのQOLに最も影響していたのは疲労感でした。また、同じ薬物療法を受けていても、訴える症状が異なり、副作用には個人差が大きいことも数値で明確になりました」。

薬物療法では最初に受けたときにあらわれた副作用が次回以降も出やすいため、副作用の状態をつかむことは次の副作用の予防につながります。

また、このようなアプリは臨床試験の、特に市販後調査の段階での副作用を知るのに役立つのではないかと期待されています。現在は研究の第2段階に入り、10名の患者が埼玉医大から携帯電話を貸与される形で研究に参加しています。
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