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遺伝子を調べてがん治療に生かす、最先端「がんゲノム医療」とは?

2019.01.18

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未来の医療 第8回 進歩する生命科学や医療技術。わたしたちはどんな医療のある未来を生きるのでしょうか。「未来を創る専門家」から、最新の研究について伺います。前回の記事はこちら>>
がんの検体を用いて「遺伝子パネル検査」でがん遺伝子の異常を網羅的に調べ、がんの個別化治療と今後のがん研究に生かす「がんゲノム医療」を国が推進しています。

前回に引き続き、国立がん研究センター理事長・総長の中釜 斉さんに「がん遺伝子パネル検査」や国の体制整備について聞きます。

中釜 斉さん


未来を創ろうとしている人:
中釜 斉(なかがま ひとし)さん
国立がん研究センター 理事長・総長

がんに関連する遺伝子を一度に多数調べる「がん遺伝子パネル検査」


がんは遺伝子の異常が重なってできる病気です(前回参照)。がんを発生させたり、増殖させたりする遺伝子(ドライバー遺伝子)があることがわかってきて、その遺伝子の働きを抑える分子標的薬の開発が進んできました。

そして、分子標的薬のあるがんでは、手術や生検で採取したがん細胞の遺伝子異常を調べ、その分子標的薬を使うかどうかを決めることが標準的になっています。

その一方で、同じ部位のがんであっても、がんの性質が患者ごとに違い、分子標的薬や抗がん剤の効果や副作用が異なることもだんだんと明らかになっています。

そのため、一人一人のがんの遺伝子の異常をできるだけ網羅的に調べ、薬との相性を確認する「がん遺伝子パネル検査」(3ページ参照)が実現しつつあります。

2019年の保険承認後には、多くの患者が検査対象に


がん遺伝子パネル検査は、すでに先進医療などで、がん治療の現場に入っており、2019年春には、国立がん研究センターが開発した、114種類のがん関連遺伝子を一度に調べる「NCCオンコパネル」が保険承認される見通しになっています。

この検査は、がんになった人すべてに行われるのではなく、「手術での切除が難しい、または再発したがんで、(1)原発不明がん、(2)標準治療がない、あるいは標準治療が終了もしくは終了が見込まれる固形がんの患者さんが対象となると思われます」と中釜 斉さん。

2018年に先進医療として行われていた際の患者負担額は47万円でしたが、保険収載された場合の負担については今後の検討を待つ必要があります。

がん遺伝子パネル検査の結果が出るまでには1か月弱かかります。まずは病院内で専門家集団が医学的に解釈し、担当医や患者に伝えるべき情報を整理します(下図参照)。

がん遺伝子パネル検査の流れ

すべての結果を患者に伝えても複雑であり、理解が難しいこと、使える分子標的薬がない遺伝子異常については知らされても患者が困惑することなどからです。

中釜さんによると、このNCCオンコパネルで検査される114種類の遺伝子の異常に対応する分子標的薬が現在必ずしもあるわけではなく、治療薬に結びつく患者の割合は1〜2割程度とのこと。

「遺伝子異常があって、それに対応する分子標的薬がない場合には、通常の抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬による薬物療法や緩和医療が行われます」と中釜さんは説明します。

なお、専門家集団はエキスパートパネル、キャンサーボードなどとも呼ばれ、メンバーは臨床医、病理医、遺伝医学の専門医、遺伝カウンセラー、がんゲノム研究者などです。


また、検査担当者や担当医が意図せずに患者に遺伝性あるいは家族性のがんのドライバー遺伝子を見つけるケースも想定して、専門家集団があらかじめ情報を精査して、患者に伝える際に注意を促します。

もし乳がんや卵巣がんになりやすいBRCA遺伝子、大腸がんや子宮体がんになりやすくなるミスマッチ修復機構に関連する遺伝子などが見つかった場合は、患者は遺伝カウンセリングにつなげられます。

そして、これらの遺伝子を持たない人よりも頻回に検診を受け、早期発見に努める、あるいは乳房や卵巣を予防切除するなどの予防・早期治療策の検討を行います。
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