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“健康長寿”を世界へ。日本橋「江戸前糖質オフ」プロジェクトとは?

2018.07.10

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江戸前「糖質オフ」昼膳 第1回(全6回)

細田将己さん、山田 悟先生、髙津克幸さん

(右)細田将己さん(中)山田 悟先生(左)髙津克幸さん ゆかた・帯/竺仙 下駄/銀座ぜん屋本店 バッグ/和小物さくら

江戸の歴史と食文化を色濃く残す東京・日本橋。この街を支える老舗の若き主人たちは、今熱い想いに満ちています。それは、2020年に向け、街ぐるみで取り組む「糖質オフ」プロジェクト。


ゆるやかな糖質制限食”の啓発に取り組む山田 悟先生、榮太樓總本鋪 取締役副社長の細田将己さん、にんべん 代表取締役社長の髙津克幸さんに、プロジェクトについてお話を伺いました。

世界へ向けた健康食文化への挑戦
〜時代のニーズ“健康長寿”を考えて糖質を抑えた「江戸前」伝統の味を〜


(右)細田さん(中)山田先生(左)髙津さん

(右)細田さん(中)山田先生(左)髙津さん

山田… お二人に最初にお会いしたのは「食・楽・健康協会」の勉強会に参加してくださったときでしたね。

細田… 私が参加したのは2013年に先生が協会を立ち上げられて間もない頃に行われた勉強会でした。和菓子はバターや生クリームを使わないので、健康的というイメージがありますが、糖質の観点から考えますと厳しいものがある。

世間の関心が「糖質オフ」に集まる中、和菓子の評価があるときがらっと変わってしまうのではないかと危機感を抱いたのがきっかけでした。

髙津… 弊社が生業としているかつお節はたんぱく質が多く、だしは低カロリーのうえに糖質もほぼゼロ。糖質の観点では安心できる食品の一つです。

にもかかわらず私が関心を持ったのは、趣味でトライアスロンをやっていまして、レース直前に体内に最大限の炭水化物を取り入れるカーボローディングを行っていましたので、山田先生のご著書『糖質制限の真実』を拝読し、健康上はどうなのかを知りたくなったからです。

山田… “人生100年時代”といわれ健康長寿を維持することが時代のニーズとなっている今、江戸時代以来、食文化の発信地となってきた日本橋の老舗の皆さんに、この食事法について関心を持っていただけたのは本当に光栄です。

榮太樓總本鋪さんは糖質制限ようかんを開発する難事業にも取り組まれ、見事、商品化に成功されました。

「その時代が求める嗜好に応え、新しい味を創造することこそが私たちの務めだと考えています」―細田さん


細田さん

細田… 安政4(1857)年、日本橋のたもとの屋台で金きん鍔つばを焼いて売り出したのが弊社の始まりです。そのため創業以来、〝江戸の餡”にはこだわって商品を作ってきました。

糖質制限にすると伝統の味とは少し異なるものになってしまうけれど「今の時代に合った進化系の餡を作らせてください」と私の父である会長がご先祖さまの墓前で頭を下げ、このプロジェクトが始まりました。

また、私どものこうした決意の最後のひと押しとなったのが「糖尿病で甘いものを制限されてもできることなら食べたい」というお客さまの切実な声でした。

山田… 実際の反応はいかがでしたか。

細田… 発売して1か月後に年配のご婦人から「10年間、甘いものが食べられなかったけれど、この糖質制限ようかんにはお医者さまの許しが出ました」というお手紙をもらいました。ここを目指して取り組んできたので、とても嬉しかったですよ。

山田… 治療のためとはいえ、患者さんに制限を加えるのはつらいので、私たち医師にとってもありがたいことです。

「伝統とは革新の連続でもあります。だからこそ319年間もだし文化を継承できたのです」―髙津さん


髙津さん

髙津… 今のお話を伺い、さすが日本橋の老舗のなせる業だと感心しました。伝統を打ち破り新しい食文化を創造する――。日本橋で“老舗”と呼ばれる店にはこうした進取の気性に富んだパイオニア精神が脈々と受け継がれています。

元禄12(1699)年から319年間、商いを続けている弊社でも、業界に先駆けて「かつお削りぶしフレッシュパック」を開発するなど、時代のニーズに合わせて絶えず新しいことに挑戦してきました。

現在は山田先生のご活動に触発され、定番商品である「つゆの素」の低糖質版を作りたいと考えています。

山田… それはいいですね。煮物は糖質が少ないように見えますが、煮汁に砂糖やみりんをたっぷり使いますので、意外に多いのです。

糖質オフのつゆの素で作った煮物なら安心して食べられます。また、私がにんべんさんのかつおだしに注目するのは減塩にもつながるからです。

細田… 糖尿病だけでなく高血圧症にかかっている人も増えていますね。

山田… 現在、日本には約4300万人の高血圧症の人がいます。これは日本人の3人に1人にあたります。

我々内科医は「高血糖で傷ができ、高血圧で傷口が広がる」といういい方をよくします。血圧が高いと眼や腎臓が傷み、糖尿病の合併症である網膜症(失明)や腎症(透析)が加速して進行するからです。

健康長寿を脅かす生活習慣病を克服するには、日々の食生活で糖質と塩分をコントロールすることが欠かせないのです。

髙津… 弊社は減塩商品にも取り組んでいますが、単純に塩分を減らすのではなく、かつおだしの量を増やして全体の味のバランスを見ながら減塩しています。

減塩商品といえば味が物足りないという人が多いけれど、おいしく召し上がれますよ。

山田… まさに、だしのパワーですね。おいしいだしで味を補うことにより糖質も塩分も確実に減らせます。

「“ゆるやかな糖質制限食”がごく当たり前に選択できる食文化のある日本橋は素晴らしい街です」―山田先生


山田 悟先生

一方、一般のかたに日本古来の伝統食であるだしの素晴らしさに気づいていただき、日常の食生活に取り入れてもらううえで、だしのテイスティングができる「日本橋だし場」は革新的な取り組みでしたね。

細田… 弊社の甘味もそうですが、毎日食べるものだからこそ、やはり「おいしさ」には、とことんこだわりたいですね。糖質や塩分に配慮されていてもおいしくないと続きませんから。

山田… 同感です。私が理想とするのはおいしいと思って食べてみたら、それは糖質を抑えて減塩された食品だったというものです。この方向でお二人が商品開発に取り組んでくださっているのは非常に心強いことです。

また、大事なのはいろいろな選択肢があることで、“ゆるやかな糖質制限食”がごく当たり前に選択できる食文化のある日本橋は素晴らしい街だと思います。

髙津… お客さまに選んでいただける決め手を持つことが大切です。“健康長寿”のニーズに応えるためにも品揃えやサービスの中に糖質を抑えた伝統の味を組み込んでいきたいですし、街全体でもさらに取り組みたいことです。

山田… これまで特定の食事療法は一過性の流行りで終わっていましたが、街全体で取り組んでいただけると文化として根づいていくのではないかと思っています。

日本橋は五街道の起点の街。すべての道の始まりですから、これからも皆さんの取り組みには大いに期待しています。

日本橋

歴史的建造物に高層ビルといった景観が楽しめて観光地としても人気。2020年に向けて「健康の街」としてもさらなる注目を集める街に。

●山田 悟先生(食・楽・健康協会 代表理事)


1994年、慶應義塾大学医学部卒業。2011年より北里研究所病院糖尿病センター長。糖尿病専門医。臨床・研究とともに“ゆるやかな糖質制限食”の啓発と普及に精力的に取り組む。

診療を通して予防医学の大切さをひしひしと感じている。「病気になって支払う医療費を考えれば、食事に投資する費用は安いものです」。

●髙津克幸さん(にんべん 代表取締役社長)


1970年、12代目当主・髙津伊兵衛氏の長男として生まれる。青山学院大学卒業後、髙島屋横浜店での3年間の研修を経て1996年に(株)にんべんに入社。同社が創業310周年を迎えた2009年に代表取締役社長に就任。日本の伝統の味を世界に広めることを目指す。

体験型の店舗が評判に。「従来の顧客層とは異なるお客さま(近隣の会社員)が増え、だし文化を見直してもらうきっかけに」。

●細田将己さん(榮太樓總本鋪 取締役副社長)


1973年、7代主人・細田 治氏の長男として生まれる。学習院大学卒業後、2007年に㈱榮太樓總本鋪に入社。2016年に取締役副社長に就任。企画開発部門の責任者として新商品を世に送り出すほか、和菓子の魅力を伝える講演活動にも取り組む。

2020年の東京オリンピックに合わせて本店の改装を計画。「『日本橋だし場』に刺激を受け、楽しいコンセプトを考えたいと思っています」。
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