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スキンケア

ひたむきな研究が生み出す高い技術力。岡部美代治さんが「大正製薬」のコスメ開発を取材

2025.08.18

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〔特集〕メイドインジャパンの職人技コスメ 日本の化粧品技術力に今こそ注目 日本生まれの優れたスキンケアをご紹介する職人技コスメ特集。第4弾となる今回は、世界中からの信頼を集める日本の研究開発や技術力にあらためてフォーカスし、独自の新知見や革新的テクノロジー、それを支える研究者の信念や情熱など、ものづくりの裏側を取材しました。

特集「職人技コスメ」の記事一覧はこちら>>>

製品開発の根幹となる基礎研究において、自社で培養した細胞や人工皮膚モデルを使うメーカーも増えています。より効果の高い理想的な成分を開発するために、緻密で高度な研究が行われています。

[研究所訪問]
ビューティサイエンティスト岡部美代治さんが「大正製薬」の研究所へ

一つの信念から生まれる化粧品。真のラグジュアリーは、日本のものづくりにあり

(右)ビューティサイエンティスト 岡部美代治さん

大手化粧品会社の研究所、商品開発を経て、2008年より美容コンサルタントとして活動を開始。科学者の視点で化粧品の価値を見極め、わかりやすい言葉で伝える。

(左)大正製薬 セルフメディケーション研究センター長 内田さえこさん

医療用医薬品の研究室で創薬や薬理研究に従事。本社の学術センター長を経て、2023年現職に着任。センター長として医薬品、食品、化粧品の研究開発を率いる。

美と健やかさを支えるエネルギーに着目した研究

岡部 革新的な発見をベースに誕生したスキンケアとして大きな話題を呼んだ「マイトル」のデビューから3年が経ちます。商品開発はマーケティング調査からニーズを読み解くニーズ型と、新たな知見や素材といった “種” を商品化につなげるシーズ型がありますが、マイトルは後者。研究体制がしっかりしている大正製薬さんならではのものづくりだと思います。


2022年にデビューした「マイトル」は、スター商品の先行美容液、ローション、ナイトクリーム、アイケアの4アイテム。現在、新商品も開発中とのこと。

内田 大正製薬の先端皮膚科学研究に基づいたスキンケア化粧品をお届けしたいという一心で研究を重ねました。発売まで9年の歳月がかかっています。

岡部 美容領域にかかわる研究はいつ頃始められたのでしょうか。

内田 皮膚病の薬をつくっていましたので、そこからの流れでヘパリン類似物質とプラセンタを組み合わせた薬用化粧品を1996年に発売しましたが、研究に本腰を入れたのは2000年頃です。2013年にタウリンの肌への作用を発見したことで弾みがつきました。

岡部 私もですが、タウリンといえば大正製薬、というイメージの方も多いのではないでしょうか。興味深いお話です。

内田 製品化を目指して研究をコツコツと推し進めるなかでターニングポイントとなったのが、マイトルのエイジングケアアプローチの要となる発見です。

写真はマイトルの成分を的確に肌へ届ける2重膜のナノカプセル。サイズは100nmほどで水媒体に溶かしても光を通すほど分散。

岡部 その大発見については、薬機法の関係上ここで詳細を記事にすることはできないんだけど、大まかにいえば肌本来がもつ機能にかかわる部分の発見ですよね。車にたとえるならエンジンのメンテナンス的なこと。鋭い着眼点だと思います。

内田 大正製薬は、長年身体本来の働きであるエナジーサイクルに着目し続けていますので、弊社の研究視点の骨格といえるかもしれません。

岡部 なるほど。エネルギーこそが健康や美しさの源ですからね。年齢を重ねることは避けられませんが、体や肌の機能の衰えにブレーキをかけることは可能だし、今はその巻き戻しも望める時代。サイエンスの進化によって、スキンケア化粧品が提供できる価値はどんどん高まってきていると思います。

ナノカプセル化した「MT-グロウコンプレックス」は、モモ葉、ボタン、ハマメリスの3エキスの組み合わせ。生薬をはじめ1000種以上の素材から203種に絞り、皮膚モデルで評価し厳選。

心地よく豊かな毎日をサポートする商品をつくりたい

岡部 今特集のテーマは日本コスメの技術力。研究開発について深掘りしていくのですが、目的が明快な医薬品開発を生業にしてきた会社だからこそ、化粧品開発にも同等のこだわりをもっている印象があります。

内田 長年の研究開発で培った知見や製剤技術を生かせることはマイトルの強みであると自負しています。一方で品質も効果と同等に重視しており、自社基準のクリアを徹底しています。

「先端のサイエンスに裏打ちされた、高品質の化粧品を選び、使える。幸せな時代がやってきたと思います」── 岡部さん

岡部さんと研究開発メンバーが、おなじみ「ファイト、一発!」の掛け声とともに笑顔を見せます。「皆さん明るくいきいきとして、自分たちの研究に誇りをもっていることが伝わってきました」と岡部さん。

岡部 大正製薬さんの基準はハードルが高いと推察します。そこを乗り越えようとする熱意や研究に対するひたむきな姿勢、要するに勤勉な日本人気質こそが、日本コスメの高い技術力を支えているのだと思います。それを使える消費者はハッピーだし、作り手にとっても商品を通して研究成果を社会に還元できることは大きな喜びですよね。

内田 おっしゃるとおりです。研究者は研究に邁進するだけでなく、生活者の皆さんとのつながりを考えること、俯瞰して見ることが重要で、そのためには社内の各部署との連携が欠かせません。我々は医療用医薬品を開発していますが、一般生活者向けの医薬品や商品も多く、毎日の生活に寄り添っていこうという考えが強い会社です。大正製薬らしい商品をこれからも発信していきたいと思います。



(次回に続く。この特集の記事一覧はこちらから>>

この記事の掲載号

『家庭画報』2025年09月号

家庭画報 2025年09月号

撮影/阿部 浩、高嶋克郎 取材・文/佐藤由喜美

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