美容・健康

医師の診断を受ける「風邪ですね」に込められた本音

【連載:お医者さまの取扱説明書】内科医に教わる患者と医師の良好コミュニケーション術

風邪っぽくて病院に行く。診察を終えた医師が「風邪ですね」と診断をする。一見簡単な言葉の中に、現状と先の見通し、患者への負担軽減や医療費の問題など医師のさまざまな思惑が込められています。診察室で医師がよく使う言葉の本音を伺います。

尾藤誠司先生

尾藤誠司先生
独立行政法人国立病院機構 東京医療センター 臨床研修科医長・臨床疫学研究室長

「風邪です」と自信を持って診断できる医師はいない

「三日前から微熱が続いて、喉が痛くて、咳と鼻水が止まりません」、「風邪ですね」診察室で日常的に交わされるこのような会話。しかし、「風邪だ、と100パーセント自信を持っていえる医師はいません。がんをがんと診断するのはさほど難しくないのですが、風邪を風邪と診断するのはとてつもなく難しい」と尾藤誠司先生はいいます。

たとえば胃に“何か”ができたとき。内視鏡で取ってきた細胞を顕微鏡で調べ、がん細胞が見つかれば、医師は「胃がんです」と断言することができます。

一方、風邪の場合はどうかーー。

風邪はウイルスの感染によっておこる病気ですが、そのウイルスを一般的な血液検査や画像診断で見つけることはできません。しかるべき研究機関で徹底的に調べようとすると、患者の身体的負担も大きく、医療費も膨れ上がり、結果が出た頃には治っている確率も高く、メリットよりデメリットのほうが明らかに大きい。医師は、検査に頼らず診察だけで風邪と診断しなければならないのです。

そのような状況で患者さんに「風邪ですね」と診断をくだす医師の胸の内を、尾藤先生は次のように分析します。

“8割がた風邪だが、それ以外の病気の可能性も2割くらいはある。しかし一刻を争う状況ではなく、患者さんに負担をかけてまで詳しい検査をする必要はないだろう。今は風邪と診断して、とりあえず時間の経過をみることにしよう”

「このとき医師が犯してはいけないエラーが2つある」と尾藤先生はいいます。風邪に似ているが風邪ではない怖い病気を見逃してしまうエラーと、風邪なのに不必要な検査を行い患者さんに負担をかけてしまうエラー。

医師は、後者を回避するために「様子をみる」という手段を選択し、前者を回避するために必要に応じて「症状が続くようだったらまた来てください」とつけ加えるのです。

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