美容・健康
2023/03/15
がんまるごと大百科 第3回【検診編】(03) がんの早期発見を目的に行われる検診ですが、日本ではまったく受けない人と受けすぎている人に二極化しているといわれます。検診の効果を最大限に享受するために検診のメリットとデメリットをよく理解して適切に受診することが大切です。前回の記事はこちら>>
中山富雄(なかやま・とみお)先生
国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部部長。大阪大学医学部卒業。大阪府立成人病センター調査部疫学課課長、大阪国際がんセンター疫学統計部部長を経て、2018年より現職。がん検診の情報をわかりやすく伝える。著書に『知らないと怖いがん検診の真実』など。
がんの死亡リスクが高まる年齢では国が推奨する5種類の検診を基本としながら自分のがんリスクに応じた検診を欠かさず受けることも大切です。
「例えば喫煙者は明らかに肺がんリスクが高いので肺がん検診は必ず受けましょう」。検診を賢く選べるよう日頃の生活習慣を振り返り、自分のがんリスクを認識しておきたいものです。
一方で、健康な人を対象とした場合、100パーセントがんを発見できる検査はないといいます。
「検診に高望みをしないことです。それは人間ドックの検査も同じです。人間ドックで行われる検査の中には科学的根拠が確定していないものもあるので、がんの疑いをかけられる偽陽性や過剰診断などのデメリットがあることもよく理解したうえで利用しましょう」と中山先生はアドバイスします。
そして検診を受けているから大丈夫と安心せず体のサインを見逃さないことが肝心です。
「何らかの症状が10日ほど続くようなら迷わず医療機関を受診してください。自分の体を守ることができるのはあなた自身です」。
●こんな症状が10日続くときはすみやかに医療機関を受診
※「おなかが痛む」「腰が痛む・重い」などの症状が続くときも受診する。『知らないと怖いがん検診の真実』(中山富雄著・青春出版社刊)を参考に作成
国が推奨する検査方法に含まれず、早期発見に有効とはいえない
腫瘍マーカー検査は、がんができたときに血液や尿などの中に増える成分を測定する検査で、人間ドックのオプション検査として一般的です。
「残念ながらこの検査はがんの早期発見にはほとんど役に立ちません。国が推奨する検診の検査方法にも含まれていません」と中山先生は解説します。
国立がん研究センター中央病院の人間ドック部門で腫瘍マーカーの精度について調べたところ、がんにかかっている人のうち、腫瘍マーカーで正しくがんであると判定された人の割合は最も高いものでも2割に満たないという結果でした(下表参照)。
「Ⅹ線検査や超音波検査などの画像検査で異常はないのに腫瘍マーカーの数値だけ高いことはよくあります。精度を知らずに気軽に申し込んで高値になるとがんが見つかったと早合点して振り回されることも多いのでご注意ください」。
●がん検診における腫瘍マーカーの精度
国立がん研究センター中央病院の人間ドック部門受診者データ(コホート研究)
*…がんにかかっている人のうち腫瘍マーカーで正しく陽性(がんである)となる人の割合 **…がんにかかっていない人のうち腫瘍マーカーで正しく陰性(がんではない)となる人の割合 M Sekiguchi,T Matsuda.Scientific Report 2020
1「女性の2人に1人はがんにかかる時代です」
1−1 2人に1人はがんにかかる時代、正しい情報を知りましょう
1−2 男性よりひと足早く、30歳過ぎから増える女性のがん患者。その理由は?
1−3 早期発見なら多くのがんは助かる病気。かかることを想定してリスクに備えましょう
2「5つの健康習慣を実践してがんをできるだけ予防する」
2−1 女性のがん要因として最も多いのは「感染」。がん予防につながる5つの健康習慣とは
2−2 がん予防にはまず禁煙や節酒を! 嗜好品の摂り方をチェックしましょう
2−3 がんのリスクが約4割下がる5つの健康習慣。運動を欠かさず、適正体重を保ちましょう
3「早期発見に役立つ根拠のある検診を受ける」
3−1 がん検診を正しく利用してがんによる死亡リスクを減らす
3−2 目的はがんを早期に発見し適切な治療をすることでがんによる死亡を減らすこと
3−3 国が推奨する検診を基本に自分のがんリスクに応じた検診を賢く選んで受ける
取材・文/渡辺千鶴
『家庭画報』2023年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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