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髙橋大輔さん、檀 ふみさん、茂木健一郎さん、宮本亞門さんが熱く語る「チャイコフスキーに魅かれる理由」

2021.01.15

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私たちの心に寄り添うチャイコフスキー 第8回(全9回) 2020年に生誕180周年を迎えたピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840~1893年)。時に甘く、時に悲しく、深く、語りかけるその音楽は、子どもから大人まで聴く者の心をとらえて離しません。本特集では、彼が生前暮らした家や資料、チャイコフスキーに魅了されたかたがたの言葉から、チャイコフスキーの心の奥底、その音楽の真髄に迫ります。前回の記事はこちら>>

各界著名人が熱く語る
私がチャイコフスキーに魅かれる理由


1.檀 ふみさん


檀 ふみさん
俳優
檀 ふみ(だん・ふみ)さん


作家・檀 一雄の長女。高校生でデビュー以来、多くの映画、テレビドラマなどで活躍。エッセイストとしても評価が高く、著書多数。友人の阿川佐和子さんとの共著、『ああ言えばこう食う』では第15回講談社エッセイ賞を受賞。

「父の影響で幼少から親しんでいた音楽甘美なメロディに心洗われます」


『N響アワー』で司会を務めていたとき、心理学者の方と「音楽と人の心の健康」をテーマにしたことがあります。先生曰く、チャイコフスキーは失恋に寄り添う曲。心が痛い時に思い切り泣かせてくれるので、カタルシスとなって癒やしにつながるそうです。

私にとっては、チャイコフスキーの美しいメロディラインは父との思い出を甦らせてくれるもの。私が生まれた時に父は初めての女児誕生を喜んで、「花のワルツ(くるみ割り人形)」のレコードをかけたと聞いています。

友人で同世代の作家、森 敦さんが芥川賞を受賞して数十年ぶりに文壇に戻られたときには、森さんが第一作でテーマにした「アンダンテ・カンタービレ」のレコードをかけて我が家でお祝いしたことなども懐かしく思い出されます。

2.茂木健一郎さん


茂木健一郎さん撮影/本誌・大見謝星斗
脳科学者
茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)さん

「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードにして脳と心の関係を研究し、さまざまなフィールドで活躍。『すべては音楽から生まれる 脳とクラシック』(エイベックス・マーケティング)の選曲を行うほどクラシック音楽に造詣が深い。

「ぱっと聴いて好きになる。さらにじっくりと楽曲を探っていくと自分を写す“鏡”がそこに現れる」


チャイコフスキーの曲には、「ひと聴き惚れ」の魅力があります。人間の脳は、感情の回路である扁桃体などが働くと、好きとか感動したと即断するのですが、彼の曲もそう。さらに脳は好きという感情が芽生えると、その理由を理性で分析するようになっています。

チャイコフスキーの音楽も、ぱっと聴いて好きになったら、その「奥」にある音楽の深みをさらに探ってみてください。たとえば「白鳥の湖」「くるみ割り人形」「交響曲第6番《悲愴》」といった、親しみやすさでゆるぎない人気を誇る名曲も、じっくり聴くと随分と複雑で奥深いことがわかります。

誰かを好きな理由を分析するとやがて自分がわかるように、チャイコフスキーも好みの曲を時間をかけて聴いて熟考すると、自分を写す「鏡」がそこに現れるはず。「憂鬱なセレナード」もおすすめです。

3.髙橋大輔さん


髙橋大輔さん©AP/aflo
フィギュアスケーター
髙橋大輔(たかはし・だいすけ)さん

1986年、岡山県生まれ。2020年1月、シングル競技からアイスダンスに転向して村元哉中(かな)選手とペアに。07/08のプログラム「白鳥の湖ヒップホップバージョン」、「ロミオとジュリエット」もチャイコフスキー作品。クラシックとモダンが融合した「白鳥の湖」はその革新的な振り付けで、特に高い人気を誇る。

「時代を超えて支持される作品を作り続けた規格外の創造性が羨ましい」


チャイコフスキー作品3曲の振り付けで特に気に入っているのは、2006/07シーズンのショートプログラム「ヴァイオリン協奏曲」。ほかのスケーターの演技を見て「壮大でいい曲だな、いつか滑りたい!」と思っていたので、実現して嬉しかったですね。

ゆったりした前半から後半への盛りあがりが、滑っていてすごく気持ちいいんです。曲からパワーが送られて、まるで後押ししてくれるような。この曲の試合は、いい結果ばかりだった記憶があります。

チャイコフスキーの印象は“天才肌、規格外の人”。常識では測りきれないタイプ? でなければ、こんなに素晴らしい作品を多数残せるはずがない。時代を超えて、人々に受け入れられる作品を生み出したそのクリエイティビティは羨ましい。でも一緒に生活したら大変そうですよね(笑)。

4.宮本亞門さん


宮本亞門さん
演出家
宮本亞門(みやもと・あもん)さん

新型コロナウイルスと闘う人に希望を届ける「上を向いて~SING FOR HOPE」プロジェクトを展開。著書『上を向いて生きる』(幻冬舎)も好評発売中。2020年12月7日~30日には東京・PARCO劇場にて『チョコレートドーナツ』上演。

「自らの感情の起伏をこれほど正直に譜面に記した作曲家を私は知らない」


チャイコフスキーの舞台音楽は、主人公がみな心痛める少女や女性たち。男性ヒーローが主役ではないマイノリティへの共感が表現の軸になっている気がします。

そのため、2001年のミュージカル『くるみ割り人形』の演出では、少女クララの心情にスポットを当てました。アメリカの作曲家による新作だったこともあり、原作のファンタジーさを損なうことなく同じものにならぬよう、設定を現代に置き換えました。

舞台音楽以外にも、「ピアノ協奏曲第1番」「序曲1812年」など視覚的に優れた曲があります。

内省的で物悲しく、メロディが脳裏に焼きつくのがチャイコフスキー。甘やかで繊細かつ暴力的なほど激しい面もあり、譜面を読むと本人の感情の起伏がそのまま情景として伝わってくる稀有な作曲家です。
取材・文/菅野恵理子、小倉理加、小松庸子 編集協力/三宅 暁 取材協力/Natalia Goryacheva ロシア国立チャイコフスキーの家博物館

『家庭画報』2021年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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