アート・カルチャー・ホビー

今をときめくピアニスト・藤田真央さんにとっての“チャイコフスキー”とは?

私たちの心に寄り添うチャイコフスキー 第6回(全9回) 2020年に生誕180周年を迎えたピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840~1893年)。時に甘く、時に悲しく、深く、語りかけるその音楽は、子どもから大人まで聴く者の心をとらえて離しません。本特集では、彼が生前暮らした家や資料、チャイコフスキーに魅了されたかたがたの言葉から、チャイコフスキーの心の奥底、その音楽の真髄に迫ります。前回の記事はこちら>>

指揮者、演奏者、演出家が語る
チャイコフスキーの聴きどころ(3)

(1)小林研一郎さん>>
(2)千住真理子さん>>

藤田真央さん
「サンクトペテルブルクで演奏した時は、間のとり方や内声の響かせ方が新鮮だったらしく、オーケストラも客席も一体になって盛り上がりました」
藤田真央(ふじた・まお)さん
1998年生まれ。2019年チャイコフスキー国際コンクールで第2位。ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管弦楽団とロンドン・デビューの際、「雄弁な詩情と、深みのある解釈」「大胆な表現」とTHE TIMES紙が絶賛。映画『蜜蜂と遠雷』では風間 塵役の演奏担当。CD『ショパン:スケルツォ/即興曲』が話題に。https://maofujita.com/

【ピアノ協奏曲】
甘美で豊潤な響きに浮かぶロシアの情景
藤田真央さん(ピアニスト)

チャイコフスキーはどの作品にも甘美なメロディが溢れ、舞踊的なリズムや民謡のモティーフも生かされていて、楽譜を開いているだけでロシアの情景が見えてきます。

「ピアノ協奏曲第1番」をワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管弦楽団と共演した時、冒頭ホルンの力強さに込められた豊潤な響き、大地のうねりや自然の驚異的な産物を感じました。

それを生かすように、私も重心を下げて良い音を響かせるよう弾きました。ピアノの聴かせどころは第1楽章の第2テーマでしょうか。私はたっぷり歌いますね。

大地のうねり、自然の驚異、その中でたっぷり歌うピアノ

また「ピアノ協奏曲第2番」はアンサンブル要素が多く、第2楽章ではソロのヴァイオリン、チェロとのトリオもあり魅力的です。チャイコフスキーはオーケストレーションが巧みで、金管楽器の扱いが上手く、とくにホルンはコンチェルトでも大事な場面で出てきます。

私は必ずスコア(総譜)を見て勉強しますが、どの楽器が何を弾いているのか、ピアノと対等な箇所はどこか等、全体の書法から分かることがあります。またスコアから謎が解けることも。

初版では冒頭の和音がアルペジオでしたが、メロディは第1ヴァイオリンのみ、つまり第2ヴァイオリンなしでもバランスの良いアンサンブルになっているのですね。

シンプルな旋律の中に涙を誘い、感動を呼ぶ力

ロシア音楽の歴史がまだ浅い時代に、あれほどの音楽を生み出したのは凄い才能です。バレエ音楽「くるみ割り人形」《金平糖の精と王子のパ・ド・ドゥ》のシンプルな下降音型でもこれほど感動するのかと。そこに和声や盛大なオーケストレーションが加わるわけです。

またベルリン・フィルで「交響曲第5番」第2楽章のホルンのソロを聴いた時、あまりに美しくて涙しました。辛い時に神のご加護を受けるような……。彼の音楽には、悲しみの中にも燃えるものがひそんでいるように感じます。

「ロシアの情景が見える音楽。重心を下げて音を響かせ、たっぷり歌います」

ベートーヴェンやブラームスは1つのモティーフを展開させていく手法、またショスタコーヴィチはソ連共産党政権下に生きたため、当時の政治状況なども理解する必要があります。その点チャイコフスキーは音楽そのものに身を委ね、心を解き放つことができますね。

指揮者、演奏者、演出家が語るチャイコフスキーの聴きどころ
(4)斎藤友佳理さん>>

撮影/本誌・大見謝星斗 取材・文/菅野恵理子 編集協力/三宅 暁 取材協力/Natalia Goryacheva ロシア国立チャイコフスキーの家博物館 撮影協力/王子ホール

『家庭画報』2021年1月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。

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