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伝統陶家それぞれの継承と新たなる挑戦「菊池コレクション 継ぐ」

2020.09.29

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〔今月の美術〕
『菊池コレクション 継ぐ―今泉今右衛門、酒井田柿右衛門、三輪休雪、樂吉左衞門』

菊池コレクション

手前に今泉今右衛門、奥に酒井田柿右衛門の色絵磁器が並び、代々の変遷が見られる。

ナビゲーター・文/山根基世


長い伝統を誇るやきものの家、4家に焦点を当てた展覧会。

「継ぐ」とはどういうことだろう。伝統の家に生まれた代々の人々。継ぐ宿命を背負うことの苛酷さも、それ故の生の輝きも感じさせてくれる展覧会だ。

今泉今右衛門と酒井田柿右衛門は、同じ有田を代表する17世紀から続く陶家である。

今泉家は鍋島藩の藩窯で、藩で用いるやきものを制作していた家柄で今14代。

酒井田家は、磁器に色絵を付けるのに、日本で初めて成功した家柄。鍋島藩の一窯元として活動し、輸出も盛んに行っていたが、いったん技術が途絶える。その後復興し、今15代。

この両家に共通なのは、多くの職人を抱え、制作、営業、販売までを行う工房制をとっていること。

彼らが「継ぐ」のは技術だけではない。職人を率いるリーダーシップや経営センスまで引き継がねばならない。

言うまでもなく、それ以上に重要なのが伝統の継承。展示作品から、代々、自分の発見・挑戦を加味して伝統を今に息づかせるため七転八倒している様子が窺える。

苛酷だが、だからこそ今右衛門13代の「吹墨」や「薄墨」、14代の「墨はじき」や「雪花墨はじき」といった高度な技術による美も生まれ、柿右衛門における色絵の生命力も保持されているのだと納得する。

天問

15代樂 吉左衞門の初期を代表する個展『天問』出品作の中から19点を展示した空間も。

美術番組で取材したときの印象でいえば、長州藩御用窯・萩焼の三輪龍氣生(みわりゅうきしょう・12代三輪休雪)や、桃山時代の初代・長次郎以来の伝統を継ぐ樂 直入(らく じきにゅう・15代樂 吉左衞門)らは、伝統の重圧をものともせず「表現者」として突出した存在だった。

伝統の型を護るために自分を抑える発想はなく、奔放な創意で自分を表現しているように見えた。

10年以上経った今見ると、作品の発する強烈なエネルギーは、伝統の枠組みの中でこそ生じたものだろうと気づかされる。

突出した個性が伝統をより強靱に、持続可能にしていくらしい。

山根基世(やまね もとよ)
フリーアナウンサー。NHK時代、13年間美術番組を担当。現在は、朗読会、講演、言葉教育など、地域づくりと組み合わせて、子どもの言葉を育てるための活動を続けている。

『菊池コレクション 継ぐ―今泉今右衛門、酒井田柿右衛門、三輪休雪、樂吉左衞門』

菊池コレクション

三輪龍氣生(12代三輪休雪)《祈り》2015年 菊池寛実記念 智美術館蔵

菊池コレクションを中心に、継承するやきものに焦点を当てる。今泉今右衛門(12・13・14代)、酒井田柿右衛門(13・14・15代)、2019年に樂 直入に改名した15代樂 吉左衞門、三輪龍氣生に改名した12代三輪休雪を紹介。

菊池寛実記念 智美術館
〜2020年11月29日まで
休館日:月曜、11月24日休館(11月23日は開館)
入館料:一般1100円
TEL:03(5733)5131
URL:www.musee-tomo.or.jp
表示価格はすべて税込みです。
取材・構成・文/白坂由里 撮影/川瀬一絵

『家庭画報』2020年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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