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エッセイスト・平松洋子さんがナビゲートする、心ときめく“愛”の映画『女は女である』

2020.08.07

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〔心ときめく“愛”の映画〕
『女は女である』

女は女である

©1961 STUDIOCANAL - Euro International Films, S.p.A.

奇跡的に愛らしいゴダールからの贈り物


ナビゲーター・文/平松洋子(エッセイスト)


永遠に色褪せない才気にやっぱり驚かされる。20世紀の映画を語るうえで最も重要な監督のひとり、ジャン=リュック・ゴダールからの贈り物は奇跡的に愛らしい。

1961年、映画の新しい潮流のなかで撮られた本作はゴダールにとってのカラー長編作品第一作、主役は彼のミューズだった女優アンナ・カリーナ。恋愛中のふたりのただならぬ多幸感がきらきらと舞い踊っている。

ゴダールはアメリカのミュージカル映画を好んだ。そのオマージュとして挑んだミュージカル・コメディなのだが、もちろんひと筋縄ではいかない。

アンナ・カリーナ演じるアンジェラはキャバレーのダンサー。同棲相手、書店勤めのエミール(ジャン=クロード・ブリアリ)に「赤ちゃんが欲しい、24時間以内に!」とだだをこねる。

こじれるふたりの関係に絡むのは、駐車場のメーター係アルフレード(ジャン=ポール・ベルモンド)。

他愛のない男女のすれ違いを描きながら、赤を基調にした鮮烈な色彩感覚、実験的なカメラワーク、ユーモア、反復とずらし......すべてがキレキレ。

パリの町を舞台に、コケティッシュな笑いを振りまいて映像世界に引きこむ。

才気煥発、オリジナルのシーンの数々。仲違いしたふたりが寝室のライトスタンドを持って移動しながら本のタイトルを見せ合い、「怪物」「失せろ」と喧嘩する場面は永久保存のみずみずしさ。

アンナ・カリーナのファッションも見どころで、赤いカーディガンの前後ろ使い、タイトスカート、カラータイツ、コートの着こなし、髪型、ガーリーな下着......時代を超えて、ひたすら可愛い。

ちらちら登場するヌーヴェルバーグの片鱗は、シネフィル的興味も満足させる。

ルイ・マル監督『地下鉄のザジ』の主役、カトリーヌ・ドモンジョはザジ役でそのまま出演しているし、バーの客として登場するジャンヌ・モローはトリュフォー監督『突然炎のごとく』の話をしたり、ベルモンドの科白(せりふ)には「早く家に帰ってテレビで『勝手にしやがれ』を観たいんだ」。

終幕の、エミールの心の声「喜劇か悲劇かわからないが、どっちにしろ傑作だ」。時代を切り拓くゴダールの得意げな顔が浮かぶ。

平松洋子

平松洋子(ひらまつ ようこ)
エッセイスト。講談社エッセイ賞を受賞した『野蛮な読書』や『洋子さんの本棚』など、近年は本についての作品を数多く発表。近著に『そばですよ(立ちそばの世界)』『忘れない味』などがある。

『女は女である』

『女は女である』

DVD 4800円 発売元:シネマクガフィン 販売元:紀伊國屋書店

恋人のエミールに、今すぐ子どもが欲しいとせがむキャバレーの踊り子アンジェラ。24時間以内にそうしてくれなければ、他の男に頼むと啖呵を切り......。アンナ・カリーナが無敵の美しさで観る者を魅了するラブコメディ。

監督/ジャン=リュック・ゴダール
出演/アンナ・カリ-ナ、ジャン=クロード・ブリアリ、ジャン=ポール・ベルモンド
表示価格はすべて税抜きです。
取材・構成・文/塚田恭子

『家庭画報』2020年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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