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運命的な直感に導かれ、パリでヴァイオリン職人に。佐藤 舞さん「古い楽器に再び命を」

美を紡ぐ人々 パリでその実力を認められた「美を紡ぐ」日本人アーティストや職人たちとの出会いを、フランス移住2年目のライター・ルロワ河島裕子が綴ります。連載記事一覧へ>>

美を紡ぐ人 佐藤 舞さん(ヴァイオリン職人)【前編】

取材・文/ルロワ河島裕子

パリに来て10年というヴァイオリン職人の佐藤 舞さん。

パリで職人として生きる道を選んだ女性

とあるWEBサイトの記事で、音楽が息づく街パリで、古い楽器に再び命を吹き込む職人として働く女性が紹介されていました。そのストーリーにすっかり引き込まれた私は、いつしかこの女性に会ってみたい、と思うように。

そしてこの連載が始まったことを契機に、彼女に取材を申し込んだのでした。それが、今回ご紹介するヴァイオリン職人の佐藤 舞さんです。

突然の取材依頼も快く受けてくださった佐藤さんは、心の清らかさがにじみ出る物腰穏やかな女性。

そんな彼女が、なぜ一人パリで職人としての道を歩むことになったのか、今週は、その物語を紐解きます。

楽器との出会いは、お遊戯会のピアノアンサンブルに憧れて

佐藤さんが楽器と音楽に興味を持ったのは、幼稚園のお遊戯会でのこと。ピアノのアンサンブルグループのメンバーに、ピアノを習っていた子たちだけが選ばれたことに、“習っている子しかスポットライトを浴びることが許されない”ことに悔しさと羨ましさを覚え、「私もピアノを習いたい!」と両親にお願いしたのだとか。

「今では人前で演奏なんて考えられないですけど、子供の時は意外と積極的だったんだな、と振り返ってみると思います(笑)」

その後もピアノを続けていた佐藤さんですが、中学生の時に近所のヤマハ音楽教室に見学に行くことに。

「その時に教室を案内してくださった方が、ものすごいヴァイオリン推しで……。その押しの強さに圧倒されて、母も私も流されて、ヴァイオリンを習うことになりました(笑)」

ヴァイオリンに携わっていたいという思いから

中学から高校時代まで続けたヴァイオリン。

「演奏するのは好きだったけれど、決して真面目な生徒ではなかったです。好きな曲なら頑張れるけれど、好きじゃない曲は全く練習しない、という感じでした」と佐藤さん。

ある時、ヴァイオリンのメンテナンスのために定期的に教室に訪れていた、職人の弓の毛替えの作業を目にする機会がありました。

「こんな仕事もあるんだと、心を動かされました。ちょうど進路を考えていた時で、音大に行くにはもう準備が間に合わないし、そもそも人前で演奏するのは好きではない。でもヴァイオリンは好き。それならば職人として製作・修復する側として携わることもできるのでは、そう思ったんです」。

深い考えもなく衝動的だったと語る彼女ですが、それがその後の人生を決定づける運命的な直感であったと、今になってようやく思えるようになったといいます。

工房のショーウィンドウには、音楽にまつわるオブジェが。

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