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縄文時代から近代まで。日本の陶磁史から見えてくる美の変遷

2020.01.17

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〔今月の美術〕『やきもの入門 色彩・文様・造形をたのしむ』

日本の陶磁史から見えてくる美の変遷
柿右衛門《色絵花鳥文八角共蓋壺》とその奥《色絵鳳凰文共蓋壺》の比較展示。どちらも重要文化財で、同じ江戸時代前期の作品。
ナビゲーター・文/山根基世

縄文時代から近代まで、日本の「やきもの」の歴史をザッと見渡し、早わかりできる親しみやすい展覧会だ。


長い歴史を「色彩」「文様」「造形」のキーワードで整理した、易しくて深い「岩波ブックレット」風のテイスト。

まず私が惹かれたのは、「縄文土器から埴輪まで」と分類された展示室の埴輪の犬。古墳時代というから縄文・弥生の後の頃と思われる。

土の色は温かく、造形は簡潔。実にシンプルだが、どう見ても犬。今にもこちらにすり寄ってきそうな人なつこそうな犬だ。

日本ではすでに縄文時代から写実的な形の土器をつくることがあったという。つまり技術がなくての単純化ではないのだ。あえて犬の本質を形にしようとしたのではないか。

私は、西洋バレエの『ジゼル』を「能」にした演目を思い出した。複雑に絡み合う男女の恋の物語が、実にシンプルな「愛」に抽象化されているように感じた。この犬を観ると、抽象化能力は日本人のDNAに埋めこまれたものなのだと思わずにいられない。

圧巻は、同じ江戸時代前期につくられた2つの重要文化財の壺の比較。

1つは私が眺めている、九州・有田の柿右衛門による色絵壺。白く輝く白磁の地に繊細な線で鮮やかな色絵が施されている。この頃、ヨーロッパの王侯貴族から注文されてこうした作品がつくられていたらしい。

もう1つは、京都の野々村仁清の色絵壺。

野々村仁清の色絵壺

重要文化財 野々村仁清《色絵鳳凰文共蓋壺》 江戸時代前期 出光美術館蔵

意外なことにこの当時、京焼にはまだ磁器をつくる技術はなく、この作品も、地は陶器に白化粧したもの。

白磁ほど筆の滑りが良くないので、色絵の線はやや太めだが、さすが京の都、金銀をふんだんに使った華やかな絵は、狩野派の絵画を彷彿させる格調の高さ。こちらは日本の大名からの注文に応じたものだそう。

2つの壺から、当時の、地域による文化の違いまでうかがえる。

やきものに入門したい初心者から、通を任じる達人まで満足させる奥の深い展覧会だ。

山根基世
やまね もとよ/フリーアナウンサー。NHK時代、13年間美術番組を担当。現在は、朗読会、講演、言葉教育など、地域づくりと組み合わせて、子どもの言葉を育てるための活動を続けている。

『やきもの入門 色彩・文様・造形をたのしむ』

『やきもの入門 色彩・文様・造形をたのしむ』

《埴輪 犬》古墳時代後期

日本のやきものづくりの歴史を縄文時代の初め1万6000年前から通覧。やがて朝鮮や中国から作陶技術が伝来、茶道や華道などを通じて日本独自の様式美が花開き、個人作家が現れる近代まで約110点の作品で辿る。会期中、展示替えあり。

出光美術館
〜2020年2月2日まで
休館日:月曜
入館料:一般1000円
ハローダイヤル:03(5777)8600
展覧会の詳細はこちら>>
表示価格はすべて税込みです。
取材・構成・文/白坂由里 撮影/川瀬一絵

『家庭画報』2020年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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