アート・カルチャー・ホビー

近代絵画と現代アートの予期せぬ出会い『シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート』

〔今月の美術〕

『シンコペーション :世紀の巨匠たちと現代アート』

セレスト・ブルシエ=ムジュノ《クリナメン v.7》2019年 © Céleste Boursier-Mougenot

ナビゲーター・文 林 綾野
はやし あやの/キュレーター。美術との新しい出会いを提案するため、画家の人生や食の工夫を研究している。ゴッホやフェルメールなどを紹介した『絵本でよむ画家のおはなし』シリーズほか著書多数。

「シンコペーション」とは、音楽においてアップビートとダウンビートを意図的にずらすことで楽曲に独特の表情や緊張感を作り出す手法。

この展覧会ではポーラ美術館が収蔵するエドゥアール・マネやポール・セザンヌ、パブロ・ピカソなどの近代美術の巨匠たちの作品と、ヴォルフガング・ティルマンスやアブデルカデル・バンシャンマなど国内外から集めた現代美術の作品とを関連づけて展示する。

2つの要素がいつにない形で組み合わされることでどんな和音が生まれるのだろうか。

展示室に足を踏み入れると、まずはクロード・モネの《睡蓮》が迎えてくれる。

ここまではいつものポーラ美術館だけれども、どこからかコーン……カキーン……と、聞きなれない音がする。

音に誘われるように進んでいくと、丸いプールに大小様々なサイズの白い器がぷかぷかと浮かんでいる。セレスト・ブルシエ=ムジュノの《クリナメンv.7》だ。

モーターにより水は揺らぎ、白い器は動きまわり、触れ合うと澄んだ音を奏でる。

モネは愛する水辺の風景を生涯描き、ブルシエ=ムジュノは音と視覚の共鳴を追求し続けている。

100年以上の時を経た2つの作品、二人のアーティストに共通するものを見つけると、誰かの心を理解できたような幸せな気持ちになるのはなぜだろう。

非現実的な風景を描いた画家ルネ・マグリットと、不可思議な実景を撮影する石塚元太良(げんたろう)。

ピエール・ボナールらが描いた日常の光景と女性たちの日々の営みを捉えた横溝 静(しずか)の映像作品。

モチーフ、テーマ、素材などを共通点として様々な作品がコラボレーションする。コンセプト、そして視覚としての不思議さが重なり、共鳴する展示もある。

サルバドール・ダリの絵とともにあるのはアリシア・クワデの《まなざしの間で》。

鏡とガラス、見えたり見えなかったりするランプの光。クワデの作品を覗き込むとダリの絵の中に迷い込んだような不思議な感覚に陥る。

次の組み合わせはなんだろう?謎解きするような気構えで作品と向き合うと楽しい。現代美術が苦手でもきっと楽しめるはずだ。

作品や共通のテーマと丁寧にじっくり対峙することで、感じるだけでなく理解する喜びも味わえる。新たなアートの楽しみ方と出会える展覧会ではないだろうか。

『シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート』

『シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート』

アリシア・クワデ《まなざしの間で》。奥の絵画はサルバドール・ダリ《姿の見えない眠る人、馬、獅子》。 Courtesy of the artist, KöNIG GALERIE, Berlin /London and 303 Gallery, New York

ブルシエ=ムジュノ×モネ、クワデ×ダリ、石塚元太良×マグリットなど、現代アート12組の作品を、ポーラ美術館収蔵の近代絵画とともに展示し、その響き合いを味わう展覧会。美術館周辺の「森の遊歩道」では音の作品も楽しめる。

ポーラ美術館
〜2019年12月1日まで
休館日:無休
入館料:一般1800円
TEL:0460(84)2111
URL:https://www.polamuseum.or.jp/

表示価格はすべて税込みです。

取材・構成・文/白坂由里 撮影/永野雅子

『家庭画報』2019年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。

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