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人類最年長の男が見た、日本の変遷とその軌跡 島田雅彦さん『人類最年長』

今月の本

島田雅彦さん

島田雅彦(しまだ まさひこ)
1961年、東京都出身。1983年『優しいサヨクのための嬉遊曲』でデビュー。近刊に毎日出版文化賞を受賞した『虚人の星』、『カタストロフ・マニア』『絶望キャラメル』など著書多数。

万延2(1861)年、横浜で生まれた宮川麟太郎。その成長の遅さゆえ、実年齢の半分ほどの年にしか見えない彼は、従軍記者として滞在した中国で九死に一生を得たのち、彼かの地の長老によって精霊を宿され、不死の身となり……。

幕末から平成の先へ、159歳の男の人生を通じて日本の軌跡を描いた、島田雅彦さんのクロニクル小説『人類最年長』。

「平均寿命が延びたといっても、今の長寿は青春期ではなく晩年が長いわけで。永遠に生きることのゾッとするような退屈、自分だけが生き残り、他の人は身み罷まかる、その恐ろしいほどの孤独や憂鬱を書くことによって経験しておけば、老いに対する不安が薄れるのではないかな、と(笑)。

不老不死は人類の見果てぬ夢で、昨今、物理的にはその実現へと近づきつつあるものの、メンタル面が見過ごされていることも、気になっていました」と話す島田さん。

文明開化とともに日本に入った新聞や自由民権運動、日露戦争、関東大震災、そして敗戦から戦後復興へ。それぞれの時代を生き抜いてきた主人公の回想は日本の近現代の軌跡をつぶさに伝えるが、

「年代記を書く際、その時代を体験として語れる人がいないと、事実をぶっきらぼうに羅列する歴史記述になってしまいますが、体験者の話には喜怒哀楽が加味されるので、リアリティが出てきます。

近現代を自伝というかたちで語ることは、チャレンジしがいがあることでした」と、島田さんはいう。

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