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金剛流の若宗家・金剛龍謹さんが語る、“今この公演にかける気持ち”

2022.07.29

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能の世界へ導く「金剛流の魅力」 第2回(全3回) 京都に拠点を置く金剛流の若宗家である金剛龍謹(こんごう・たつのり)さんを家庭画報本誌が初めて取材させていただいたのは2005年のこと。まだ17歳だった少年は、今では2人の息子を育てる父親である。2度目の取材は能の会「龍門之会」を発足した24歳のときで大曲『望月』を披いた節目の年だった。当時も能への熱い想いを語っている。それから10年が経ち、現在は能楽師が基盤を築くうえで大切な時期。その日常に密着させていただき、“能のために生きる姿”をお届けする。前回の記事はこちら>>
金剛さん

仕舞の稽古をする龍謹さん。金剛流は“舞金剛”といわれ、豪快で優美な舞に特徴があるとされている。

金剛龍謹(こんごう・たつのり)
1988年京都府出身。同志社大学文学部国文学科卒業。父は金剛流26世宗家の金剛永謹。幼少より父と祖父の2世金剛 巌に師事。5歳のときに仕舞『猩々』で初舞台。京都市立芸術大学非常勤講師。京都市芸術新人賞受賞。

究める


「能楽師以外の選択肢は考えられなかった」という龍謹さん。自らが選んだ能楽師の道で生涯をかけて能という伝統芸能を追究していく。師であり、偉大な存在でもある父・金剛永謹(ひさのり)さんの背中を見て歩んできた龍謹さんは今、何を感じ、何に挑もうとしているのだろうか。

能面を選ぶ

舞台で用いる能面を選ぶ。

「私の主宰する『龍門之会』はこれまでに9回開催し、その時点で自分にはまだ手が届かない演目に挑戦させていただいております。10回目は記念として長男の謹一朗が初シテとして半能『岩船』を舞うことになりました。息子を能役者として、人間として一人前に育てることが、これからの私にとって最も大切なことになると思っています。

私自身も流儀で一子相伝として扱っている『神道』という小書(特殊演出)付きの『三輪』という曲を勤めさせていただきます。

『三輪』は、『古事記』などに見える三輪明神の婚姻説話を題材とした定番の演目ですが、『神道』という小書が加わった途端、別曲かと思うほど趣が変わります。例えば履物一つとっても、足袋の原型となったとされる襪(しとうず)という親指の分かれていない履物をこの小書のみに用います。私の生まれ年である1988年に父が演じて以来上演がなく、私が今回演じさせていただくことできちんと技芸の習得をしなければ伝承が途絶えてしまいます。だからこそ、今この公演にかける気持ちが強いですね」

能面

新作能の『沖宮』や『経正』で用いた「十六」という能面。平 敦盛が16歳で討ち死にしたことに由来する。高祖父の金剛謹之輔が入手し、金剛流に受け継がれている。金剛流は所蔵する能面、能装束に名品が多いことでも知られており、“面金剛”ともいわれている。

成長に導かれる機会を逃さない龍謹さん。彼の糧となっていることはほかにもある。

「2018年より継続して取り組んでいる『沖宮』をはじめ、さまざまな新作能、復曲能の制作にかかわらせていただいたことは得難い経験でした。役者自身のこれまでの経験をもとに能を創らせていただく作業を通して、新しく能を創り上げることは現行の古典の演目とも向き合うことだと実感しました。

曲作りをした経験によって古典の曲に込められている詞章の意味や型の意味について考えることが多くなり、大変気づきの多い仕事をさせてもらったと思っています。また、大学の講義や講演、執筆などで能についてお話しする機会が増えたことで能のことをもっと深く勉強しなければいけないと痛感しました。少しずつでも成長できるよう、日々勉強を重ねていきたいと思います」

経正

神田明神の薪能で龍謹さんが演じた『経正』。討ち死にした経正を行慶僧都が弔うと、そのありがたさに経正の霊が現れる。貴公子の優雅さが漂う洗練された小品。

最後に金剛流を受け継ぐうえで大切にしたいと思っていることについても伺った。

「父は能の基本中の基本であったり、演目や役柄ごとの大きな枠組みを大切にする教え方でした。能の世界では“流儀の宗家は太夫芸であるべき”という話をよく耳にしますが、父の舞台はまさにこの太夫芸というものを体現していると思います。現在71歳。私がいうのは大変おこがましいのですが、ここ5年ほどの間で父の能が劇的に変わったように思います。素晴らしい舞台をたくさん観せてもらっており、年齢による肉体の衰えとは関係なく、能は磨かれ続けるということを肌で感じさせてもらえてありがたいです。私もいつか息子たちが目標とする役者になれるよう精進していきます」

(次回へ続く)

公演情報
「第十回記念 龍門之会」
2022年7月31日 14時開演
会場:金剛能楽堂
演目:能『三輪 神道』ほか

「金剛定期能」
2022年9月25日 13時30分開演
会場:金剛能楽堂
演目:能『山姥 白頭』ほか

「アートキャラバン長崎 ~島原に息づく能~」
2023年1月22日 14時開演
会場:島原文化会館 大ホール
演目:能『沖宮』
金剛能楽堂:075(441)7222

※その他の公演スケジュールは金剛龍謹公式ウェブサイトでご確認ください。
公式サイト:http://www.kongou-net.com/ryumonnokai/

〔特集〕能の世界へ導く「金剛流の魅力」(全3回)

撮影/本誌・坂本正行 構成・文/山下シオン 企画協力/金剛能楽堂、アトリエシムラ、岩崎アキ子

『家庭画報』2022年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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