アート・カルチャー・ホビー

佐渡裕と反田恭平が語る、技術だけでは語れない音楽の不思議と面白さ

音楽の贈り物 最終回(全3回) 2023年4月、東京・墨田区のすみだトリフォニーホールを拠点とする新日本フィルハーモニー交響楽団の音楽監督に就任する指揮者の佐渡 裕さん。そしてショパン国際ピアノコンクール第2位入賞で日本中を沸かせ、自らのオーケストラも率いるピアニストの反田恭平さん。今注目のお二人に、新たなステップへの意気込みと音楽が開く未来の可能性について語っていただきました。前回の記事はこちら>>

技術だけでは語れない音楽の不思議と面白さ

佐渡さんと反田さん

右/佐渡 裕(さど・ゆたか)
1961年、京都市生まれ。レナード・バーンスタイン、小澤征爾に師事。1989年ブザンソン国際指揮者コンクール優勝。以後、世界各地のオーケストラに客演。現在はトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督としてウィーンを拠点に活動。国内では兵庫県立芸術文化センター音楽監督、シエナ・ウインド・オーケストラ首席指揮者。2023年4月に新日本フィルの音楽監督に就任する。

左/反田恭平(そりた・きょうへい)
1994年、札幌市生まれ。高校在学中、日本音楽コンクールに史上最年少で優勝。モスクワ音楽院を経て、現在ショパン国立音楽大学研究科に在籍。同世代の音楽家を集めたジャパン・ナショナル・オーケストラを創設し、自らが社長を務め、奈良を拠点に活動。2021年ショパン国際ピアノコンクールで第2位入賞。最もチケットの取れないピアニストとしても知られる。

演奏回数を重ねるごとに面白くなる。音楽が進化する

反田 実はコンクールでいい結果が出なかったら、ピアノをちょっとやめて、オーケストラの演奏企画に専念してみようと思ってたんです。でも運よくこういう結果になったので、もう少しピアノを演奏したいと思っています。室内楽とかコンチェルトをもっとやってみたいと。デビューしてまだ6年で既に160回以上コンチェルトを弾かせていただいて、やっぱり僕はコンチェルト好きなんです。

佐渡 反田君のコンチェルトはもう最高ですよ。技術も音楽性も確かだし、オーケストラとあんなふうに対話ができるピアニストってなかなかいない。こちらが何かを仕掛ける、仕掛けられるという即興的なことも起こるから本当に面白いし、緊張感はお客さんにも伝わると思う。

反田 その場で一緒に一つの音楽を作り上げるということを、その日のその場でしか感じられない直感というか空気というか、そういうものを楽しみたいと思っています。そこには緻密に計算されてきたものがベースにあるからこそできるお互いの信頼感もあります。佐渡さんと僕はその感覚が同じなのかなと思います。

佐渡 そのとおりです(笑)。僕と反田君とのツアーはいつも十何公演あるけれど、普通そんなにやったら飽きそうな気がする。でも最後の演奏会がいつもいちばん面白いものね。1回目より2回目、回を重ねるごとに進化して楽しくなる。

反田 やっぱり佐渡さんとは同じフィールドの人間なのかな。音符を追うだけではなく、引き出しがたくさんある、人間力のある音楽が好きです。佐渡さんはその代表じゃないですか。趣味も多いし、遊び心もあるし、やっぱり音楽にはそういうのはとても大事だと思うんです。

佐渡 たしかに音楽にはいつも真剣に深く向き合ってはいきたいけれど、それだけというのは嫌ですね。家族と過ごす時間も大事だし、趣味や好きなことに夢中になっている自分というのも必要。もちろん音楽にも夢中になる(笑)。

反田 僕は結構、音に感情移入するタイプでもあるんですよ。「佐渡さんともうこんなにコンサートやったんだなあ」とか思ったりすると、ツアーの最終日は朝起きたときからわかるんですよね。「あ、今日はいい演奏できそうだ」って。佐渡さんとのツアーでラフマニノフのピアノ協奏曲2番をやったときは、僕にとってはツアーそのものが初めてだったし、千秋楽の前日は興奮しすぎて7分しか寝られなかった(笑)。でもその日がいちばん感動的だったんです。ツアーの思い出が音に込められたんじゃないかなと思いますね。昨日より今日、今日より明日のほうが長く生きているわけですし、感情の引き出しが増えていくのは当たり前と思われるかもしれないけれど、やっぱり一日一日を大事にして生きないとと思います。

佐渡 心の持ち方は間違いなく音に出るよね。でも、それがわかっているなら最初からそうできるかというと、そこが音楽の不思議なところでね。間違いなく毎回いい音楽を作りたいと思っているし、特別な演奏にしたいと願っているけれど、以前よりもつまらなくなることも実際にはある。反田君との共演のように回数を重ねるごとに面白くなる演奏は貴重だけれど、偶然に起きるのを待っているわけではなく、ゾーンに入るための鍛錬はお互いにあるのかもしれないね。

Ranking今週の人気記事 ベスト5

家庭画報 最新号

家庭画報7月号

7月号 6月1日発売

アウトドアで大人遊び

一部地域は輸送の関係で発売が遅れる可能性があります。

© SEKAI BUNKA PUBLISHING INC. All rights reserved.

Loading