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【ワルツ対談】指揮者 高関健さん×音楽評論家 舩木篤也さん。3拍子の魅力に迫る!

パンデミックの時代が求める音楽 ワルツの熱情 第10回(全12回) 明と暗が表裏一体となったワルツの底知れない魅力を訪ねます。前回の記事はこちら>>

【対談】指揮者 高関 健×音楽評論家 舩木篤也

日本でも大人気のワルツ。音楽を再現する指揮者と音楽を紐解く評論家の立場から、ウィーン特有の演奏習慣や、交響曲中の“踊らない”ワルツ、そして3拍子の魅力に迫ります。

[対談]高関 健×舩木篤也

ワルツを踊っているかのように、テンポよく、深い話をされるお二人。

踊るワルツもあれば、踊らないワルツもある「3拍子の誘惑」

舩木 高関さんは学生時代にウィンナー・ワルツ特有の3拍子のコツをつかむため、テープレコーダーをゆっくり回して拍節感の研究をしたそうですね。

[対談]高関 健×舩木篤也

舩木篤也(ふなき・あつや)
音楽評論家、東京藝大ドイツ語講師。読売新聞で演奏評、NHKFMで音楽番組の解説担当。共著に『魅惑のオペラ・ニーベルングの指環』、共訳に『アドルノ 音楽・メディア論集』。

高関 そうなんです。1975年にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と指揮者カール・ベームの来日時、「美しく青きドナウ」を聴いたのがきっかけです。3拍子の円運動なので2・3拍目の間が少し浮く感じになりますが、その2拍目がどれだけ早く入るかという彼らの特徴を研究したくなりましてね。4倍の速度で録音し、元のスピードで聞いてみました。すると、16分音符1個分くらい早いんですよ。

[対談]高関 健×舩木篤也

高関 健(たかせき・けん)
国内主要楽団で重責を歴任し、現在東京シティ・フィル常任指揮者、仙台フィルレジデント・コンダクター、東京藝大指揮科教授ほか。サンクトペテルブルグ・フィルなど海外への客演も多い。

舩木 そこまで探求されたとは!これは、ウィンナー・ワルツの「方言をどれだけ再現できるか」ともいえそうです。2拍目の特徴はワルツを踊るステップからきていますね。

「ブンタッタと2拍目が早いのは、ウィンナー・ワルツ特有の“なまり”ともいえますね」(舩木さん)

高関 ええ、スイングが大事ですね。ダンスの遠心力を表現するために体をぽんと上げるような指揮になりますが、2拍目が早く入ると3拍目までの間が伸びるぶん浮き上がった感じが出ます。特にそれが欲しいときは、1拍目をうんと深く踏み込む。フレーズの冒頭に向けてわっと振ると、エネルギーが増して波ができ、あとは余力で進みます。

「2拍目が早く入ると浮き上がる感じが出ます。このリズムでワルツのスイングを表現したいんです」(高関さん)

舩木 ワルツをちょっと踊ったことがありますが激しいですよね。ワルツの語源は“walzen”(回転する)、さらに遡ると“wallen”(ふつふつと湧き上がる)という動詞から生まれているのも納得です。ワルツの歴史をたどると、踊りはしだいに速く、激しくなっていますね。

高関 シュトラウス父(1世)の頃はヨーゼフ・ランナーのレントラー(ワルツの前身)がはやっていましたが、テンポは相当ゆっくり。それが息子(2世)になるとかなり速くなる。

舩木 様式も変化していますね。ミヒャエル・パーマーがワルツの前後に序奏とコーダ(終結部)を置き、弟子のシュトラウス1世がその間に5種類のワルツを挟んで様式化。2世になるとシンフォニックで序奏も凝り、弟ヨーゼフは楽器の音色の重ね方もさらに重厚に。

高関 オケのサイズも拡張しています。父は2管編成(木管が8人)でしたが、息子ヨーゼフは最大で3管編成(木管が12~16人)、ほぼ倍になっています。

舩木 もはや踊るワルツではなく、鑑賞する曲ですよね。

「踊らないワルツもある。交響曲の中のワルツはテンポも性格も様々です」(高関さん)

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