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世界的画家の人生を辿る、新たなパリのガイドブック『藤田嗣治 パリを歩く』

2021.12.06

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〔今月の本/新たなパリガイド〕
『藤田嗣治 パリを歩く』清水敏男 著

清水敏男

撮影/ハービー・山口

清水敏男(しみず・としお)
1953年東京都生まれ。美術評論家、学習院女子大学教授。ルーヴル美術館大学卒。東京都庭園美術館キュレーター、水戸芸術館現代美術センター芸術監督を歴任。2016年フランス芸術文化勲章シュヴァリエ受勲。

藤田嗣治が暮らした100年前のパリを旅する


画家・藤田嗣治研究の第一人者による、少々マニアックなパリガイド。

著者の清水敏男さんはパリ留学時代に在フランス日本国大使館から「フランスの出版社が藤田の本を執筆できる人を探している」との連絡を受け、本格的に研究を始めたという。

「1980年頃のことですが、当時藤田に関する学術的な研究がほとんど行われておらず、藤田ほどの画家が、と驚きました。それまでに出版された本や掲載された雑誌の記事にはデータなどの誤りも多かったのです」

このときの研究は、清水さんがパリ留学後に勤務した東京都庭園美術館で1988年に開かれた展覧会「東京・パリ友好都市提携記念 レオナール・フジタ」の図録に結実。多くの研究者が後に続いた。

藤田は1913年にパリに渡り、画家として瞬く間に人気を集めた後、1933年に南北アメリカ経由で帰国。そして第二次世界大戦後の1950年に再度パリに渡り、フランス国籍を取得。晩年まで暮らした。

清水さんの藤田研究は、パリ留学時から足掛け40年。折に触れて藤田の足跡を追いかけてきたが、8年ほど前から意識的に、藤田が暮らしたパリを中心に、独自の絵画スタイルに目覚めたアヴィニヨン、晩年を過ごしたヴィリエ=ル=バークルの自宅などを訪ねてきた。

「このことを綴ったエッセイをどのようにまとめようかと迷った末、ガイドブック仕立てにしようと思いつきました。藤田の画業の流れに即しながら、ゆかりの場所を紹介しています」

本書は、藤田が初めてパリに渡って宿泊したホテルがあるモンパルナスから、藤田がデザインし、フレスコ画を描いた教会「シャペル・フジタ」と墓所のあるランスで締めくくられている。

藤田が暮らした当時の100年前のパリの地図と現在の地図、絵画の図版、写真もふんだんに使われている。

読者は頭の中で、藤田が歩いた約100年前の足跡の上に40年前パリで青春を送った清水さんの思い出が重ねられた、複層的な時間を歩くパリ散歩に出かけることができる。

時折、最新の藤田研究のレクチャーも加わる。パリを訪れたことのある読者は、そこに自分の思い出も重ねることができるだろう。

「現在は自由に海外に行くことが難しく、私も藤田の研究を深めるために予定していたパリ行きを延期することになりました。この本をお読みになり、少しでもパリを旅した気分を味わっていただきたいと思います。冒頭に書いた“カフェ・オデッサ”はとても気持ちのいいカフェで、おすすめですよ」

晴れてパリを旅することができるようになったら、この本を携えて、藤田が生きたパリを味わいに行きたい。

『藤田嗣治 パリを歩く』

カバー写真/ベレニス・アボット「藤田嗣治の肖像」1927年頃 デザイン/高野美緒子〈Mio&Co.〉

『藤田嗣治 パリを歩く』清水敏男 著/東京書籍

葛飾北斎の後、世界的に評価された最初の画家である藤田嗣治が書いた手紙や描いた絵などから読み解いた、藤田の足跡を辿るガイドブック。ピカソをはじめとする画家との交流やパリの100年前と現在の違いなど、読み応えたっぷりの一冊。図版多数。

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構成・文/安藤菜穂子 撮影/本誌・中島里小梨(本)

『家庭画報』2021年12月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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