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記憶を継承し、風景を創生する。現代アート美術館「弘前れんが倉庫美術館」

癒やしの絶景美術館 第6回(全12回) 非日常感を味わいながら、心を癒やし、明日への活力をチャージする場所として美術館を楽しんでいるかたも多いことでしょう。展示作品はもちろんのこと、そのロケーションや建物も一体となってアートを堪能でき、心癒やされる美術館を全国各地で探しました。前回の記事はこちら>>

※各美術館の開館時間、休館日、展示期間、展示内容等は変更になる場合がございます。最新の情報は、各公式ホームページ等でご確認ください。

[青森・弘前]弘前れんが倉庫美術館

100年以上の記憶を宿した倉庫をアートとともに未来へ継承

[青森・弘前]弘前れんが倉庫美術館

吉野町緑地の芝生に囲まれて建つ「弘前れんが倉庫美術館」。右が美術館、左はカフェ・ショップ。建築家・田根 剛氏が築100年あまりの煉瓦倉庫を再生。

建築もアートな美術館へ

美術館のシンボルとなる建物そのものが、アートとして一見の価値あり、と注目されるスポットが増えています。地元で時を刻んできた建物が匠の手で再生されたり、新たにできた建築が地域に活気をもたらすきっかけとなったり……。全国各地、個性豊かな建築が話題の美術館へご案内します。

記憶を継承し、風景を創生する現代アート美術館

[青森・弘前]弘前れんが倉庫美術館

奈良美智氏から弘前市に寄贈された「A to Z Memorial Dog」(2007年)は美術館の顔。楕円形の台座は倉庫の屋根裏に使われていた古材を使用。弘前れんが倉庫美術館蔵。©Yoshitomo Nara

JR弘前駅と弘前公園の中間にあたる吉野町緑地の芝生に映える、煉瓦色の建物。「弘前れんが倉庫美術館」は、1年2~3回の企画展を行う現代アートの美術館として2020年にオープンしました。

展覧会の主軸となる作品は、国内外のアーティストが手がけるコミッションワーク(展示空間を想定して創作するアート)で、それらは市民の宝として蓄積されていきます。

[青森・弘前]弘前れんが倉庫美術館

ケリス・ウィン・エヴァンス「Drawing in Light(and Time)…suspended」(2020年)吹き抜けの展示室に合わせて着想された高さ7メートルに及ぶ大作。弘前れんが倉庫美術館蔵。

津軽藩の城下町・弘前は、地元好きを公言する人の多さでは青森県内随一の街。明治時代に「学都」を目指して多くの外国人教師を招いたことから建てられた当時の洋館が街並みに溶け込んでいます。

100年以上前、りんご園だった場所に建てられた煉瓦倉庫もまた、長らく地元の人々に親しまれてきました。1907年から日本酒造工場として稼働し、1950年からはシードル工場に。当時は東洋で唯一の果実発泡酒として全国で販売されたといいます。その後は倉庫となりました。

[青森・弘前]弘前れんが倉庫美術館
美術館隣棟には「カフェ&レストラン ブリック」が。右・青森県産骨付き鶏もも肉のコンフィ1430円。後ろに見えているのは雨宮庸介「星屋根糸りんごあなた」という作品(2021年8月29日で展示終了)。左・レストラン内のタンクで醸造されたシードル3種の飲み比べセット3025円。

転機が訪れたのは2002年。現代美術作家の奈良美智氏と、当時のオーナーの吉井酒造社長吉井千代子氏との出会いを機に、多くの市民ボランティアが参加する展覧会を5年間で3回にわたり開催。大きな注目を集め、煉瓦倉庫とアートが強く結びついたのです。

2015年、弘前市が倉庫と土地を取得し、文化施設を開設することを決定。設計は、その土地の記憶を掘り起こして建築に定着させる名手、田根 剛氏です。

厚く塗られた漆喰の奥に眠っていた煉瓦を呼び覚まして新たな工法「弘前積み」を開発し、老朽化した屋根はシードル・ゴールドのチタンで菱葺きに。

[青森・弘前]弘前れんが倉庫美術館
設計を担当した田根氏がこの美術館のために考案・命名した「弘前積み煉瓦工法」によるエントランス。互い違いに積み上げられた煉瓦が美しい陰影を放っている。既存の建物を修復・保存するだけでなく、煉瓦の新たな使用法を発掘する「延築」が試みられている。

残せるものは可能な限り残す「延築」という工法を掲げ、記憶を宿した建物を未来に繋げています。

下のフォトギャラリーから詳しくご覧ください。

Information

弘前れんが倉庫美術館

青森県弘前市吉野町2-1

入園料 一般1300円。展覧会により異なる。
TEL 0172(32)8950
営業時間 9時~17時
定休日 火曜(祝日の場合は翌日振替)、年末年始
  • ●9月18日から2021年度秋冬プログラム「りんご前線ーHirosaki Encounters」を開催(2022年1月30日まで)。

各美術館の開館時間、休館日、展示期間、展示内容等は変更になる場合がございます。最新の情報は、各公式ホームページ等でご確認ください。

撮影/本誌・坂本正行 構成・取材・文/安藤菜穂子

『家庭画報』2021年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。

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