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自然への温かなまなざし、暮らしに溶け込むガレの花器

生活の中で慈しむ、アール・ヌーヴォーのガラス器 ガレとドームが誘う芸術のある暮らし 第1回(全2回) アール・ヌーヴォーを代表する工芸家エミール・ガレとドーム兄弟。フランス・ナンシーで活躍し、ジャポニスムの影響も受けた彼らが作る、草花や生き物への温かなまなざしを感じさせるガラスはわたしたち日本人にとっても特別に親しみ深いものです。今回は希少なガレ初期の作品をはじめ、暮らしの空間に寄り添うガレとドームのガラス器をご紹介します。

自然への温かなまなざし、暮らしに溶け込むガレの花器

19世紀後半から20世紀初頭にヨーロッパで広がった、最先端の芸術潮流「アール・ヌーヴォー」を代表する工芸家エミール・ガレ。多様な技術と自由な発想によって他に類を見ないガラス工芸を生み出し、絢爛たる芸術作品へと昇華させました。

暮らしに溶け込むガレの花器

蜻蛉文花器
ガレ

1890年頃 径29.6×高さ21.8センチ 蓮の花の間を浮遊する蜻蛉の姿を描いた花器。アンバー色の器の口縁を波状に仕上げ、金彩で絵柄の輪郭を描き、エナメル彩で絵付けした作品は、金銀器にも勝る豪華さがある。蜻蛉はガレが最も好んだモチーフの一つ。

園芸や植物採取に情熱を注ぎ、草花を偏愛する植物学者の一面を持っていたガレは、自然をテーマに植物や昆虫の描写や四季の情景を取り入れた、生き生きとした作品を数多く残しています。

暮らしに溶け込むガレの花器

山水風景文花器
ガレ 

1904〜1914年 幅8.8×奥行き7.2×高さ12.8センチ 透明地に黄色と青、紫のガラスを被せ、エッチングで山水風景を浮き彫りにした作品。移りゆく山の様子を一枚の風景画のように表現している。マンサクの紅葉で色彩の美しさが引き立つ。

暮らしに溶け込むガレの花器

草花文花器
ガレ

1918〜1931年 径5.6×高さ15.8センチ 上部に花木のような植物を陽刻で描いた花器。障子越しの柔らかな光に包まれた和の空間によく合い、楚々としたルイオウボタンをいけることで、ガレ独特の詩情や魅力が際立つ。

四季の詩情溢れる花器にみるガレの「日本の心」

暮らしに溶け込むガレの花器

また、創作に深い影響を与えたのが1867年のパリ万国博覧会で巻き起こった日本芸術のブーム「ジャポニスム」です。

日本の工芸品や美意識に触発されたガレは、制作の題材としていた3000種近い植物を栽培する自庭に400種ほどの中国や日本由来の品種を植えたといいます。

下の写真の鷹と雪持松を被せガラスとエナメル彩で描いた花器は日本画のような詩情や深い奥行きを感じさせ、クローズアップされた蜻蛉やバッタなどの昆虫、季節の花々の文様は、大胆にして緻密、おおらかにして繊細です。

暮らしに溶け込むガレの花器
鷹に雪持松文花器
ガレ

1900年頃 径16×高さ44.2センチ 被せガラスで雪を表し、エナメル彩やエッチングで鷹と松を繊細に描写。狩野派絵画などの日本美術の影響をうかがわせる大作。薄緑の素地に乳白の彩色、余白のある構図に日本を想う心が見て取れる。

暮らしに溶け込むガレの花器

飛蝗文双耳花器
ガレ

1880年頃 幅13×奥行き11.2×高さ24センチ 対象をクローズアップしたような大胆な構図はガレ作品の特徴の一つ。バッタを強いタッチの手彫りによる装飾で表現し、耳の部分はそれとは対照的に繊細なエナメル金彩で密に花文様が描かれている。

光を通すと色彩は千変万化し、輝きや陰影が生み出す無限の表情は、絵画や陶磁器にない幻想的な美しさがあります。暮らしの空間に飾ってみると、その美がより強く感じられます。美術館で鑑賞するのとは違う生活の中で慈しむガラスアート。日々に潤いをもたらし、新たな魅力を放ちます。

Information

2021 アール・ヌーヴォー魅惑の煌めき
ガレ・ドーム ガラスの世界展

大阪市北区角田町8-7

TEL 06(6361)1381
開園時間 10時〜20時(最終日は18時閉場)
会期 2021年9月22日(水)〜27日(月)
会場 阪急うめだ本店9階 阪急うめだギャラリー
  • 今回ご紹介した作品をはじめとする、エミール・ガレとドーム兄弟のガラス作品をおよそ90点集めた展覧会。ガレの希少な初期の作品、ドームの可憐な花器など、厳選した作品を一堂に展開。すべて販売もされる。入場無料。

エミール・ガレ(1846〜1904)

アール・ヌーヴォーの巨匠といわれるフランスの工芸家。父・シャルル・ガレが経営する陶器やガラスなどの工場でデザインを学び、自然を主題に独自の芸術性を磨く。1877年より正式に経営を引き継ぎ、さまざまな技法を開発。当時流行したジャポニスムの影響を多大に受け、その詩情に満ちた作品は1889年パリ万博で花開き、ガラス部門でグランプリ、陶器部門で金メダル、家具部門で銀賞を受賞。没後、工房は1931年に閉鎖される。


〔特集〕ガレとドームが誘う芸術のある暮らし

01 自然への温かなまなざし、暮らしに溶け込むガレの花器


この特集の掲載号
『家庭画報』2021年10月号

『家庭画報』2021年10月号

撮影/森山雅智 取材・文/西村晶子 撮影協力/イムラ アート ジェム 川 SEN 花政

『家庭画報』2021年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。

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