歌舞伎俳優ファイル
中村壱太郎さん
11年前の2010年3月の南座で、まだ19歳だった僕は祖父（坂田藤十郎）が若い頃から演じてきた『曽根崎心中』のお初を初役で勤めさせていただきました。今回の南座でも同じ3月に若手だけで公演をさせていただくことにご縁を感じています。
僕が年長者なのですが、（尾上）右近君、（中村）米吉君、（中村）橋之助君と4人の先頭に立って作り上げていくという意識でいます。
まず、大切にしたかったのは、解説と踊り、芝居という構成に流れを作るということ。
「歌舞伎をやりますから観に来てください」ということだけではなかなか興味を持ってもらえないので、今回は「若手で『義経千本桜』に挑みます」というキャッチコピーで皆さまをお迎えします。
『吉野山』より。義経のもとへ向かう静御前が初音の鼓を打つ。2018年8月。©松竹かつて新春浅草歌舞伎で（中村）獅童のお兄さん、（市川）猿之助のお兄さん、（中村）勘九郎のお兄さん、（中村）七之助のお兄さん、（市川）男女蔵のお兄さんたちが皆さんでアイデアを出して取り組んでいた舞台を僕が小さい頃に拝見していました。
時にはダブルキャストだったのが素敵だなと思っていたので、今回の公演にも取り入れて、4回ご覧いただかないと網羅できないようになっています（笑）。
『吉野山』は清元を入れずに義太夫だけで上演するのも今回の見どころで、上方歌舞伎が浄瑠璃から生まれた作品が多いということを意識して考えました。関西だからこそ、こってりとしたいつもと違う作品に仕上げます。
中村壱太郎（なかむら・かずたろう）
1990年、東京都出身。95年1月大阪・中座『嫗山姥』の一子公時で初代中村壱太郎を名乗り、初舞台。上方歌舞伎を中心とした女方として活躍し、2019年12月には南座『金閣寺』で雪姫を初役で演じた。20年には配信ライブで「中村壱太郎×尾上右近ART歌舞伎」公演を開催し、話題となった。
今月の歌舞伎
【南座】
三月花形歌舞伎
～2021年3月21日（12日は休演）
●昼の部 12時開演、夜の部 16時15分開演一、『歌舞伎の魅力』 二、『義経千本桜 吉野山』 三、『義経千本桜 川連法眼館』
3月6日～13日までは、昼の部がAプロ、夜の部がBプロ。
3月14日～21日は昼の部がBプロ、夜の部がAプロで上演される。
※中村壱太郎さんはAプロでは『吉野山』と『川連法眼館』の静御前、Bプロでは偶数日に『歌舞伎の魅力』、奇数日には『川連法眼館』の源義経役で出演。
1等席 1万1000円ほか
チケットホン松竹：0570（000）489
公演の詳細は歌舞伎公式総合サイトをご参照ください。
歌舞伎美人：
https://www.kabuki-bito.jp
【歌舞伎座】
三月大歌舞伎
© 松竹『隅田川』中村鴈治郎歌舞伎座は引き続き三部制で上演されており、3月の第三部では、Aプロ、Bプロで日程により異なる演目が上演される。主な出演者は尾上菊五郎、中村吉右衛門、片岡仁左衛門、坂東玉三郎、松本幸四郎、尾上松緑、片岡愛之助、中村勘九郎、中村七之助。
～2021年3月29日（22日は休演）
●第一部 11時開演一、『猿若江戸初櫓』 二、『戻駕色相肩』
●第二部 14時開演一、『一谷嫩軍記 熊谷陣屋』 二、『雪暮夜入谷畦道 直侍
●第三部 18時30分開演一、『楼門五三桐』 二、（Aプロ）『隅田川』（Bプロ）上『雪』、下『鐘ヶ岬』
1等席1万5000円ほか
チケットホン松竹：0570（000）489
【巡業公演】
中村勘九郎 中村七之助 春暁特別公演2021
（中村勘太郎、中村長三郎 巡業初参加）
年に一度、中村屋一門が2005年から毎年行ってきた全国巡業公演。今回は勘九郎の長男・勘太郎、次男・長三郎が初参加し、全5か所で開催する。歌舞伎を観たことのないかたにもわかりやすい演目や工夫を凝らした公演である。
【2021年】●3月30日 愛知・刈谷市総合文化センターアイリス 大ホール
●3月31日 広島・東広島芸術文化ホール くらら 大ホール
●4月2日 兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
●4月3日 東京・LINE CUBE SHIBUYA（渋谷公会堂）
●4月4日 東京・新宿文化センター 大ホール
一、『鶴亀』 二、トークコーナー 三、『操り三番叟』 四、『俄獅子』
※公演の詳細は公式サイトをご参照ください。
公式URL：
http://www.shungyo2021.comサンライズプロモーション東京：0570（00）3337（平日12時～15時）
表示価格はすべて税込みです。
取材・構成・文／山下シオン 撮影／岡積千可 ヘア＆メイク／AKANE
『家庭画報』2021年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
