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明治神宮に奉納された《日月四季花鳥図》。手塚雄二画伯が絵に込めたメッセージとは?

鎮座100年を迎える森の社を訪ねて 明治神宮100年目の美と森 第3回(全7回) 東京という都会の中心に位置し、荘厳な鎮守の杜と日本一の初詣参拝者数で知られる明治神宮。明治天皇と昭憲皇太后をお祀りし、創建されたのが1920年。戦後復興を経て今年は鎮座100年の節目となります。11月1日の鎮座百年祭に向けてさまざまな準備が行われてきました。それは明治神宮における美の再編ともいえます。この美の神域に美の源泉を辿り、新たな時代に向けてのメッセージを探ります。前回の記事はこちら>>

手塚雄二画伯が絵に込めた特別なメッセージ
100年封印される内陣御屛風を描く

御祭神がお鎮まりになる内陣。そこに収める奉納されたら100年間人の目に触れない絵を描くことになったら? 日本画家・手塚雄二さんが振り返る制作の記。

手塚雄二(てづか ゆうじ)
1953年生まれ。日本画家。東京藝術大学名誉教授。日本美術院同人。日本画壇を牽引する画家の一人。鎮座100年で新たに内陣御屛風を制作した。2023年に大きな回顧展を予定。

日月四季花鳥図
手塚雄二さんのアトリエにて表装される前の内陣御屛風と手塚さん。タイトルは「日月四季花鳥図」。

御祭神を祀る本殿の内陣は、宮司も立夏と立冬の御衣祭(おんぞさい)の時にしか入れないという特別な空間。その暗闇に神剣や御鏡、御装束とともに飾られているのが、内陣御屛風です。創建時の屛風絵を描いたのは日本画家の下村観山。経年劣化のため屛風を新たにすることになり、今回その制作を手掛けたのが手塚雄二さんです。

「屛風は平安時代の間仕切りですから、明治天皇と昭憲皇太后がここにいらっしゃると示す存在で、しかも日本一多い参拝者が拝む方向に位置するわけです。題材を決めるまでが本当にプレッシャーの日々でした。『お好きなように描いて下さい』といわれて、でも何も浮かばない。それが明治の『明』は『日』と『月』だと気付かされて、これだと思ったんですね」

内陣御屛風下図
最初に小さな下図を描き、順に大きいものへと下図を繰り返す。この最初の下図ではまだ昼と夜が繫がっていない。

完成したのが、明治天皇を太陽とし、昭憲皇太后を月としたこの六曲一層の屛風絵です。自然から絶妙な空間を抽出し、独自の絵世界へと再構築してきた画伯ならではの、春から夏へ、夏から秋へ、秋から冬へと右から左に季節が流れ、太陽と月、昼と夜が同居する夢幻的な作品。

手塚雄二さん
普通は金箔を貼るところを金箔の細かくしたものを撒く。金箔よりも金の量が多く重厚な輝きになる。

「一枚の絵で昼と夜を表すのは難しいかと思ったんですが上手くいきました。春夏で風が吹いて、秋冬で葉っぱが散っていくドラマなんです。雀が風に向かって飛び、それを明治天皇が受けとめてくださっています」

作品は既に奉納され、次の100年へと静かな時を刻んでいます。

内陣御屛風奉献奉告式
2019年8月2日、本殿修復中に建設された御仮殿にて内陣御屛風奉献奉告式が行われ、屛風絵が奉納された。右手の桐箱に表装された屛風が収まっている。手塚雄二ご夫妻も参列。

日月四季花鳥図

細部を見ると創作への執念が見える。明治神宮の森で取材した木の形が随所に描き込まれている。

構成・取材・文/三宅 暁(編輯舎) 撮影/鈴木一彦

『家庭画報』2020年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。

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