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「人生の後半は“自己実現”の時代。必要なのは“攻めの養生”です」帯津良一さん(医師)

2020.07.02

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不安な時代を乗り切るメッセージ「心をつなぐ言葉」 第6回(全7回) 当たり前だと思っていた日常や、世界の情勢はどうなっていくのか―。家庭画報ではそんな時代を生き抜くため、“心をつなぐ”をテーマに、そのヒントを探しました。見えてきた一つのキーワード、それは「思いやり」です。識者のかた、それぞれが考える、私たち一人一人に求められる「思いやり」を紐解いていきます。前回の記事はこちら>>

「ひたむきに“攻めの養生”を。
あなたのエネルギーが波及し、世界をも回復させるのです」
──医師・帯津良一さん


帯津良一さん

帯津三敬病院名誉院長

帯津三敬塾クリニック主宰
帯津良一(おびつ・りょういち)さん

1936年生まれ。外科医。専門は食道がん。東京大学医学部卒業後、都立駒込病院を経て82年埼玉県川越市に同院を開業。西洋医学と中国医学など代替療法を組み合わせた医療を行い、理想のホリスティック医学の実践を目指す

人生に困難はつきものだ。病に教わることもある


人は生まれてから約50年の間に力強い心身を築き上げ、人のため国のために尽くす自我の確立を成し遂げます。人生50年の織田信長の頃ははなはだ区切りのよい時代でした。ところが今は人生100年。自我を確立した後の50年をどう生きたらよいのでしょうか。

私は、人生の後半は自己実現の時代だと考えます。それを実現するための手段が、「攻めの養生」です。

養生といっても、病気にならないよう用心して、無理をせず、ひたすら体を労る「守りの養生」とは正反対。大いにときめいて、内なるいのちのエネルギーを溢れさせ、生命の躍動を引き起こすダイナミカルな生き方なのです。

「攻めの養生」に終わりはありません。人間は、いくつになっても日々向上し続ける存在だからです。その過程において老いも病も逆らうべき敵ではありません。病気予防を心がけることは大事ですが、一方で「なったらどう乗り越えるかを考えればいい」と大らかに構える余裕も必要です。

今は、足もとにしっかり目を向け、やるべきことに集中し、楽しみを見つけて内なるエネルギーを溢れさせ、この先、何かことが生じたときにもへこたれない力を身につけておこうではありませんか。

病に限らず人生に困難はつきものです。

精神科医の故・神谷美恵子さんは『生きがいについて』の中で「ほんとうに生きている、という感じをもつためには、生の流れはあまりになめらかであるよりはそこに多少の抵抗感が必要であった」と書いています。

「がんになってふと立ち止まり、幽体離脱のように自分自身を上から見下ろして人生を俯瞰した」と語った患者さんがいました。「すると今まで見えなかったことが見えてきた」と。がんという試練がその人を一段上に引き上げたといえるのではないでしょうか。

かなしみの基盤に凜と立つ。
大地に希望の種をまこう


ホリスティック医学を目指し、心にも目を向け始めた頃、私は明るく前向きな精神状態ががんの患者さんの病状をよくするのだと思っていました。ところがそれは間違いでした。明るいから病状がよいのではなく、病状がよいから明るかったのです。その証拠に、昨日まで笑っていた人が、今日の検査数値が悪いと途端に落ち込んでしまう。

そこで私ははたと気がつきました。人間はそもそも明るく前向きにはできていないのではないか、人間の本性はかなしみなのだ、と。

あらためて、不安で寂しくて孤独な基盤に立ってみると、不思議と滅多なことでは慌てふためいたりしなくなるのです。そして、かなしみの大地に大小さまざまな希望の種をまけばいい。やがて芽が出る、花も咲く――。

しかしわれわれは「明るく前向き」に長居せず、本来の立ち位置であるかなしみの基盤に戻らなければなりません。心は一か所に留まらず、循環しながら抵抗力をつけ、盤石になっていくものなのです。

自分のかなしみを愛おしみ、他人のかなしみを敬う―同じかなしみを抱き持つ人間同士が寄り添えば、どれほど優しく生きやすい世の中になるでしょう。

1人1人の「攻めの養生」が
この疲弊した地球を救う


「攻めの養生」は、自分自身だけでなく他人や社会を向上させる養生でもあります。自らの内的レベルが高くなると、家庭や職場、地域社会など所属する「場」の雰囲気がよくなり、さらに「場」の当事者1人1人のエネルギーを高めるプラスの循環が生まれます。

これが日本各地、世界各国に広まれば――、大規模な災害や紛争が多発し、疫病が蔓延するこの疲弊した地球の自然治癒力も回復するに違いない。私は心からそう信じています。

今こそ自宅でマインドフルネスを! 意識の集中で、安定した心の持ち方を身につける


「あの日々は無駄ではなかった。いずれそう思えるように生きること」養老孟司さん

撮影/八田政玄 取材・文/浅原須美

『家庭画報』2020年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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